吉岡里帆主演「ハケンアニメ!」の吉野耕平監督、「デビュー作でボロボロになった」 苦しい経験を糧に完成させた熱い作品を届けたい

0

2022年05月20日 15:10  まいどなニュース

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

まいどなニュース

写真うおお柄本佑!吉岡里帆!中村倫也!尾野真千子!©︎2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会
うおお柄本佑!吉岡里帆!中村倫也!尾野真千子!©︎2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会

アニメ業界に携わる人たちの一途な情熱を描き、多くの読者の胸を熱くさせた辻村深月さんの小説「ハケンアニメ!」が待望の実写映画化。5月20日から劇場公開がスタートした。主人公の新人アニメ監督を演じる吉岡里帆さんの熱演も話題の本作を監督したのは、CMプランナーやCGクリエイターとしても活躍し、劇場長編デビュー作「水曜日が消えた」(2020年)で注目を集めた吉野耕平さん。「『水曜日—』でボロボロになった経験が役に立ちました」と、やや自嘲気味に語るその真意とは。

【写真】吉岡里帆さんとの舞台挨拶では笑いも

吉野監督は1979年、大阪府吹田市出身。実写やアニメ、MVなどを幅広く手掛け、新海誠監督の大ヒット作「君の名は。」(2016年)にもCGクリエイターで参加している。

■群像劇とアニメ2本を同時進行で…

「ハケンアニメ!」は、そのクールのNo.1<覇権(ハケン)アニメ>を目指してしのぎを削るアニメーターたちの“お仕事ドラマ”で、劇中で作られるアニメ作品も実際に登場するのが大きな見どころ。吉野監督は実写パートの複雑な群像劇に加え、2本の本格的なアニメパートも同時に差配するという難しいミッションに挑むことになった。

「とにかく本当に大変でした(笑)。物語の進行に合わせて、アニメのどの部分が必要かをひとつずつ判断しないといけない。ここはコンテだけでいいのか、色つきのカットまで要るのか、テレビ放送されているのを見ているのは誰で、どんな反応を盛り込むべきなのか…。ややこしいパズルを延々と解き続ける感覚です」

■作品のことを第一に考える吉岡里帆に刺激

主演の吉岡さんは、柄本佑さん演じる敏腕プロデューサーや百戦錬磨のスタッフたちに振り回されながらも、愛するアニメの制作に一心不乱に打ち込む新人監督を熱演。CMなどで見せるやわらかいイメージとは全く異なる魅力を見せ、物語を力強く牽引していく。

「吉岡さんはすごく真面目な方で、僕の意図を汲みながら、自分がどう演じれば作品のためになるのかを真剣に考えてくれました。『今回の作品ではどういうトーンが必要ですか?』と最初に聞かれたので、一生懸命お話しさせていただいた記憶があります。アニメ監督として開花して、物語が加速していく後半の演出は、ほぼ吉岡さんのアイデアと言っていいかもしれません」

■初の劇場長編「水曜日が消えた」でボロボロに

初めて監督を任され、現場でなかなか思い通りにいかない主人公の葛藤は、実は吉野監督が「水曜日—」で経験したことが多分に反映されているという。

「初めてのことばかりだったこともあり、脚本の修正はギリギリまで続きましたし、自分のやり方と映画現場のやり方が違うことにも苛立ちました。映画監督って実際は中間管理職みたいなところもあって、意外と普通の“お仕事”なんですよ。いろんな人の間で板挟みになりますし(笑)」

「結果的にプラスの経験になったとは思いますが、監督の自分より周りのスタッフの方がキャリアが長いので、そういう意味でもやっぱりやりづらさを感じることは多かったです」

そんな「水曜日—」に主演した中村倫也さんは、本作「ハケンアニメ!」で天才アニメ監督の王子千晴を演じている。吉野監督とは2度目のタッグだ。

「中村さんも『水曜日—』の現場でぶつかった一人(笑)。喧嘩をしたわけではありませんが、『俳優には俳優の生理がある』『意味がわからず演じることはできないので、何がしたいのかちゃんと説明してほしい』とストレートに言われたのを覚えています。中村さんのそんな真面目さと、飄々とした明るさは、本作の王子監督のイメージにピッタリでした」

■中学時代の自分に届く作品を

インタビュー中、(こちらが水を向けたからでもあるのだが)とにかく「水曜日—」で心身ともに疲弊したことを苦笑しながら繰り返す吉野監督。では「ハケンアニメ!」を無事に完成させ、公開を迎えた今の心境はどうなのだろう。

「やっぱり今回もボロボロです(笑)。2作分のアニメの設定を考え、実写とアニメを合体させ、アニメを見た人のSNSの反応もひたすらカチカチ打ち…。やらなきゃいけないことが多すぎて、ずーっと働いていた気がします」

「作品が完成しても、試写の前はやっぱり震えますし、隠れたくもなります。公開後はSNSの反応も怖いので、正直、もうパソコンやスマホにも触りたくありません(笑)」

「作品が誰かに届きますように」という作り手たちの祈るような思いが胸を打つ物語。吉野監督は「映画やアニメに限らず、何かモノを作ったり書いたりすることは、答えのない戦いに似ているかもしれない。だから究極的には、自分の中にいる“誰か”に届けるしかないと思っています。僕にとっては、10年くらい前までは『宮崎駿さんに見てもらいたい』という夢がありましたが、今は、衛星放送などで映画を一生懸命見ていた中学生の頃の自分を思い浮かべます。映画の企画を考える際も、『中学生の俺は見たいと思うだろうか』『ワクワクしてくれるだろうか』ということを常に意識しています」

◇ ◇

「ハケンアニメ!」

出演:吉岡里帆、中村倫也、柄本佑、尾野真千子

原作:辻村深月「ハケンアニメ!」(マガジンハウス刊)

(まいどなニュース・黒川 裕生)

動画・画像が表示されない場合はこちら

    ニュース設定