頭痛や肩こり招く“まぶたの衰え” 不眠や抑うつの原因にも

89

2022年05月20日 08:00  AERA dot.

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AERA dot.

写真※写真はイメージです (GettyImages)
※写真はイメージです (GettyImages)
 頭痛や肩こりが一向に良くならないといったことはないだろうか。もしかするとそれは「眼瞼下垂」が原因かもしれない。まぶたの筋肉が衰えることで、物が見えづらくなるだけでなく、心身に不調をきたすこともあるのだ。


【「眼瞼下垂」セルフチェックシートはこちら】
*  *  *


 都内在住の藤原さん(20代女性)は、1年半前に営業職から医療事務に転職してから、ひどい首の痛みに悩まされるようになった。


「デスクワークでパソコンを見る時間が増えたせいかもしれませんが、首がつったような状態が長く続いて、ひどい痛みで立ち上がれないこともありました」


 治療のため2カ月ほど整骨院に通い、鍼(はり)治療も受けた。しかし症状は全く改善しない。何が原因なのか、ネットやSNSで調べるうちに「眼瞼下垂」という病気があることを知った。


 眼瞼下垂は、まぶたを上げる筋肉が弱まり、うまく目を開けられなくなる病気だ。物が見えづらくなるだけでなく、頭痛や肩こりなど、様々な不調の原因にもなる。


「実は同じ時期に、テレビの画面が見づらくなったり、アイラインがうまく引けなくなったりしたんです。それで『もしかして』と思い、病院に行ったら眼瞼下垂と診断されました」


 藤原さんは、診断を受けてから1カ月後に両目を手術。手術自体は1〜2時間ほどで終わり、入院の必要はなかった。症状は軽度ではあったが保険が適用され、自己負担額は4万5千円ほどで済んだそうだ。


「手術後は、1週間ほどで腫れも引いて職場に復帰できました。以前は目がかすんで、眼鏡なしではテレビが見られなかったのですが、術後は視界がクリアになり、首の痛みも和らいでほっとしました」


 藤原さんのように、気づかないうちに眼瞼下垂になっていて、体に変調をきたすケースは少なくない。


 埼玉県で、まぶたや涙道の専門治療を行うかつむらアイプラストクリニック院長の勝村宇博医師は、「眼瞼下垂は、加齢とともに進行しやすい」と話す。


「通常、まぶたは『挙筋腱膜』と『ミュラー筋』という二つの筋肉を使って上に引っ張ることで開閉していますが、年をとるとその筋肉が薄くなったり、脂肪に置き換わったりして、少しずつまぶたが開きづらくなっていきます。加齢により顔の印象も変わるため自覚しづらいのですが、年を1歳重ねるごとに眼瞼下垂になる確率は5%上がっていき、70歳以上の方の約3分の1が眼瞼下垂になっているという医学的データもあります」


 一方で、藤原さんのように若くても、生活習慣などが原因で発病することもある。




「原因として多いのが、ハードコンタクトレンズの使用やアイメイクです。まぶたの筋肉はとても薄いため、繰り返し強くこすったり引っ張ったりすると、筋肉が周囲の組織から外れる形になり、まぶたが下がってしまいます。それから、顔のマッサージも方法によっては要注意です。シワやたるみをなくそうとして、おでこや顔の皮膚を手で引っ張る方がいますが、逆に筋肉や皮膚がのびて、たるんでしまう危険のほうが大きい。まぶたの筋肉を鍛えることはできないので、眼瞼下垂を防ぐには、とにかくまぶたに負担をかけないことが第一です」


■不眠や抑うつの原因にもなる


 勝村医師によると、眼瞼下垂の初期には「まぶたが重く開けづらい」「目がかすむ」「上のほうが見えづらい」といった症状が出ることが多いそうだ。さらに病状が進行すると、外見が変化して常に「眠そうな目」になったり、涙が出続けて視界がぼやける「流涙」症状が出たりする。


「また、眼瞼下垂になると、無意識に眉毛を上げておでこの筋肉(前頭筋)を使ってまぶたを上げるようになります。これにより顔から首にかけての筋肉が緊張してしまい、頭痛や肩こりといった症状が出ることもあります」


 こうした症状に加えて、勝村医師が診察した中には、眼瞼下垂の治療によって精神的な落ち込みや不安が解消されたケースもあったという。


「実はまぶたの開閉は、自律神経にも少なからず影響しています。特に更年期にあたる50〜60代の女性の方は、不安やいら立ち、抑うつ、不眠といった症状が出ることがありますが、その原因として眼瞼下垂が潜んでいることもあるのです」


 ただし先述したように、眼瞼下垂は加齢とともにゆっくりと進行することが多いため、なかなか自覚することが難しい。簡易的なセルフチェックとしては、おでこを指で押さえる方法がある。


「眉毛の上あたりを両指でぐっと押さえて、おでこの筋肉を静止させた状態でまぶたをパチパチしてみてください。目が開きづらかったり、開いても黒目にまぶたがかかっている場合は、眼瞼下垂の可能性があります」(勝村医師)


 では、眼瞼下垂になってしまったら、どのような治療が必要になるのだろうか。


 眼瞼下垂治療を専門に行う形成外科医で、眼瞼下垂情報サイト「まぶたのお医者さん」を運営する金沢雄一郎医師は、「現状では、根治するには手術しか方法はない」と話す。




「多くの場合は『挙筋腱膜前転法』という術式によって、緩んでしまったまぶたの筋肉の連結を復元する手術を行います。手術時間は、両目で1時間くらい。眼科でも形成外科でも手術は可能です」


 気になる費用だが、健康保険が適用された場合は、両目で総額15万円程度。自己負担額(3割の場合)は5万円弱くらいとなる。一方、自費診療の場合は35万〜70万円と、病院によってばらつきがあるのが実際だ。


「保険の適用条件は、医師によって『病的である』と診断されることですが、実は厳密な基準はありません。年代や身体的特徴によって個体差が大きすぎて、数値基準を作るのは難しいのが実情です。身体からのサイン(例:片方の眉毛が異常に高く上がっている、黒目にまぶたが深くかぶさっているなど)が確認される場合や、目の大きさに明確な左右差が認められる場合などは、保険適用になる可能性も高いと言えます」(金沢医師)


■生活習慣病で進行することも


 また、手術をすると少なからず見た目の印象が変わるため、「二重の幅をこれくらいの広さにしたい」「同時に皮膚のたるみを取りたい」といった細かい要望がある場合は、自費診療で対応することになるという。


「保険で対応できるのは、あくまで機能回復の範囲にとどまります。実は、手術ではここがいちばんトラブルになりやすい。最終的にどのような形に落ち着くかは、ダウンタイムを終えた後でなければわかりません。また、そのシナリオも無数にあり調べきれないため、生じた結果を受け入れる心の余裕も必要です。想定外のことが起きたときのアフターケアについても、あらかじめ調べておいたほうがいいでしょう」


 手術では、まぶたの皮膚を切開する。傷痕は、二重の谷間に入り込むので目立たない。術後1週間は入浴(シャワーはOK)や激しい運動など、顔が火照(ほて)るような行為は控えたほうがいいが、メイクは傷に直接触れなければ次の日からOKだ。


「大体、術後1週間で抜糸しますので、その後は内出血などがひどくなければ見た目も問題なく生活できます。目の腫れが引くのに大体1カ月、完全に目のむくみが落ち着くまでには大体3カ月ほどかかりますね」(金沢医師)


 金沢医師は、35歳のときに自身も眼瞼下垂の手術を受けたが、そのきっかけは担当した患者さんから様々な声が寄せられたことだったと話す。


「肩こりや頭痛だけでなく、呼吸がしやすくなった、不安障害が治ったという方もいました。ある50代の女性は、週に3回マッサージに通っていましたが、背中の筋肉がこり固まってしまい夜中に目が覚めるくらい息苦しかったそうです。それが眼瞼下垂の手術をした途端、背中がすごく楽になったと連絡をくださいました。その女性は目の大きさに左右差があったので、すぐに眼瞼下垂だとわかったのですが、そうした自覚がなくても肩や背中の不調が続いているようであれば、眼瞼下垂を疑って病院で診てもらってもいいかと思います」



 一方で、眼瞼下垂かと思いきや、全く別の病気が潜んでいる場合もある。


 静岡県浜松市にある高田眼科院長の高田尚忠医師は、「眼瞼下垂に似た症状が出る病気として『眼瞼痙攣』と『重症筋無力症』があります」と話す。


「眼瞼痙攣は、自律神経の不調などが原因となって、脳が顔の筋肉に異常な信号を送り続けてしまい、勝手に目が閉じてしまう病気です。眼瞼下垂が目を開く“アクセルの筋肉”に異常が出るのに対し、眼瞼痙攣は目を閉じる“ブレーキの筋肉”が誤作動を起こしている状態だと言えます」


 特に更年期の女性に多く、一部の抗不安薬や睡眠薬をきっかけに発症するケースも少なくないという。


「眼瞼痙攣の場合は、ボトックス注射で筋肉の痙攣を止めることが第一選択となりますが、眼瞼下垂と誤診して手術すると余計に悪化してしまうこともあるので注意が必要です」


 また、重症筋無力症は、自己免疫の不調により筋肉が動きにくくなり、全身の筋力が低下する疾患だ。特に、目の周囲の筋肉に症状が強く表れるタイプを「眼筋型」と呼び、眼瞼下垂症を発症することがある。


 恐ろしいことに、劇症になると呼吸困難となり、命にかかわるケースもあるそうだ。


「つい先日、当院のメール相談でも『まぶたが急に下がった後、すぐに元に戻ったのですが眼瞼下垂でしょうか?』という問い合わせがありました。『それはおかしいので、すぐに神経内科を受診されてください』と返信したところ、やはり重症筋無力症と診断され、即日入院治療となったケースがありました。突然まぶたが下がったり、すぐに改善したりと、症状が安定しない場合は危険性が高いため特に注意が必要です」(高田医師)


 重症筋無力症の発症ピークは、男性が50〜60代、女性は30〜50代だという。


「重症筋無力症による眼瞼下垂の場合は、『アイスパックテスト』と言って、まぶたを氷で冷やすと目が開くという反応が見られるので、気になる方は試してみてください」


 このほかにも、脳梗塞や脳動脈瘤によって神経が麻痺することで急に片側のまぶたが下がったり、高血圧や糖尿病など、生活習慣病によって眼瞼下垂が引き起こされたりするケースもある。これらの原因は血液検査をすればわかるので、急に目の形が変わったり、違和感を覚えたりした場合は、早めに専門の医師に相談しよう。(ライター・澤田憲)

※週刊朝日  2022年5月27日号


このニュースに関するつぶやき

  • 私もたぶんこれ。もっと年取ってひどくなるようだったら手術したい。眼科でいいのかな?
    • イイネ!2
    • コメント 0件

つぶやき一覧へ(29件)

ランキングライフスタイル

前日のランキングへ

ニュース設定