高齢者の体力が向上中! 90代4人がリレーで「世界新」、一般人も

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2022年05月19日 07:00  AERA dot.

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写真マスターズ陸上青森大会のリレーで世界記録を更新した4人
マスターズ陸上青森大会のリレーで世界記録を更新した4人
 サッカーの三浦知良選手は55歳の今も現役でプレーし、48歳のイチロー氏も草野球をハツラツと楽しんでいる。さらに上を見ると、日本の超高齢者が世界記録を出すなど元気なニュースが飛び交っている。「高齢者は体力がない」は今は昔と言えるのか。背景を探った。


*  *  *


 2021年8月、男女満18歳以上が年代別に記録を争う「マスターズ陸上」の青森大会で、同県在住の90代の男性4人が400メートルリレーおよび1600メートルリレーでM90クラス(90〜94歳)の世界記録を更新した。1600メートルでは、従来の世界レコード(12分41秒69)を3分近く縮める9分56秒36を記録する快挙だった。日本マスターズ陸上競技連合事務局の内田眞一氏がこう語る。


「90歳以上の高齢者は400メートルを続けて歩くのも大変で、400メートル競技に参加される方自体、非常に少数です。また、国内マスターズのリレーのメンバーは同一都道府県内で組まないといけません。400メートル走れる90代を4人集めることは非常に困難です。それが青森県で、完走できるメンバーが4人集まりました」


 医師で東京陸上競技協会医事委員長の三橋敏武氏は、年齢による体力の低下をこう説明する。


「一般的に筋力は加齢によって直線的に低下し、30歳を100%とすると70歳では40%になる。上肢より下肢のほうが低下の幅が大きいです。呼吸機能も、最大換気量を20歳代で100%とすると、60歳代で男性は64%、女性は36%まで低下します。最大酸素摂取量も約65%に低下します」


 90代になればなおのこと筋力も呼吸機能も衰え、400メートル走は至難の業のはず。内田氏は“青森の奇跡”が実現した背景をこう推察する。


「トレーニング方法は30〜40年前に比べて進歩してきています。例えば、今60歳の方が学生のころにやっていたトレーニングとはメニューが様変わりしているはずです。トレーニング方法自体、昔はコーチや学校の先生に直接教えてもらうだけでしたが、今はYouTubeやSNSで参考にできるトレーニングがいろいろ学べます。用具も進歩していて、最近話題になっている厚底シューズを履いている方もいます。記録との関連を裏付けるデータこそありませんが、コロナ禍で競技大会の開催数が減っている今も、日本記録の更新数などを見ると皆さん健闘しているのがわかります」




 体力が向上しているのはアスリートだけではない。スポーツ庁が毎年実施している(15年9月までは文部科学省が実施)体力・運動能力調査の報告書で1998年時点からの記録を追うと、握力、上体起こし、開眼片足立ち、長座体前屈、10メートル障害物歩行、6分間歩行に関する高齢者全体(65〜79歳)の年度別数値がゆるやかに上昇傾向にある。


 例えば75〜79歳女性の握力は98年と2020年で比較すると約9%(約1.8キログラム)上昇。呼吸機能は飛躍的に向上し、6分間歩行の距離は約14%(約480メートル→約550メートル)伸びた。


 スポーツ庁が21年11月に実施した「スポーツの実施状況等に関する世論調査」では、運動・スポーツの実施状況に対する満足度も、大切だと感じている割合も70代が最も高い。また70代回答者の8割超が「健康・体力の保持増進」に重きを置いているという。高齢者の相当数が、体力の向上・維持に高い意欲を持っていることがわかる。


 同庁も22年3月のスポーツ基本計画において、国民医療費が年間40兆円を超える規模に膨らむ今、「スポーツによる医療費抑制に係る研究成果は数多く報告されており、スポーツによる健康増進に対する期待が高まっている」と言及。スポーツ実施率の向上を通じ、国民の健康寿命の延伸に取り組んでいる。


 かつて読売巨人軍のドクターを務めた斉藤明義氏は、高齢者の体力向上についてこう語る。


「徐々に体力が上向いているのはうなずける話です。昔は60歳で定年になり引退していたところ、現在では65歳、70歳まで働く意欲が向上している。高齢者に健康を維持してもらうために国が実施している政策もだんだん実を結んでいる印象を受けます。私が日頃患者と接する中でも、姿勢を気にするご高齢の方が増えている。姿勢が崩れることで生活の質が落ちるという認識がだんだん浸透していると感じます」


 とはいえ加齢に伴って体力は落ちていく。体力低下のサインはどうやって見分ければいいのか。



「歩くのに時間がかかったり、立ち上がりや階段の上り下りがつらくなったり、立ったまま靴下をはけなくなったりしたら注意が必要です。他にも自宅でできる簡単なテストとして、『閉眼片足立ちテスト』というものがあります。目を開いて片足立ちになった状態から両目をつむり、20秒姿勢を保てない場合は神経機能の低下と筋力低下が原因と考えられます」(三橋医師)


 筋力が低下すると、「立つ」「歩く」といった移動機能が低下するロコモティブシンドローム(運動器症候群、以下、ロコモ)に至る。ロコモが悪化すると、今度は体重減少や身体活動・歩行速度・筋力が低下する「フレイル」という要介護・要支援手前の状態に。フレイルになると転びやすく、けがや事故につながる。日頃の運動はロコモ予防に有効で、高齢者が自立した生活を送るためにも良い。ただし、斉藤医師は注意も必要だという。


「65歳以上になると誰でも等しく筋繊維が減り、全身の筋肉が衰えた『サルコペニア』の状態に近づきます。また、コロナ禍による外出機会の減少も相まってダブルで筋肉量が減っている。筋肉の伸縮がままならない廃用性筋萎縮が起き、転倒しやすいロコモやフレイルの予備軍とも言えます。50代までと同じ気持ちで安易に激しい運動をするのはやめたほうがいい。転倒の恐れがある運動をするのも危険です」


 運動で逆にけがをしては本末転倒だ。斉藤医師は「体力を過信しないことが大事」だと言う。


「運動前後にじんわり汗が出るまで時間をかけてストレッチすることが大事です。ストレッチが不足して、ハムストリングがつっぱったりしているままにするのは良くない。クリニックのリハビリテーションや、柔道整復師のストレッチなどを上手に活用してほしいです。故障を持っている方は、その部位のアイシングがおすすめ。20分アイシングすれば、筋肉の伸びが硬くなると思うけどそうではなく、むしろストレッチしやすくなります。アイシングの後にストレッチすると良いでしょう」


 安全に運動に取り組むことが、若返りの一歩となりそうだ。(桜井恒二)

※週刊朝日  2022年5月27日号



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  • 生活様式や医療が良くなってるからだろうけど一部だろ…老いても生活に足りる年金を受け取れない人は沢山いて足引きずりながら働いてるよɽ��ʤ�����老害扱いされながらも子や孫に迷惑かけないように
    • イイネ!4
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