写真![]() 『数字が苦手な人のためのいまさら聞けない「数字の読み方」超基本』(久保憂希也/アスコム) |
ロジカルで説得力のある話し方のできる人は仕事もできる! 仕事ができる人に共通しているのは、「数字力」。筋道立てて考えることが苦手…という方は、まずは数字の読み方を身につけて、説得力・伝える力・問題解決力をみがいてみませんか。
久保憂希也著の書籍『数字が苦手な人のためのいまさら聞けない「数字の読み方」超基本』は、これまであまり数字を意識せずに仕事をしてきたという人に、データに騙されず、賢く数字を使う方法を伝授します。
本書で身近な問題やクイズを解きながら、ビジネスにも役立つ数字の読み方、数字を使った考え方をマスターしていきましょう。
えんえんと結論が出ずに長いばかりの会議に嫌気がさした経験はありませんか? 「決まらない会議」は数字をうまく使っていないことに原因があるようです。
※本作品は、久保憂希也著の書籍『数字が苦手な人のためのいまさら聞けない「数字の読み方」超基本』から一部抜粋・編集しました
STEP2 「終わらない会議」はなぜ終わらないのか?
♦数字を「共通言語」として使う
私はさまざまな会社の会議に出席してきましたが、たまに何時間もえんえんと終わらない会議をする会社に遭遇することがあります。
実際、多くの人が経験しているのではないでしょうか。
終わらない会議はなぜ終わらないのか。
それは、数字をうまく使っていないことに原因があります。
ものごとの量的な側面に着目して数字を使って分析することを、「定量的」に分析するという言い方をします。それに対して、質的な側面に着目して分析することを、「定性的」に分析するといいます。
文系出身の方にはあまり馴染みがないかもしれませんが、どちらも理系の大学の研究室やIT系企業などではよく使われる表現です(ちなみに、私は文系出身です)。
定量的に分析をする場合、その結果は誰が見ても同じであり、客観性があります。
たとえば、店舗での小売りをやっている会社が、「ネット通販に乗り出すべきか否か」といったテーマで話し合うとしましょう。
「富士経済の発表によると、通販・EC市場の2020年の市場規模見込みは、前年比10.1%増の15兆1127億円です。2022年は16兆4988億円まで拡大すると予測されています。ネット通販は通販市場の8割以上を占めており、カタログ通販は1兆1200億円程度、テレビ通販は6000億円程度で横ばい傾向が続く見通しです」
というのは定量的な「報告」です。市場規模を数字で表現しています。
それに対して、
「最近はネット通販が当たり前になっているようです。私の周りでも、欲しいものがあったらとりあえずネット検索をしています。パソコンを使わない人もスマホでショッピングができるし、若者だけでなく団塊世代にもいけるのではないでしょうか」
というのは定性的な「意見」です。話し手の主観や経験をもとに話を組み立てており、数字が一切出てきていません。
定性的な言葉は人によって受け止め方が変わりますが、数字を使っている定量的な説明なら「意図と違って伝わってしまった!」というようなミスコミュニケーションも起こりづらくなります。
もしあなたが、ビジネスの判断としてモバイル通販を行なうかどうか意思決定をしなければならない立場だとしたらどうでしょうか? 意思決定までのプロセスには、定量的な分析がほしいと思いませんか。
会議に数字を持ち出すくらい当たり前のことだ、と感じるかもしれません。
ところが、実際の会議では、驚くほどみなさん定性的に発言しているのです。
「ネット通販はうちの商品のターゲットに合わないのではないか」
「テレビ通販のほうが広告効果があるだろう」
「一部の商品でテストすべきだ」
「通販サイトのデザインが重要になる」
もちろんすべてを数字で表すことは不可能ですし、不確定要素は必ずあります。定性的な意見がすべて悪いわけではありません。
しかし、最初に議論の立脚点とできるような数字がなければ、いつまでたっても議論はばらばらでまとまりません。
♦数字のない議論をしていないか?
以前、私のクライアント会社の会議で、ホームページのリニューアルについての検討が行なわれていました。
ホームページがわかりにくいせいで、コールセンターへの問い合わせの電話が多く、対応に時間が取られているという問題があったのです。
「顧客ユーザビリティを追求したホームページに変えよう」
かかるコストは数百万円、期間も4カ月ほどの少し大きなプロジェクトですが、それによって顧客満足度を上げることができます。
コールセンターへの問い合わせが減れば、その分の人件費を減らして、もっと利益の上がる仕事に労力をまわすこともできます。
かくして、無事にホームページがリニューアルされました。この決定と実行にはとくに問題はないように見えました。
しかし、違った問題が起きてしまいました。
ホームページのリニューアルの件とはまったく別のプロジェクトについて会議をしていたときのことです。
「コールセンターのコストを削減するにはどうしたらいいだろうか」
「電話がかかってくる数を減らす方法を考えましょう」
「そういえば、ホームページのリニューアルで問い合わせの電話が減るはずだったじゃないか。あれはどうなった」
「さぁ……?」
会議に参加している全員が、首を傾げています。
「多少は減ったんじゃないでしょうか」
結果の検証を、誰もしていなかったのです。
ここで、人件費がいくら減ったとか、対応時間が何時間減ったとか、電話が何本減ったという数字を示せる人がいれば、この会議もすぐに進展したでしょう。きちんとデータを取っていれば、今回のプロジェクトに生かして、新たな予測をすることも楽になったはずです。
ですが、残念ながらこの会議では誰も定量的な話をできません。
やはり、会議は終わらないのでした。
♦プロジェクトは「検証」しなければ無意味
プロジェクトを実行まではするけれど、あとは知らない、ということが多いのはこの会社に限ったことではありません。ものすごくもったいないことです。
1つのプロジェクトを実行したら、それを次に生かさなければ、成長していくことができません。「会議が終わらない」どころではないのです。
次に生かすには、計画の段階で目標の数字を出しておくことと、結果を検証する人を決めておくことが必要です。
いまの会議の例でいえば、ホームページをリニューアルする計画をしたときに、「問い合わせの電話を月に100件から30件に減らす」というように具体的な数字で目標を決めます。同時に、リニューアル後、実際にどのくらい電話が減ったのかを確認する担当者を決めておく必要があるのです。
POINT 会議の議論は、「定量的分析」から「定性的意見」が正しい順序。