室井佑月「侮辱罪改正法案」

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2022年05月19日 07:00  AERA dot.

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写真室井佑月・作家
室井佑月・作家
 作家・室井佑月氏は、「侮辱罪改正法案」について危惧しているという。


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 ゴールデンウィークが間に入りあまり騒がれなかったが、じわじわと恐ろしいことが進んでいるようだ。


 SNS上での誹謗中傷が酷い。それをやられて自死する人まで出てきている。なので、ネット上の誹謗中傷をもっと取り締まっていこう、というのはわかる。


 が、政府が出してきた侮辱罪の改正法案でいいのだろうか。


 政府の改正法案は、刑法に設けられている現行の侮辱罪の法定刑、「拘留または科料」というものを、「1年以下の懲役もしくは禁錮、30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料」に引き上げるというものなのだ。


 ちなみに現在、これだけSNSの誹謗中傷が社会問題化しているのに、2016年以降、法定刑で定められた拘留になっている人は一人もいない。だいたいが9千円以下の科料となり、こんな軽い刑では誹謗中傷は無くなるはずがない。


 だが、政府案の「1年以下の懲役もしくは禁錮、30万円以下の罰金、または拘留もしくは科料」と罰を重くすればそれでいいという話でもないと感じる。


 処罰対象が定められていないからだ。今、問題になっているのはSNS上の誹謗中傷で、どういうものが誹謗中傷となるのか、そこをはっきりさせたほうがいい。当たり前だろう。どこからが誹謗中傷となるのか、具体例が詳細に出てこないのはおかしい。つまり、一定のルールを決めようとしないのがおかしいのだ。


 それがない政府の侮辱罪の改正法案は危うい。政府法案はべつにSNSに特化したものではない。だからこそ、この法案があたしたちにとって危険なことに使われかねない。


 たとえば、政治家の批判や、政府の方針への苦言などはどうなるのだろう。居酒屋で政治家や政府の悪口をいった。きちんとした取り締まりのルールを設けない限り、それだって処罰の対象になりかねないのではないか。


 それで罪に問われるまでになるとは考えにくいが、身体拘束は簡単となるかもしれない。




 デモに出る。政治家や政府への批判を口にする。そのことを誰かが通報したとする。そして、1年以下の懲役かどうか裁判となる。その間、不当に拘束されやすくならないか。


 デモとは、市民が集まり、政府や大きな力に要求や苦情を伝える行為。民主主義で、あたしたちの大切な権利だ。


 政府の侮辱罪改正法案が通れば、デモなどをしづらい空気が巷(ちまた)に作られるに違いない。


 というようなことを考えれば、わざと細かなルールも決めない、やたらとざっくりしたこの改正法案だったりしてね。こんなものでも数の力で押し通し、それが許されてしまうんでしょうか?


室井佑月(むろい・ゆづき)/作家。1970年、青森県生まれ。「小説新潮」誌の「読者による性の小説」に入選し作家デビュー。テレビ・コメンテーターとしても活躍。「しがみつく女」をまとめた「この国は、変われないの?」(新日本出版社)が発売中

※週刊朝日  2022年5月27日号


このニュースに関するつぶやき

  • 感性の問題だろうけど、室井佑月の言動が真っ当ねぇ…(笑)。
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