「空腹感」や「満腹感」の正体は? 脳科学者が教えてくれた、脳科学的に成功しやすいダイエット法

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2022年05月17日 21:51  All About

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写真ダイエットを成功させるためには、食欲のコントロールが重要。空腹感、満腹感などの食欲を制御しているのは、脳の視床下部という部位です。脳科学を上手に味方につけ、健康的に体重管理をするコツを紹介します。
ダイエットを成功させるためには、食欲のコントロールが重要。空腹感、満腹感などの食欲を制御しているのは、脳の視床下部という部位です。脳科学を上手に味方につけ、健康的に体重管理をするコツを紹介します。

脳が担う食欲……ダイエットで重要な「食欲コントロール」

「ダイエット」は多くの人にとって気になる話題のようで、ダイエット関連のテレビ番組や商品の宣伝を目にしない日はありません。それぞれの体型を前向きに肯定する「ボディポジティブ」などの動きもありますが、ダイエットのブームが衰える兆しはないように見えます。

「ダイエット」の意味をたずねると、多くの人が「やせること」と答えるかもしれませんが、それは間違いです。

ダイエット(diet)とはもともと「食事、餌」という意味で、食事制限による体重管理法のことを簡略的に「ダイエット」と呼んだことが始まります。これが転じて「ダイエット=やせる」という意味だという誤解を生んだのでしょう。

ですから、食事制限による減量をダイエットと呼ぶのは正しいですが、食事とは関係のない運動方法や健康器具まで「ダイエット法」「ダイエット商品」と称されるのは、本当はおかしなことなのです。

それはさておき、ダイエットに重要なのはやはり食欲のコントロールです。そして、その役割を担っているのが、間脳の視床下部です。健康的な体型を維持するためにダイエットしたいという方は、まずは脳を味方につけましょう。

ここでは、視床下部がどのように食欲を調節しているのかをわかりやすく解説します。

空腹感や満腹感はどこからくる? 摂食中枢と満腹中枢の役割

食欲は、「お腹が空いた」「食べたい」という欲求を生み出す摂食中枢と、「お腹がいっぱい」「食べたくない」という満腹中枢のバランスによって調節されています。下図に示したように、摂食中枢は主に視床下部の外側野、満腹中枢は主に視床下部の腹側内側核にあると考えられています。
食欲をコントロールする摂食中枢と満腹中枢は、それぞれ視床下部の外側野と腹内側核にある(筆者が作成したオリジナル図)

例えば、胃の中に食べ物がなくなると、胃からグレリンというホルモンが分泌され、血流にのって遠く離れた脳内の視床下部にある摂食中枢まで到達して、そのことを伝えます。

また空腹の状態が続くと、体内の脂肪が分解されて脂肪酸が遊離し、それが摂食中枢を刺激します。摂食中枢が働くと食欲がわきます。

一方、胃の中が食べ物でいっぱいになると腹部が圧迫され、その刺激が満腹中枢に伝わります。また食べた炭水化物が消化・吸収されて血液中のブドウ糖(グルコース)の濃度が上がると、グルコースのセンサーをもつ満腹中枢の神経細胞が反応します。

さらに体内にエネルギーが貯まってくると、脂肪細胞からレプチンというホルモンが分泌され、満腹中枢に働きかけます。そして、満腹中枢が働くと満腹感が生じて、食べるのを止めます。

食べすぎ防止に効果! ゆっくり食べると満腹感が得られるわけ

よく「早食いは太る」と言われると思いますが、これはある意味本当です。お腹が空いたから、時間がないからと、ご飯をよく噛まずにかき込むように食べると、太りやすくなると言われるのはなぜでしょうか?

カギを握るのは時間です。ゆっくり食べる場合は、口の中でよく噛んでいるうちに唾液の中に含まれるデンプン分解酵素のアミラーゼが作用し、予め多糖のデンプンは2糖の麦芽糖に分解されます。

したがって、食べ物が胃に到達してから、腸で単糖のグルコースになって体内に吸収されていくのに、あまり時間がかかりません。

一方、よく噛まずにどんどん飲み込む場合は、アミラーゼが作用せず、デンプンがそのまま胃腸に運ばれてしまいます。したがって、食べ物が胃に到達してから、腸でデンプンがグルコースまで分解されるのに時間がかかり、体内に吸収されるのが遅くなります。

つまり、食べ始めてから、血糖値が上がったことを視床下部の満腹中枢が察知するまでの時間は、早く食べているように見える後者の方が長くかかり、満腹感を覚えるのが遅くなるというわけです。

意外かもしれませんが、ゆっくりよく噛んで食べた方が早く満腹になるので、食べる量も少なくなるのです。噛まずに急いで食べた方が満腹になるまで時間がかかり、その間にたくさん食べてしまいます。

おまけに、お腹がいっぱいになり過ぎると動くのが面倒になり、そのまま寝てしまうという、太ること必至のコースをたどることになってしまうのです。

視床下部の満腹中枢を刺激するために、ご飯はゆっくりとよく噛んで食べましょう。

病気やストレスも影響……バランスが崩れて過食・拒食の原因にも

摂食中枢と満腹中枢がバランスよく働いていれば問題ないのですが、異常があるとうまく食欲がコントロールできずに、過食や拒食になってしまうこともあります。

例えば、プラダー・ウィリー症候群という病気の患者さんは、摂食中枢を刺激するグレリンが異常に分泌されてしまうために、いくら食べても空腹感がなくならず食欲が続くので、過食・肥満になってしまいます。

病気でなくても、精神的なストレスが過食や拒食を引き起こすこともあります。ストレスによって緊張状態が続くときは、自律神経系のうち交感神経が優位になっていますので、食欲が減ります。

さらに長くストレスが続き、それが解消できずに慢性化すると、逆に過食症になることもあります。満腹中枢を刺激するレプチンの作用が鈍くなるため、食欲が止まらなくなってしまうと考えられています。やけ食いはよくありませんね。

阿部 和穂プロフィール

薬学博士・大学薬学部教授。東京大学薬学部卒業後、同大学院薬学系研究科修士課程修了。東京大学薬学部助手、米国ソーク研究所博士研究員等を経て、現在は武蔵野大学薬学部教授として教鞭をとる。専門である脳科学・医薬分野に関し、新聞・雑誌への寄稿、生涯学習講座や市民大学での講演などを通じ、幅広く情報発信を行っている。
(文:阿部 和穂(脳科学者・医薬研究者))

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