帯津医師が“老害”に異議「老人全般に拡大してしまっている」

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2022年05月23日 07:00  AERA dot.

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写真帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
帯津良一(おびつ・りょういち)/帯津三敬病院名誉院長
 西洋医学だけでなく、さまざまな療法でがんに立ち向かい、人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱する帯津良一(おびつ・りょういち)氏。老化に身を任せながら、よりよく老いる「ナイス・エイジング」を説く。今回のテーマは「老害について」。


*  *  *


【魂の成熟】ポイント


(1)「老害」といういやな言葉が使われることがある


(2)老人が害になることって、本当にあるのだろうか


(3)老化により本来、成熟する魂が害になるはずがない


「老害」という言葉があります。いやな言葉ですね。老人が害になるという意味でしょうか。


 確かに、最近、高齢者が引き起こす交通事故がニュースになったりします。アクセルとブレーキを踏み間違えてしまうというのですから、これが老化によるものだとしたら、老害だといえます。そんな事態になる前に運転をやめるのは大事なことだと思います。


 しかし、こうしたこと以外に老人が害になることって、あるのでしょうか。日々の診療で感じるのは、80歳以上の患者さんは、往々にして話が長いということです。話が止まらなくなることがよくあります。でも、これは迷惑というほどではありません。話が長いのは、その人の個性ですから尊重すべきです。


 思い起こしてみると、私の父親も80歳を超えたころ、車を農道から田んぼに落として、これを機に運転免許証を返納しました。しかし、日常生活で老害など、とんでもなかったです。若いころの父は結構、怒りっぽくて、私が映画に夢中になって帰りが遅くなってしまったときには、殴られたりしました。でも、歳をとってからは、性格が円満になり、誰からも愛されました。私の母が亡くなり、一人暮らしになってからは、しばしば、私の病院にやってきて、私の部屋に入り、私の著書を小一時間、読んでは静かに帰っていくという、端正な振る舞いでした。


 私と同様、晩酌が好きで、向こう三軒両隣のご近所さんが届けてくれるつまみで、毎晩、酒を楽しんでいました。そういえば、祖父も、よく1時間ぐらいかけて徒歩でわが家にやってきて、親父と酒を酌み交わしていました。ニコニコと盃を傾ける穏やかでやさしいおじいさんでしたね。



 改めて、「老害」を広辞苑で調べてみると、


「(老人による害の意)硬直した考え方の高齢者が指導的立場を占め、組織の活力が失われること」


 とあります。つまり、老害とは組織の中という、かなり限定されたところでの出来事のようです。低成長の時代に入り、日本の企業の活力低下が危惧されるなかで生まれてきた言葉ではないでしょうか。そんな言葉が老人全般に拡大して使われてしまっているように思います。そうなってしまうのは、老化に対するマイナスイメージが世の中に定着してしまっているからでしょう。私が敬愛する哲学者の池田晶子さんはこう書いています。


「ソクラテスは言いました。『人生の目的は魂の世話をすることである』。この世の時空においては絶対的な、老化と、そして死という現象をそれとして認め、受け容れることで、魂はその成熟と風味とを増します」(『死とは何か』毎日新聞出版)


 老化によって本来、魂は成熟するのです。その成熟した魂が他人の害になるはずがありません。


帯津良一(おびつ・りょういち)/1936年生まれ。東京大学医学部卒。帯津三敬病院名誉院長。人間をまるごととらえるホリスティック医学を提唱。「貝原益軒 養生訓 最後まで生きる極意」(朝日新聞出版)など著書多数。本誌連載をまとめた「ボケないヒント」(祥伝社黄金文庫)が発売中

※週刊朝日  2022年5月27日号



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このニュースに関するつぶやき

  • ゴメンね頑固さと思い込みで好き勝手に生きてる老人ばかりを相手に仕事してるとさっ。魂が成熟して る?何処か別世界の話かな?と思う事が多いです、まぁ年齢関係無く害な人は居ますけどwww
    • イイネ!6
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