水ダウ・藤井健太郎✕BiSH、豆柴の大群・渡辺淳之介。ふたりのプロデューサーの、「天職」の見つけ方

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2022年05月23日 06:41  ダ・ヴィンチWeb

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写真悪企のすゝめ 大人を煙に巻く仕事術
悪企のすゝめ 大人を煙に巻く仕事術

 就職にしろ転職にしろ、何か仕事をしようと思う時、人は2つの選択肢を思い浮かべる。「好きなことを仕事にする」Aパターンと、「好きなことがあっても、仕事にしない」Bパターンだ。

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 好きなことだから頑張れる、だから仕事にする、というのはわかりやすい理屈である。とはいえ、それで食べていくのはなかなか厳しい。そのため諦める人も多く、ゆえにAパターンの人は基本羨ましがられる。あまつさえ、アウトプットが楽しそうに見えるためか、「遊んでお金をもらえていいね」「才能に恵まれたヤツはいいよな」などと言われたりする。

 一方Bパターンの考え方は、こうだ。

 好きなことでも、仕事にすると必ず「イヤなこと」が出てくる。例えば絵を描くことが好きなはずなのに、商業的な思惑やヘンな人間関係、世間の目を気にする会社の事情なんかに巻き込まれて、だんだん息苦しくなる。上には上がいることを痛感するし、「アイツは運がいいだけだ」と腐りたくもなる。しまいには絵を描くのがキライになってしまう可能性だってある。ならば、好きなことはあえて仕事にせず、「趣味」でいい――。

 でも、どうせ仕事をするなら、楽しくできたほうがいいに決まっている。

『悪企のすゝめ 大人を煙に巻く仕事術』(KADOKAWA)は、『水曜日のダウンタウン』演出の藤井健太郎氏と、同番組発のアイドルグループ『豆柴の大群』や『BiSH』マネージャーの渡辺淳之介氏という、一見完全にAパターンな2人の対談本だ。

 バズりたいけど、炎上も怖いという“守り”に入りがちな今の時代、2人とも何かと尖った仕掛けで話題になり、そのさまは見る人を釘付けにする。しかし本人たちに「尖っている」つもりはない。つぶさに自分の過去を振り返って「好きなこと」を無理やり探し、なんとかそれを仕事にした、わけでもない。藤井氏に至っては、本書で「どうしてもテレビ(業界)とは思っていなかった」と明かしているほどで、Aパターンとも言い切れない。

 では、何故“常識”にとらわれず、自由で楽しそうに、「好きなこと」を仕事にしているように見えるのか。その秘密に迫ったのが本書であり、タイプの真逆な2人が、これまでの軌跡やさまざまな企画の舞台裏を赤裸々に語るなか、守り抜いている仕事観が浮き彫りになる。

 共通するのは、学生時代の「好き」という“感覚”を大切にしていることだ。

“感覚”であれば、どんなものにも通用する。例えば、お笑いならこれが好き、音楽ならこれが好き。洋服であればこっちよりこっちのほうが好き。どんなジャンルでも、シンプルに“好き”という感覚を大切にする。そして、この“こういうものが好き”という感覚は、(まだ金儲けや大人の事情とは無縁な)中学生ぐらいに基礎ができあがる――と2人は口をそろえる。

 そのうえで、渡辺氏は「やりたいことがあるんだったら、人から求められるように努力する」といい、藤井氏は、「やりたくないことを排除」するうちに「道」ができたという。

 準備が実を結ばなくても当たり前。「タイミングが来たときに、ちゃんとやれる体力や能力は準備しておくべき」という藤井氏の言葉は、とかく「すぐに結果が出ること」を求めがちな現代人の襟を正してくれる。結果ありき、ではない。“こうしたほうが面白い”“もっとワクワクする”ありきで、あとは「どううまくやるか」。本書ではその術が丁寧にひもとかれている。

 働き方も生き方も「多様性」が叫ばれ、いろいろなカードがあるからこそ、自分にとっての“正解”は見えなくなりがちだ。そんな時代に悶々とする人たちに、2人の「大人少年」という生き方は、光を照らす。もはや、好きなことを仕事にするかどうかというパターン分けも、彼らにとっては意味をなさない。自分の人生を面白がれるのは自分だけ。自分はこのままでいいのかと思っている人にこそ、心に響くものがあるだろう。

 仕事術の本だが、その実、より人生を楽しむためのヒント本。自分で自分を裏切らないことが大切だと、勇気づけられる1冊である。

文=吉河未布

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