写真![]() ニリンソウやモミジガサは食用の山菜ですが、猛毒を持つトリカブトとよく似ているため、誤食による食中毒や死亡事故例も報告されています。これらの山菜の味、食べ方や、トリカブトとの見分け方などを解説します。 |
ニリンソウとは……葉は食用の山菜・味や食べ方は?
初夏になると野山を埋める白い花の「ニリンソウ(二輪草)」。全国各地の沢辺などに咲いていることが多い花です。観賞用としてだけでなく、葉を山菜として食べることもできます。ニリンソウの味は、若干の甘味があるとされていますが、香りが強いわけでもなく、山菜特有の苦みなどのうま味も少ないため、多く自生している地域でも「季節を感じるため」として、少量を食べる程度という人が多いようです。
あまりメジャーな山菜ではないためか、栄養素の詳細を調べた報告は見つかりません。おそらく、植物の葉ですので、一般的な野菜と傾向が似ており、エネルギーは少なく、食物繊維は多いのではないかと推測できます。

料理方法としては、下ゆでした後、おひたしや、ごま和え、酢味噌和えにしたり、味噌汁の具や天ぷらにして食べることもできます。肉のにおい消しに使うという人もいるようです。ちなみに食用ではないキンポウゲ科の植物は、毒を弱めた状態で、世界中で漢方薬として使われています。
ニリンソウと似たトリカブトの毒性・危険性

トリカブトは、ニリンソウと同じキンポウゲ科の植物です。猛毒を持っていることで有名な植物ですね。トリカブトの毒素はアルカロイド系の「アコニチン」という有毒物質です。
“口唇や舌のしびれに始まり,次第に手足のしびれ,嘔吐,腹痛,下痢,不整脈,血圧低下などをおこし,けいれん,呼吸不全(呼吸中枢麻痺)に至って死亡することもある。 致死量はアコニチン2〜6mg”
とありますので、極少量で死に至る危険性があることが分かります。
トリカブトの過去の事故例・死亡例
トリカブトは食用ではないため一般に流通することはありませんが、ニリンソウだと思って自ら採取したものや、知人から譲り受けたニリンソウにトリカブトが混入している例が多いようです。飲食店の店主が自ら採取してきたニリンソウのおひたしを客に提供したところ、トリカブトが混入していて、客が食中毒を起こしてしまった事例も報告されています。プロの料理人でさえも見間違えてしまうことがあるほどによく似た葉なので、十分な注意が必要です。
ニリンソウとトリカブトの見分け方・違い
ニリンソウの花は春に白い花が咲きます。一方、トリカブトの花は紫色で秋に咲きます。花が咲けば、両者を見分けることが可能です。ただし、ニリンソウとトリカブトは同じ場所に並んで自生していることも少なくないため、花がついている枝をしっかり確認せず、ひとまとめにして採取してしまうと、トリカブトが混ざり込んでしまうことがあります。


トリカブトと間違えやすい山菜「モミジガサ」との見分け方

その他にも、「モミジガサ」と勘違いしてトリカブトを誤食してしまう事故例も報告が多いです。見分け方は表面の毛です。モミジガサの表面には細い毛が生えていますが、トリカブトには毛がありません。
しかしこの2つも同じような場所に自生しているので、初心者は見分けがつきにくいことで知られています。
トリカブトで食中毒になった場合の対処法
万一トリカブトを誤食してしまった場合、気づいた時点ですぐに病院で診療を受けることが大切です。とはいえ、特効薬などはないので、内視鏡で取り除いたり、胃洗浄をした後、症状を緩和するための対症療法を行うことになります。致死量を摂取してしまった場合でも、早期に内視鏡で欠片を取り除き、対症療法を行ったことで一命を取りとめることができたという報告もあります。
トリカブトの誤食を防ぐための心構え
1. 山菜採りは有識者と同行して間違いのないものだけを採取する2. 花が咲く前には採取しない
3. 必ず花が咲いている枝をたどっていき、その枝とつながっていることを確認しながら採取する(1枚ずつ摘み取るのが面倒だからと、ひとまとめに摘み取らない)
4. 一口食べて、少しでもおかしいと思ったらそれ以上、食べない
などです。トリカブトは非常に強い毒性を持っていて誤食は命にかかわりますので、ニリンソウやモミジガサなどの山菜を楽しみたい方は、細心の注意を払って食べるようにしましょう。
■参考
・自然毒のリスクプロファイル:高等植物:トリカブト(厚生労働省)
・山菜採りシリーズ ニリンソウとトリカブト(森と水の郷あきた)
・ニリンソウを採ろう!(おいしい山菜・きのこ図鑑)
・山菜のお話 ニリンソウ(ココロもカラダも元気になる!元気の種)
平井 千里プロフィール
メタボ研究を行いエビデンスに則ったダイエットを教える管理栄養士。小田原短期大学 食物栄養学科 准教授。女子栄養大学大学院(博士課程)修了。前職の病院での栄養科責任者、栄養相談業務の経験を活かし、現在は教壇に立つ傍ら、実践に即した栄養の基礎を発信している。(文:平井 千里(管理栄養士))