「志尊淳じゃなきゃダメ」求められることが一番嬉しい。【映画『バブル』インタビュー】

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2022年05月21日 11:01  ウレぴあ総研

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ウレぴあ総研

写真 撮影/杉映貴子
撮影/杉映貴子
突然、重力のバランスが崩れてしまったら? そんなもしもの世界を描くのが映画『バブル』だ。

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世界に降り注いだ謎の泡の影響で、重力が崩壊した東京。ライフラインを絶たれた東京では、若者たちがチームを組み、ビルからビルを駆け回るパルクールに興じていた。

ある日、パルクールチーム・ブルーブレイズのエースであるヒビキは、危険なプレイが原因で海へと落ちるが、そこで不思議な力を持つ少女・ウタに命を救われる。

パルクールのセンスは抜群……しかし、他人とはあまり深く関わらないように、あまり周りともコミュニケーションを取らない寡黙な少年・ヒビキを演じる志尊淳さんに話を聞いた。

■ヒビキとの共通点は「一匹狼」?

――最初、脚本を読まれたときの印象はいかがでしたか。

台本の段階でもおもしろいと思ったんですけど、絵を見たときに、こんなに広がっていくんだ! というワクワクというか……何か、未知の世界に飛び込んでいく刺激がありました。

――「ヒビキ」という役作りはどのようにされたのでしょうか。

「声優だから」という役作りは特になかったです。僕を選んでいただいているということは、今までの形を変えてやってくれ、ということじゃないと思ったので、普段、演じている声だけを切り取られている、というイメージでやっていました。

――「ヒビキ」のキャラクターに共感したり、似ていると感じる部分はありましたか?

ヒビキは一匹狼と言うか。僕も結構ひとりでいるのが好きなタイプなのでそこは共感できますね。

ただ、役を作るときは共感するか、しないかではあまりやっていないんです。それをやってしまうと、主観的になってしまう。自分とヒビキは違う人物として切り離して、「ヒビキはこんなふうに思っているんだ」と考えて作っていきました。

■監督の想いに応えたいという気持ちで受けた

――今回、声優を務められているのは名だたる方たちが並んでいらっしゃいます。プレッシャーなどはありましたか?

プレッシャーしかなかったですね。あんな錚々たる声優陣に囲まれて、真ん中に立つってすごくプレッシャー。やりたくないって思いました(笑)。

お話をいただいたときは本当に自分で良いの? 足引っ張らない? と思いましたし。最初、マネージャーさんから聞いたときに「自信がないです」という話をしたら、一度監督さんと話してみる?ということになったんです。

――荒木監督と直接お話をされたんですね。

監督とプロデューサーさんとお話しました。「自分でいいんですか?」という話をさせてもらって、そのときにすごく熱く話していただいたんです。それで自分が求められていることを感じて。

この仕事をしていて一番嬉しいことって求められることなんですよね。監督から「志尊くんじゃなきゃダメなんだ」って言っていただけたのは嬉しかったですし、その気持ちに応えたいな、と思いました。

これまで、マネージャーさん経由で聞くことはありましたが、面と向かってここまで熱望されたのって初めてかもしれないです。

――収録などで実際にほかの声優の方とは会われましたか?

会ってないんです。初めて会ったのは完成披露試写会のときですね。作品中はずっとひとりでしたよ。他の声も入っていない状態で。広い部屋の真ん中に立って……本当に自分との戦いみたいな感じでしたね。

ただ、監督や音響監督さんがすごく丁寧に演出をつけてくれていたので、孤独は感じなかったですね。

■これまでの仕事が今の自分を作っている

――これまでも声優を務められたことはあると思うのですが、その経験は自信につながっていましたか?

もちろん、経験値としては上積みされていますけど、気持ちとして上積みされていることはなくて。前回うまくいったから、自信が持てるというのは一切ないですね。でも、プロとしてやっている以上、不安になっているのはよくないので、現場に入ってからは、自分ができることを精いっぱいやらせてもらいました。

――収録中に演出をつけていただくことで印象に残っていることはありますか?

例えば、もうちょっと声を張ってほしいとか、もう少し声のトーンを下げてほしいとか、そういう演出って声優以外のお仕事でも受けてきたんですけど、役者からしたら少し難しくて。

言われた形容詞で状態を演じることになるんですよね。「もっと悲しく」って言われて悲しそうに演じるよりも、こういう気持ちだから、結果として悲しくなるよね、という感情面からの演出を最初からしてくださったので、とてもやりやすかったです。

――演じていて、大変だったり辛いところはありましたか?

走りながら、とか、飛びながらセリフを話しているところは、声優だとその負荷がかけられないんですよね。普通のお芝居の現場だったら、その状況を演じているから、本当のリアクションがでるけど。いかにその負荷を自分自身でかけて、その声を作れるか、というのが一番難しいところだと思うんです。

それは練習するのではなく、現場に行って、実際に負荷をかけてやってみたりしていました。パルクールの息遣いは昔、戦隊ものをやっていたときのアクションの息遣いとちょっと似ていたのでよかったんですけど、それ以外のところは、現場で作っていましたね。

――過去の作品も今の志尊さんの力になっているんですね。

もちろん。この作品のこの部分が役に立っている、というわけじゃなくて、ひとつひとつの作品の積み重ねが今の自分だな、と思います。

■想像もしていなかった仕事をもらえることが楽しい

――今回、声優として主演という大きな仕事だったと思うんですが、新しく見つかった仕事での目標はありますか?

ないですね。声優の仕事をやるときはこれで最後、って毎回思っていて。

――えっ、そうなんですね。

声優の仕事をやりたいとは簡単に言えないですね。それを生業としている声優さんたちがいて、本気で向き合っていらっしゃっていて……。

本当に、本当に、求めていただいたらやりたいですけど、簡単に「やりたい」と言えないのが現状です。でも、『バブル』が最後の声優の仕事だったらこんな幸せなことはないな、と思います。

――では、役者として、今後やってみたいな、というものはありますか?

あんまりないですね、僕は。何年後にはこうなりたい、とか全然ないんです。自分がどうなっているか分からないので。

――流れに身を任せる、みたいな……。

そのとき、自分がいいと思ったものをやりたい、という感じですね。それで後悔しても全部自分の責任だし。

この仕事で一番楽しいのは、想像していなかったような仕事をもらえることだと思ってるんです。もちろん、「ここを目指している」と言える人のことはすごいと思います。僕はそこまで自信がなくて、あまり言いたくないタイプですね。

――自信をつけよう、とかは特に意識されることなく?

別に自信はなくてもいいかな、と思っています。自信がある、って主観的なことだけじゃないですか。

自信を持ってやるのと、自信がなくてやるのは違うと思うけど、プロとしての意識を持って今まで培ってきたものを表現しないと、と思って取り組んでいるので、そこに差はないと思っています。もちろん、自信に変わったら楽しいんでしょうけどね。

それに、まだまだだな、と思っているほうが、選択肢が広がるというか、伸びしろはあるな、って。

■心から携われてよかった、と思える作品

――今回はパルクールチーム内のチームワークもひとつの要素かと思うのですが、いろんな現場に行かれた際に、コミュニケーションの取り方で気をつけていらっしゃることはありますか?

そこまでは意識していないんですけど、自分がどういう立ち位置でその作品に携わるかにもよると思うんですよね。臨機応変に現場によって変えているというのはあると思います。

でも、僕はあんまり深く入りすぎないかな。その現場が終わってから深く仲良くなることはあるんですけど、現場中は一定の距離を保つタイプの人間かな、と最近思っています。

――それはお芝居に影響するから……とかですか?

特に理由はないですけど、あんまり器用なタイプじゃないから。みんなと深く仲良くなって作品を、というふうにはできないのかも。わかんないですね、日々変わっていきますし。

――チームとして理想の形はありますか?

お互いを尊重して、それぞれがストレスなく、自分らしくできるかじゃないかな、と思います。

――主演として現場に入られることも多いかと思いますが、そのときに意識されることはありますか?

作品の内容にもよりますね。同年代がいるかいないのか、とかにもよりますけど、この作品よかったな、楽しく帰ってほしいな、と思うぐらいです。

――個性豊かな方がいらっしゃる中で、まとめることを意識されたり……。

しないです。そんな立場にないですから(笑)。もちろん、自分が主演で全員が年下となったら、引っ張っていかなきゃという意識は芽生えますけど、まだ自分が一番年上という現場はないですね。

――最後に、作品を観てくださる方に注目してほしいポイントなどあればお聞かせください。

もう、観てもらえるか、観てもらえないかの差かな、と思います。観てもらえればわかると思うんですよね。着眼点も違うし。

今回観て思ったのが、アニメは実写の作品よりももっともっと表情が細かいところが見えたり、逆に見えなかったり、本当に想像できる幅が広いと思います。だから、あんまりここを観てほしい、というのは言えないですね。

どうやってこの作品を観てもらおうかって考えたときに僕が言えるのは、本当に僕自身が携われてよかったな、と心から強く思えた作品だということ。もうその言葉に尽きますね。

映画『バブル』は公開中。

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