性的なことばを音読させ「おいで」と抱きしめる…高専准教授が性暴力 被害にあった10代女子学生、軽すぎる処分に怒り

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2022年05月22日 08:01  弁護士ドットコム

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福島高専(福島県いわき市)の女子学生に不適切な指導を行ったとして、暴行容疑で書類送検されていた同校の40代男性X准教授が3月29日、不起訴処分となった。


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ニュースではX准教授が「アカデミックハラスメント」をおこなったと報じられていたが、体を触られたり性的なことばを言わされたりする性被害にあっていた。



被害を受けた女子学生・さくらさん(19歳・仮名)によると、高専3年の夏に学校に被害を訴えたが、X准教授は「訓告」という口頭注意処分で終わり、その後も学校に残った。PTSDを発症したさくらさんは、退学せざるをえなくなった。



「証拠が残りづらい犯罪は、日本の法律と本当に相性が悪く、適切な結果にならない事も多いと思います。ですが、相性が悪いからといって、諦めなければいけない問題なのでしょうか?」



「法律に怒ってもしょうがないのかもしれません。でも、どこにこの怒りや悲しみをぶつけたら良いのでしょうか」



さくらさんはPTSDの治療の過程で、自分がされた被害を1カ月ほどかけて物語のようにしてまとめた。さくらさんの許可を得て、手記の一部を引用する。



●研究室はさくらさん一人だった

2020年春、さくらさんは福島高専(5年制)の3年生になった。クラス担任はX准教授。高1の頃から面識があり、面倒見がいい印象はあったものの、深い付き合いではなかった。



高3から新たにプレセミナーが始まった。ひとつの研究室に最大5人の学生が所属して、週に一回研究・発表をするもので、さくらさんは「厳しいけど力がつく」と評判だったX准教授の研究室に決めた。その翌週、所属研究室が発表され驚いた。X准教授の研究室はさくらさん一人だったのだ。



「クラスは40人ほどいて、プレセミナーは10つの研究室に分かれます。X先生の研究室に入ると言っていた友達もいたので、驚いたのですが、今から変えられないし、しょうがないかなとそこまで気にしていませんでした」(さくらさん)



プレセミナーでは、毎週ミシェル・フーコーの哲学書を20ページずつレジュメにまとめて発表することになった。性的なことばが頻出するものだったが、授業で使うのならしょうがないと思った。



学生はさくらさん一人なので、毎週発表をしなければならない。毎回、X准教授から厳しく指摘され、プレセミナーの前はいつも「今日は怒られないかな、大丈夫かな」と不安な気持ちになった。そうして迎えた5回目のプレセミナーで、性的なことを尋ねられた。



いつも通りにレジュメを発表して、内容の振り返りに入る。欲望についての説明を聞いていると、「男は胸が大きい女性を見ると、生理現象、勃起とかが起こる。そんな感じでなるのが欲望だよ。僕は女性についてはどうかわからないけど、さくらさんもなるでしょう。良い身体つきの男性を見たりすると、エッチなこと考えない?」「どんなときに、エッチなこと考える?」と言われた。は?何言ってるんだろうと思ったが、授業の一環だと思い、ぐっと気持ちを抑えた。X先生は、良い先生だ。私はもう何度も、先生に相談させてもらっているが、先生はそのたびに的確な答えをくれて、私は凄く気持ちが軽くなる。そして、どうでもいい話に付き合ってくれたり、自分の時間を削ってまで、人の事を考えてくれるとてもいい先生だ。この質問には何か理由があるんだろう。私が理解する力がないから、例を使って分かりやすく説明してくれたのかもしれない。そう思い、これ以上踏み入れられたくなくて、ただ笑った。(手記より)



●「先生は良い先生だ」思い込むように

その翌週から、オンライン授業ではなく対面授業となった。授業時間は100分のはずだが、X准教授のプレセミナーは毎回3〜4時間にわたっておこなわれた。



プレセミナーの不安・恐怖やレジュメ準備のために、睡眠不足になっていたさくらさん。X准教授の研究室に相談にいくと、突然抱きしめられた。



「寝れなすぎます。私にはもう無理です」など、先生にプレセミの不満をぶつけていると、「おいで」と手を広げられた。なんでだろうと、一瞬思ったが、手を広げたのは、何もしないから、という意味だと思ったし、「おいで」と言うのは、私の声が小さくて聞こえないから近づいて、という意味かと思った。私は手を前に組んでいたので、このまま近づいたら、私の手が先生の下腹部にあたってしまうと思い、手を身体の横に持って行って、「もう、無理です」と、さっきの話の続きを言いながら、近づいた。すると、抱きつかれた。気付いた時には、背中に無骨で重い先生の手があった。上半身が密着していた。何が起こったのか分からなくて、フリーズした。手を振り払おうと思ったが全く力が入らなかった。ああ、私は女だ。先生の硬い手を感じ、自分はなんて脆くて力がないんだろうと思った。そのまま少ししていると、背中に水気を感じた。先生の手汗だった。全身に鳥肌が立ち、得も言われぬ不快感と恐怖が襲ってきた。これ以上私がなにか、アクションを起こさなかったら、何かされるかもしれないと、身の危険を感じ、突き放そうと、先生の腰まで手を動かした。でも、そこからどんなに力を入れようとしても、どうしても力が入らなくて、そこから逃げる事も、叫ぶ事もできなかった。ただただ怖かった。(手記より)



頭が真っ白になり、状況を理解するのに必死だった。「先生は良い先生だ」と思わないと自分が壊れるような気がして、さくらさんは「こんな感情を持ってはいけない」と自分の違和感を否定するようになった。



授業がはじまっても、先生の手の感覚は消えなかった。なんで?なんで?なんであんなことをするんだろう。いくら考えても分からなかった。抱きつかれたこともあるし、性的な言葉を言わされたこともある。自分が自意識過剰なのは分かっているけど、いやでもその事と繋げて考えてしまう。あの時の、先生の手や汗の感覚がよみがえってきて、強く恐怖を感じた。でも先生は良い先生だ。そんなことをするはずがない。私が自意識過剰なだけだ。なにか絶対理由があるはず。そうだ。私の理解力が遅いのを心配して、今回も先生自ら何かを教えようとしてくれたんだ。(手記より)



その後も「腕の長さを比べよう」と背中とお尻をくっつけられたり、クラスのホームルーム後に頭を撫でられたりした。



「ここで嫌な素振りを見せたら、逆に私がおかしいと怒られる。弱みを見せたから抱きしめられたんだと思っていました。だから、先生の前では普通にいなくちゃいけないと意識していました」(さくらさん)



●「懲戒免職ものだと思うよ」

夏ごろには、友人や他の先生からも体調不良を心配されていたさくらさん。プレセミナーの課題が多くて負担になっていることは話していたが、友達が離れてしまうかもしれないという不安や先生を信じていたい気持ちがあり、性的な被害については言えなかった。



しかし、すでに自分の感情をコントロールできなくなっていた。「自分がおかしい」とも思い切れなくなっていたが、先生を否定することになれば自分が壊れてしまうと思った。「X先生はおかしくない」と言ってもらえると思い、他の先生に相談することにした。これまでX准教授にされた嫌なことをまとめた紙を見せると、こう言われた。



「これは、やばいでしょ。懲戒免職ものだと思うよ。もっと上の先生に見せた方がいい」「すぐにハラスメント委員会を立ち上げます」



混乱したさくらさんは、X准教授の研究室へ行った。すると、太ももを触られた。その瞬間に、目が覚めた。



ほんの一瞬だった。先生から謝罪の一言は、なかった。その瞬間にすべてを悟った。ああ、あれは授業でもなんでもなくて、私は先生のおもちゃだったんだな。ああ、全部終わったんだな。(手記より)



●准教授は訓告処分のみ

2020年8月、ハラスメント対策委員会が開催された。しかし、さくらさんへのヒアリングは十分に行われないまま。2021年3月に学校から届いた書面には、以下のように書かれていた。



「学内で処分内容を審議しましたが、本審議の中では、厳しい処分を行う違法性を証明する、直接的な物的証拠が見つかりませんでした。そのため、本事案は、確認することができた事実を踏まえ、訓告等の処分としました」「本事案では、教員が性的な表現が頻出する教材を使用し、正規の授業時間を超えて、一対一のセミナーを行ったことが、ハラスメントに該当する行為として認定され、校長から処分が言い渡されています。本校教員が、当該行為を行い、さくらさんにつらい思いをさせたことは、大変申し訳なく、深くお詫びします」



訓告処分は口頭や文書で注意するもので、懲戒処分の中でも最も軽い処分の一つだ。さくらさんは、X准教授がこのまま学校に残るということにがく然とした。留年して学校に残るつもりでいたが、この書面を見てすぐに退学の手続きをとった。



2021年秋、さくらさんは警察に被害届を提出。X准教授は暴行容疑で書類送検されたが、証拠がないことから不起訴処分となった。



●「今もまだ被害にあったって思いたくない」

さくらさんは今も病院に通い、PTSDの治療を続けている。被害当時からは良くなったものの毎日漠然とした恐怖感に襲われており、「今もまだ被害にあったって思いたくない」。治療を受けてから半年以上経ち、ようやく「自分は悪くない」と気づいた。



「それまでは私が弱みを見せるから悪いと思っていたし、先生は授業の一環、あくまで教育の中でそういうことをしていると思っていたので、私が変だと思う方がおかしい。私さえおかしいと思わなければ…と思っていました」(さくらさん)



性暴力の加害プロセスには、精神的、物理的に逃げ道をふさがれ、明確な暴力がなくても追い込まれて被害にあうという「エントラップメント型」という型がある。当事者も性暴力であると認識しづらく、責任は自分にあるかのように思い込まされてしまう(『性暴力被害の実際』より)。



相手は信頼していた人だったからこそ、「もう誰を信用していいか分からない」と築いてきたものが壊れるような感覚だった。今も誰を信用していいのか分からないままだ。



「性暴力は、逃げればよかったんじゃないか、とか、触られただけ、で終わるものでは決してないと思います。他の誰かからみれば一瞬の出来事でも、被害者からすれば一生の出来事です。被害から1年以上が経ちますが、気持ちは当時のまま止まったままで、時間だけが無情にも過ぎていき、何もできずに毎日が終わります。そんな被害者の”これから”に永遠に加害を与え続けるのが、性暴力なんだと思います」(さくらさん)



●福島高専「これ以上の処分は考えていません」

福島高専にX准教授の不起訴処分について問い合わせしたところ、以下のような回答があった。



「本校では、昨年10月に書類送検された本件が、3月末に不起訴処分となったことを踏まえ、当該教員に対し、これ以上の処分は考えていません。今回問題となった不適切な行為等が、再び行われないよう引き続き再発防止に努める所存です」



訓告処分となった理由や、さくらさんへのヒアリングをしなかった理由、再発防止策の詳細などの質問項目については「回答を差し控えさせていただきます」とした。


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  • 女性の被害は被害として、本当なのでしょうか?申し訳無いのですが、今の時代、金銭目的の虚言である可能性は払拭出来ません。
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