プレッシャーは”怖い”より”ワクワク” 僕が「中村倫也に恥かかせられない」と思う瞬間

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2022年05月22日 12:31  ウートピ

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アニメ業界を舞台に、最も成功したアニメの称号=「ハケン(覇権)」を手にすべく奮闘する者たちの姿を描いた『ハケンアニメ!』(吉野耕平監督)が5月20日(金)から公開されました。

原作は辻村深月さんの人気小説で、劇中に登場するアニメ制作には『攻殻機動隊』シリーズなどで知られるProduction I.Gをはじめ、日本を代表するアニメプロダクションやトップクリエイター陣が参加し、東映アニメーションが監修を手がけていることも話題になっています。

吉岡里帆さん演じる新人アニメ監督・斎藤瞳のライバルにあたる、天才ワガママ監督・王子千晴を演じた俳優の中村倫也(なかむら・ともや)さんにお話を伺いました。

王子千晴を演じて思ったこと

——瞳の憧れでもあるスター監督・王子千晴を演じるにあたり、どんな人物像をイメージしながら現場に臨まれましたか?

中村倫也さん(以下、中村):王子はわがままな子供のようでありながら、実は繊細でナイーブなところもあるし、周りを見ているところもある。そういうことをひっくるめて監督という立ち位置なので、意図的に傍若無人みたいなのをやっているというところもあるかなと思いながら、何となくそういう感じで入りました。

——実際に演じてみてご自身と近い部分はありましたか?

中村:吉野監督から「中村さんの素に近いキャラでオファーしました」というようなことを言われていたので、近い部分はもちろん感じてました。

昨日も吉岡里帆ちゃんとある雑誌の読者の仕事に関するお悩み相談の取材を受けていたのですが、里帆ちゃんがすごく優しい答えをしていて、一方僕は極論で答えてしまって。

そのお悩み相談を読んだ時のファーストインプレッションがものすごく現実的というか極論が浮かんだんです。「ぐうの音も出ねーよ」みたいなことをズバッと言っちゃうところが王子っぽいという話になりました。「これすげー王子じゃね?」って言ったらみんな笑っていたので、そういうところも近いのかなって。まあでも、極論は言っちゃいかんですよね。悩み相談で(笑)。

——王子の監督という職業も俳優という職業も業界としては近いと思うのですが、「分かるなあ」と思いながら演じてる部分はありましたか?

中村:王子は監督なので0から1にする人なんですよね。僕ら役者は脚本や企画があるところに役者セクションとして入るので産みの苦しみというかそういうものは近いのかなと思います。アニメ業界は同じフロアの隣の隣の教室くらいの感じがあって、もちろんクリエイティブの種類の違いはあるんですけれど、似たような感覚を抱いていますし、監督や脚本の産みの苦しみっていうのも、目にしてきてるので、感覚の部分でも、性(さが)みたいな部分でも、何か近しいところにある気はしてました。

「勝手に”何か”を受け取ってきた」

——王子も瞳もアニメが「現実を生き抜く力」の一つになると信じている人物ですが、中村さんはいかがですか? ドラマや映画、アニメなどのエンタメ作品に救われたり、心の支えになったりしたエピソードがあれば教えてください。

中村:何段階かある気がします。この世界に入る前の段階、それこそ幼少期から考えると、おかんが延々、家で見ていた『ムトゥ 踊るマハラジャ』とか『スピード』とか。ちっちゃい頃に見て衝撃を受けた『セブン』とか、おかんが「これ見なさい」って持ってきた『フォレスト・ガンプ』とか。そういう作品はちっちゃいながらにいまだに覚えてるものだし、『セブン』や『フォレスト・ガンプ』はいまだに見るし……。

アニメもディズニーやジブリ、ガンダムとかエヴァもちっちゃい頃から触れてきているし。子供ながらに『もののけ姫』を見てちょっと考えたりとか、観客として衝撃や娯楽性を受けてきた時代があって、漠然とした、提供される側として見ていた立場があるんですよね。

それから養成所に入って1年に200本くらい、高校生のときはTSUTAYAでレンタルして見ていたんですけれど。「オスカーを網羅しよう」とかいろいろやっていたんですけれど、そういう意識を持って見始めた頃の目線が変わった立場で見るようになって、この世界に入って単純に客としては見れなくなったという部分もあって……。

でも、そんな中で思春期とか社会に出て揉まれてウダウダやっている頃に「誰も共感してくれないな」と一人で抱えていた、漠然とした孤独みたいなものをすくいとってくれるような作品との出会いもありました。そういう意味で何段階かあるなとは思っています。

自分が生み出す側になってある程度経ってみて思うのは、僕が出会ってきた作品や今でも覚えているちっちゃい頃に見たものとか、養成所時代に見て「この芝居すごいな」と思ったものとか、すくいとってくれた作品とか、目線や立場はそれぞれ変わっているけれど、心に残るような人生に残る出会いってあって、自分が生み出すものも(劇中のセリフの)「刺され!」じゃないですけど、どこかの誰かにとって、生きていく上での何かになればいいなというのは強く思います。

自分の手を離れたらその人のものだって王子も言いますけれど、まさしくそれと同じように”何か”になればいいなと思います。それが”何か”までは決めつけないですけれど。今はそんなふうに思っています。

——その”何か”を決めるのは観客である受け手側だから……。

中村:僕は特にそう考えてますね。よくインタビューや取材で「この作品の見どころは?」とか、「この作品を見てどう思ってほしいですか?」とか聞かれることもあるんですけれど、ゼロですね。だから今日は絶対聞かないでください(笑)。

——それは作り手が”何か”を決めるのは「おこがましい」という意味でしょうか?

中村:というよりも、ワインみたいに受け取った人の中で熟成されることが一番ベストだと思っています。自分を振り返っても、そうやって僕は勝手に受け取ってきたから。何かを断定するような芝居もしたくないし、何かを断定する言葉もあまり使いたくない。

こういう立場で発信する自分の言葉って結構デカいと思うから、だからいつもお茶を濁すようにふざけるんですけれど、そういうやんごとなき事情があって、いつもふざけるんです(笑)

「中村倫也に恥かかせられない」期待とプレッシャーはチャンス

——王子は天才アニメ監督と言われるもスランプに陥り、8年ぶりの新作『運命戦線リデルライト』で復活をはかります。王子が抱えるスタッフや取り巻く関係者からのプレッシャーや重責も伝わってきましたが、中村さん自身は期待とプレッシャーについてはどんなふうに考えていますか?

中村:自分は多分、期待されることと、プレッシャーがかかることを望んでやってきてるので。それがあって、しかも今の立場もあるので(期待やプレッシャーが)あって当然になっている。その状態がまずうれしいですし。あと、期待やプレッシャーがある状況のほうが怖いし、怖いんだけれど、怖くないと成長できないとも思っています。だからチャンスなのかなと思いますかね。怖いというよりワクワクするんですよ。

自分で中村倫也に恥かかせられないというか。中村倫也なめんなよって思ってる自分もどこかにいます。自分を褒めるというのではなくて、「そのくらいやれるだろ」っていう意味のはっぱのかけ方として。

乗りこなすというか、いざやるとなったときに自分の思う胸の張れるものを差し出したいという気持ちがありますね。「僕は、この役はこうだとやりながら感じたので、こう演じました」とちゃんと言い切れる仕事をすることが大事だなと思っています。もちろん、脚本だったり、書かれてることや求められてることはあるんですけれど、それを踏まえた上で「応えました!」ではなくて、「それをやる上で自分はこう思ってこうやりました!」というところまでやらないといけないなと思っています。

——期待に応えるだけじゃなくて……。

中村:そう思ってやってますね。それは自分の性格上そうですし、求められたことを求められただけやっても次につながらないから。それを超えるものを提示しないと。それをすることが良い役者だっていう美意識もあるし、僕が今まで見てきた人もそうですし……。だからそこに至るまで頑張ろうとは思っています。

■映画情報
『ハケンアニメ!』
■原作:辻村深月「ハケンアニメ!」(マガジンハウス刊)
■監督:吉野耕平
■脚本:政池洋佑
■出演:吉岡里帆 中村倫也 / 柄本佑 / 尾野真千子
■制作プロダクション:東映東京撮影所
■配給:東映
■コピーライト:(c)2022 映画「ハケンアニメ!」製作委員会

(聞き手:ウートピ編集部・堀池沙知子、写真:宇高尚弘)

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