かつての浦和レッズには圧倒的な個性が存在した。優等生タイプだけでは閉塞感は打破できない

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2022年05月23日 07:21  webスポルティーバ

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「8試合負けなし」と書けば、好調チームをイメージするかもしれない。一方、「7試合勝利なし」と書けば、苦しんでいることが想像される。ところがこれは、同じチームの状況を指している。浦和レッズのことである。そして14位という順位にふれるまでもなく、今の浦和は苦境の真っ只中にある。




 昨季は6位と上位進出を果たし、天皇杯も制した。気鋭のスペイン人指揮官リカルド・ロドリゲス監督の下、復権への第一歩を踏み出したと思われた。

 だが、さらなる進化が期待された今季は、開幕から4戦未勝利と出遅れた。湘南ベルマーレとジュビロ磐田には勝利したものの、6節の北海道コンサドーレ札幌戦からは6試合連続の引き分けで、迎えた14節の鹿島アントラーズ戦でも早い時間帯に失点し、PKで追いついたものの勝ち越し点を奪うことができずに、1−1の痛み分けに終わった。

「チャンスがあっても、それを決めきれない試合が続いている。悪い流れだが、サッカーでは起こりうること。それを打ち破っていかなければいけない。負けてはいないが、勝ってもいないという現実を受け止め、勝利を手にできるようにやっていきたい」

 試合後、リカルド・ロドリゲス監督は淡々と言葉を発した。

 勝ちきれない原因は、やはり点が取れないことに尽きるだろう。7つの引き分けのうち3つがスコアレスドローで、1−1の引き分けも3試合を数える。

 チャンスを作りながらも決めきれず、スコアレスドローに終わった柏レイソル戦後、リカルド・ロドリゲス監督は「引いてくる相手を崩すのは簡単ではないが、我々としてはそこを改善すべくトレーニングしている」と話していたが、ハードな連戦下にあって思うように着手できていないのだろう。続くサンフレッチェ広島戦でもゴールを奪えないまま引き分けている。

 リカルド・ロドリゲス監督のサッカーは、正しい位置取りに基づくスムーズなボールの動かし方に特徴を持つ。しかし、たとえ正しい位置を取っても、相手のプレッシャーをかいくぐれなければ、ボールは回らない。

 そこには判断やパススピード、あるいはデュエルなどさまざまな要素が求められる。だが、柏戦でも広島戦でも、この鹿島戦でも、引いた相手を崩せなかったのではなく、プレッシャーに屈する場面が多く見受けられた。

PK奪取のシーンに勝利のヒント

 7つの引き分けのうち、唯一複数得点を奪えたのは、3点のビハインドを負いながらもキャスパー・ユンカーのハットトリックで追いついた横浜F・マリノス戦だったが、機能したのは相手のハイラインの背後を一発で突くカウンターだった。つまり、ボールを動かすよりもシンプルなこの形のほうが、今の浦和には得点の匂いが感じられるのである。

 もちろん、リカルド・ロドリゲス監督には確たるプレーモデルが備わり、それを突き詰めるのが指揮官としての責務である。しかし、停滞感の漂う現状を打破することも、同じように求められるタスクとなる。

 ヒントがあるとすれば、鹿島戦でPKを奪取したシーンだろう。この日の浦和は3バックを採用し、鹿島の強力2トップを3枚で見る形を取っていた。ある意味でセーフティな形だったが、前半終了間際に3バックの一角を担っていた明本考浩が長い距離を走って左サイドを攻め上がり、そこからのクロスがエリア内での関川郁万のハンドを誘ってPKを奪うことに成功した。

「最初は3枚回しでしたけど、相手の動きを見ながら、ベンチから4枚で回そうという声があったので、思いきって高い位置に行きました」

 結果的にはベンチの指示だったとはいえ、押し込まれた展開のなかで状況を打開するには、リスクが必要だ。明本のような大胆さこそが、閉塞感の漂う今の浦和には求められるプレーなのだろう。

 長年浦和に在籍したベテランを放出し、リカルド・ロドリゲス監督の戦術に合う選手を次々に獲得。大幅に入れ替わった今の浦和には一定以上の水準を備えた選手は揃うものの、常識外な選手は見当たらない。与えられたタスクを確実にこなす優等生タイプが多い印象だ。

「戦術うんぬんもありますが、もっとシンプルに戦うところや、勝ち点3を目指すスピリットなど、勝つために何をしなければいけないというところをシャープにしていけると、もっと勝利につながるんじゃないかなという感覚はあります」

 今季より浦和に在籍する岩尾憲は、現状の課題を口にした。言い換えれば、個々の意識の問題なのだろう。原因を精神論に求めれば「エビデンスを示せ」とか「それって、あなたの感想ですよね?」とか論破されそうだけど、やはりサッカーはエモーショナルなスポーツなのである。

ゴールへの異常な執念があった

 鹿島には、対照的なふたりがいた。少しでもコースが見えれば躊躇なく右足を振り抜く上田綺世や、自由なポジション取りで「俺によこせ」とばかりにボールを引き出し、決定機を逃せばピッチを叩いて悔しさを露わにする鈴木優磨の姿を見れば、なおさらそう思うのだ。

 浦和はかつて、そうした選手の宝庫だった。エメルソン、ワシントン、田中マルクス闘莉王......。名前を挙げればきりがないが、浦和の栄光の歴史には圧倒的な個性が存在した。

 時は流れ、戦術は進化し、個性的な選手が淘汰される時代となったのは事実ではある。しかし、時に予定調和を崩すことで、想像を超えるプレーが生まれ、流れを引き寄せられることもある。

 そういえば、天皇杯で浦和にタイトルをもたらしたのは、DFでありながらゴールへの異常な執念を燃やす、個性の塊のような男だった。

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