なすお☆、『可愛いだけじゃない式守さん』OPテーマがバイラル首位 “替え歌カバー”からも垣間見えるキャッチーな作詞力

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2022年05月17日 12:11  リアルサウンド

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なすお☆「ハニージェットコースター」

参照:https://spotifycharts.com/viral/jp/weekly/latest


 Spotifyの「バイラルトップ50(日本)」は、最もストリーミング再生された曲をランク付けした「Spotify Top 50チャート」とは異なり、純粋にファンが聴いて共感共有した音楽のデータを示す指標を元に作られたプレイリスト。同チャートを1週間分集計した数値の今週分(5月12日公開:5月5日〜5月11日集計分)のTOP10は以下の通り。


1位:なすお☆「ハニージェットコースター」
2位:Louis Vision, BBY NABE, Hinako Miura「Love’s Like A Western Song」
3位:anees「sun and moon」
4位:汐れいら「センチメンタル・キス – Acoustic ver.」
5位:きゃない「バニラ」
6位:SawanoHiroyuki[nZk], 河野純喜 (JO1), 與那城奨 (JO1)「OUTSIDERS」
7位:JUMADIBA, Ralph「Kick Up」
8位:星野源「喜劇」
9位:Lizzo「About Damn Time」
10位:Jack Harlow「First Class」


 今週は1位を飾ったなすお☆の「ハニージェットコースター」をピックアップする。本曲は、2022年4月9日深夜より放送中のアニメ『可愛いだけじゃない式守さん』(テレビ朝日系)のオープニングテーマだ。


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 本アニメは、一言でいえば“尊いラブコメ”にカテゴライズされる。不幸体質で冴えない、でも明るく素直な男子高校生・和泉と、その彼女・式守のやりとりを中心に、テンポよく高校生達の日常が展開されていく。式守は、道行く人、誰もが振り返る美少女で、普段は言葉使いも上品で奥ゆかしいが、抜群の身体能力を秘めている。例えば、通学時に和泉に向かって落ちて来た看板を回し蹴りですっ飛ばしたりする一方、クラス対抗の球技大会では、和泉の声援ひとつでスーパーヒーローのように大活躍する。ひとたびスイッチが入ると、和泉が「男前」と思ってしまうほどの鋭い表情を見せる。


 このギャップ萌え、“ドジっ子とイケメンヒーロー”というラブコメの王道を大胆に男女逆転させた設定、そして「男だって守って欲しい時もある」という男性の潜在意識を満たしていることで、本作が男性を中心に人気があるのはわかる。しかしこのストーリーの素晴らしいところは、 好きな人・好きなことに一途にエネルギーを注ぐ式守の姿に、女性が共感できることだ。前クールで人気を博したアニメ『その着せ替え人形は恋をする』(TOKYO MXほか)のヒロインもそうだったが、好きなものに対しての情熱、自分を信じる行動力こそ、主人公と同年代である女性の共感を呼び、今回のバイラルチャートのアクションにも繋がっていると考察する。


 「ハニージェットコースター」の作詞と歌唱を担当したなすお☆は、YouTubeをメインに活動をしてきたシンガーだ。ヒット曲を女性目線で歌った替え歌カバーが話題となり、認知度を上げた。瑛人の「香水」のアンサーソングとして替え歌したカバー「君のドルチェ&ガッバーナの香水のせいだよ」は、2022年5月現在、490万回以上再生されている他、wacciの「別の人の彼女になったよ」を男性目線のアンサーソングとしてカバーした替え歌は340万回超え。他にも、まふまふの「女の子になりたい」の替え歌カバー「男の子になりたいver.」など、多くのカバー曲の視聴再生回数が100万回を突破している。中には、菅田将暉の「虹」をドラえもん目線で綴った替え歌カバーもあり、YouTubeにアップされている楽曲を見るだけで、その視点の広さ、鋭さがわかる。原曲をしっかり自分の中で咀嚼して新たな歌詞をつけているのも見事だが、メロディも楽曲の持つ雰囲気も壊さずに、自身の歌声で、カバーを超えオリジナル曲かのように聴かせているところに、なすお☆という表現者の底力を感じる。


 「ハニージェットコースター」は、最初の〈なんかぼくよりも彼氏みたい!〉というワンフレーズだけでアニメの面白さを伝えているブライトなアップチューン。しかしながら、途中でジャジーなベースラインからテンポが落ち、レゲエ調のリズムにラップをのせるという斬新なアプローチもある。ところどころに挟み込まれる台詞のようなボーカルアプローチも、アニメのストーリーにリンクしている。さらに、縦読みで「あ」「い」「し」「て」「る」と仕込まれているなど、原作がTwitter発信だったからこうしたのかな……などと、楽しい考察をさせてくれる。聴けば聴くほど、歌詞を見れば見るほど、深読みをさせてくれるのが「ハニージェットコースター」の面白さだと思うが、一番の魅力は一聴しただけではそう感じさせないポップさであるように思う。これは、なすお☆が紡ぎ出す言葉の一つひとつが語感も含めてキャッチーで、素直に耳に入って来る言葉ばかりだからだろう。


 恋愛は自分でコントロールできない。だから、自分とは別の生き物だと筆者は思っているが、その苦しさや切なさ、コントロール不可能なところも、すべて楽しさなのだと教えてくれるような1曲である。(伊藤亜希)


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