飛行中にパイロットが失神 管制官の指示を受けた乗客が無事着陸に成功(米)

1

2022年05月20日 04:11  Techinsight Japan

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

Techinsight Japan

パイロットに代わって操縦した乗客(右)と着陸の指示をした管制官(画像は『WPBF 25 News 2022年5月17日付「‘I just knew I had to keep him calm’: Air traffic controller guides passenger to safely land plane at PBIA」』のスクリーンショット)
今月10日、米フロリダ州上空を飛行中のセスナ機のパイロットが意識障害を起こし、操縦不能な状態に陥った。そんな危機的状況の中、乗客の男性が操縦桿を握ったまま倒れたパイロットを操縦席から移動させ、急降下する機体を立て直し無線で助けを求めたという。操縦経験はまったくない男性だったが、航空管制官の指示のもとパームビーチ国際空港に無事着陸した。『CNN』『WPBF 25 News』などが伝えている。

5月10日、バハマから米フロリダ州フォートピアースに向かっていたセスナ機のパイロットが、2人の乗客に「気分が悪い」と告げたのち操縦桿を握ったまま意識障害を起こした。

そんな危機的状況の中、乗客のひとりであるダレン・ハリソンさん(Darren Harrison)は操縦席のパイロットを移動させ、急降下する機体を立て直し無線で助けを求めたという。

ダレンさんからの連絡を受けたフォートピアースの航空管制官チップ・フローレスさん(Chip Flores)は当時の状況をこう振り返っている。

「その日の正午頃、セスナ機の乗客から『大変なことが起こっています。パイロットの意識が朦朧としていて支離滅裂です。私は飛行機の操縦方法がわかりません』と報告を受けました。現在地を尋ねると、『分かりません。フロリダの海岸が見えるけど全く分かりません』と返事がありました。彼が安全に飛行できるよう位置確認を行うため、私は『翼を水平に保ち、操縦桿を前に押し出してゆっくりとした速度で降下してください。そして海岸沿いを北上または南下してください。私たちはあなたの居場所を確認しています』と伝えたのです。」

その数分後、ダレンさんが操縦するセスナ機はボカラトン沖合の上空で発見された。そして無線での交信はチップさんからパームビーチ国際空港のロバート・モーガン管制官(Robert Morgan)に引き継がれた。

管制官として20年のキャリアを持ちパイロット教官としての経験も豊富なロバートさんだが、このセスナ・グランドキャラバン(Cessna Grand Caravan)機の操縦経験はなく、計器盤のレイアウト写真を見ながら指示を送ったそうで、このように明かしている。

「休憩中に読書をしていると、『乗客が操縦しているセスナ機の着陸を指導してほしい』と同僚に呼ばれて急いで管制室に向かいました。まずは彼を落ち着かせて滑走路を指し示し、着陸のために降下する方法を伝えなければならないと思いました。私が『さあ、滑走路まで行きましょう。今、何が見えますか?』と聞くと、彼はボカ近くの海岸線を通り過ぎたところだと。飛行機の操縦経験はないと話していたダレンさんですが、他のパイロットが操縦しているのを見たことがあるそうで非常に冷静でした。」

そしてロバートさんの誘導のもと、パームビーチ国際空港への着陸を成功させたダレンさん。滑走路で対面した2人は抱き合い、その喜びを分かち合ったという。ロバートさんは着陸の瞬間をこう語る。

「感動的な瞬間で思わず泣きそうになりました。誰も怪我することなく無事に着陸できたことが本当に嬉しかったです。着陸を成功させるには通常だと20時間ほどの飛行訓練が必要ですが、彼の着陸は10点満点中10点でした。そんな偉業を成し遂げたダレンさんは妊娠中の妻に会いたいと言っていましたね。」

また最初にダレンさんからの無線連絡を受けたチップさんは「交信を引き継いだ後もその行方をずっと見守っていました。当時、ダレンさんが無線で聞いていたのは私とロバートさんの声だけでしたが、フォートピアース、パームビーチ、ワシントンD.C.にいる約30人のチームが協力して、彼が操縦するセスナ機を安全に着陸させようとしていたのです。無事に着陸したと聞いた瞬間は本当に嬉しかったし、心底ほっとしました」と心境を明かした。

乗客が着陸を成功させたという今回のニュースは、同空港で離陸を待っていた他のパイロットにも無線を通じて伝えられたそうで、航空管制交信サイト『LiveATC』ではアメリカン航空のパイロットが「乗客が着陸させたのですか? なんということだ。素晴らしい」と驚く様子が捉えられている。

今回の出来事について航空専門家であるジョン・ナンス氏(John Nance)は、このように述べている。

「操縦経験が全くない人がセスナ機を着陸させた話を聞いたのは、今回が初めてです。乗客は注意深く管制官の指示を聞き、冷静に従ったのだと思います。それが着陸成功へと繋がったのでしょう。」

なお意識障害を起こしたパイロットの名前は公表されていないが、着陸後に緊急手術を受けて16日に退院したそうだ。

画像は『WPBF 25 News 2022年5月17日付「‘I just knew I had to keep him calm’: Air traffic controller guides passenger to safely land plane at PBIA」』のスクリーンショット
(TechinsightJapan編集部 上川華子)

このニュースに関するつぶやき

  • 急降下…小型機はオートじゃないんだな。立て直し&無線連絡はまずナイス。そして一番難しい着陸。天候がよかったのも幸い。
    • イイネ!0
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(1件)

前日のランキングへ

ニュース設定