渡邊雄太「いろいろ弱音を吐いた」。波乱万丈の4シーズン目で知ったNBAの厳しさ

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2022年05月21日 11:31  webスポルティーバ

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 去年夏、NBAでの4シーズン目を前に、渡邊雄太(トロント・ラプターズ)はこんなことを言っていた。

「客観的に見たら、けっこうすごいことをやっているというか......。NBAで4年間生き残れる選手ってなかなかいないですし、立場的には一切ラクができない状態のなかで、こうやって4年目を迎えられるっていうのは今まで頑張ってきた証拠かなと思うんで。(NBA)4年目は大変な1年にはなると思いますけれど、自信をもって、楽しんでやっていけたらなと思っています」

 自分のことを第3者目線で見ることがあるという渡邊だが、これもまさにそんなコメントだった。渡邊にしては珍しくNBAで4シーズン目を迎えることを自画自賛し、と同時に「大変な1年になる」と気を引き締めた。




 2018年にNBA入りしてからの渡邊は、まずはNBAチームと傘下のGリーグチームを行き来するツーウェイ契約でロスターに残れるように、そしてその次はNBA本契約をもらえるように、目の前の目標に向かって必死に努力し、それをひとつずつ達成して前進してきた。

 そんななかで迎えた4シーズン目。初めてシーズンを通してNBA本契約選手として過ごした2021−22シーズンは、渡邊が思っていた以上に波乱万丈となった。そして、それだけいろいろとあったからこそ、学びも多かった。

 シーズン前半は、すべてが上向きだった。開幕前に故障して少し遅れを取ったものの、11月下旬に復帰すると、1月頭までの15試合中14試合でローテーション入りして、毎試合10分以上出場した。

 そのうち2試合では、ダブルダブル(得点とリバウンドでふたケタ)を記録。この14試合ではチームも8勝6敗と勝ち越した。渡邊にとって、世界最高のNBAというリーグに自分の居場所があると自信を持つことができた1カ月余だった。

本契約選手のプレッシャー

 しかし、1月頭に新型コロナウイルスに感染して離脱したところから流れが一変した。復帰直後に出た試合でうまくリズムに乗れず、期待されるプレーができなかった。うまくできなかったことで出場時間が減り、短い時間で結果を出さなくてはとプレッシャーも感じた。その後は出番がなく、試合が終わることも増えていき、精神的に厳しい時期を送った。

 シーズン後、渡邊はその頃のことについて、こう明かしている。

「そもそも、あまり僕は弱音を吐かないんですけれど、今年に関しては、友人にけっこういろいろと弱音を吐きました」

 昨シーズン終盤にツーウェイ契約から本契約選手になったことで、それまで以上のプレッシャーを感じるようになったことも影響していた。

「求められていることはもちろん、去年に比べて今年は高くなっていますし、試合に出てある程度の結果を残すと、次はこれができて当たり前っていうふうになる。次はもっとステップアップしてもらわなきゃいけないっていうふうにチームとして思うのは当然のこと。

(シュート)1本1本に対するプレッシャーももちろんかかりますし、特にローテーションから外れだした時期は、短い時間で何かインパクトを残さないと、3分とか4分ですぐに交代させられてしまうこともあったんで、そこに対するプレッシャーは正直あった。ただ、それを乗り越えていかないと、そこで決めきれないと、そこで結果を出さないとやっていけいない世界ではあるんで」

 NBAはそれだけ高いレベルのことを求められる世界。それは入ったときからわかっていたことだった。

 そう言ったあとで、渡邊はさらにこう続けた。

「でも(12月に)試合に出ている時には、それをできるだけの力があるという証明は絶対にできたと思う」

 本契約、そしてローテーション入りと、目標を達成したことで得た自信と、そのことで感じるプレッシャー。それはどちらも、高いレベルを目指すからこそ経験することだ。

チームメイトの復活に学ぶ

 今シーズン渡邊が経験したことは、ほかの多くのNBA選手が辿ってきた道でもある。目的地への道は、必ずしも最短距離でまっすぐ続くとは限らない。時には逆戻りすることもある。前進しているのか、後退しているのかわからないこともある。

 努力したからといって、すぐに結果が見えるわけではない。うまくいかずに、精神的に追い込まれて、さらに調子を落としてしまうこともある。悩む理由は人それぞれだが、悩み、それを乗り越えようともがくことは、スーパースターでも、ロスター入りぎりぎりのところにいる選手でも、同じだ。

 たとえば、渡邊にとって身近なところでは、ラプターズのチームメイト、パスカル・シアカムもコロナ禍後にそんな経験をした。

 2018−19シーズンにNBAのモスト・インプルーブド・プレイヤー(年間で最も成長した選手)に選ばれたシアカムは、そのシーズンのラプターズの優勝にも大きく貢献。翌2020年にはオールスターにも選ばれた。

 しかし、コロナ禍に突入し、2020年夏にオーランドの「バブル(感染拡大防止のための隔離環境)」で開催された再開シーズンや、本拠地をカナダのトロントからアメリカのフロリダ州タンパベイに移した2020−21シーズンに環境の変化にうまく対応できず、コート上でもオフコートでも苦しんだ。

 それだけの経験をしたあと、今シーズンは再びオールスター級の活躍をして、チームを牽引するまでに復活した。そんなシアカムの復活を、渡邊も間近で見てきた。

「お手本がいるっていうのは、本当にありがたいこと。パスカルが去年、苦労していたのも間近で見ていましたし、逆に今年、彼がまたあれだけの結果を残せるようになって、あれだけのプレッシャーのなかで、今年みたいな結果を残せるっていうのは...(すばらしい)。

 彼も本当にハードワーカーで、練習前もいつも早くきて、練習に取り組んでいるのを知っていますし、試合の日でも、あれだけ長いこといつも試合に出ているのに、個人的なワークアウトもやって、身体のケアとかもしっかりやっている。この2シーズン、彼からも間近で本当にたくさん学ばせてもらった。自分も彼を見習って、今後もっともっとやっていける部分があるかなと思っています」

今夏はFAとなる渡邊雄太

 NBA選手であり続けるためには、コート上のスキルはもちろん、オフコートでの生活、壁にぶち当たった時の対応など、そのたびに成長し続ける必要がある。NBAで積み重ねた年数に価値があるのは、単に高いサラリーをもらえるからでも、まわりから称賛されるからでもなく、成長しないと生き残れない世界でもがき、努力し、成長してきたことの証だからだ。

 ラプターズがプレーオフに敗退してオフシーズンに入った渡邊は、5シーズン目に向けての準備に入った。この夏はフリーエージェントになるため、来シーズンの所属チームがどこになるかはまだわからない。

「でも、どこに行くにしても、一番大事なのは自分の成長」と渡邊は断言する。

「ある程度の結果を出すと基準がどんどん高くなっていくけれど、それをどんどん超えていける選手がNBAで長くやっていける選手なんじゃないかなと思うので。僕もこの夏、しっかり成長して、どんどん基準値が高まっても、それを超えていくような選手になっていけたらなと思っています」

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