芸人を目指す女子高生に「青春すぎて泣ける」、“エモさ”あふれるマンガの背景に2000年代『M-1』の影響

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2022年05月23日 07:30  ORICON NEWS

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写真【LINEマンガ】『板の上で君と死ねたら』(作者:三永ワヲ) (C)Wawo Mitsunaga/LINE Digital Frontier
【LINEマンガ】『板の上で君と死ねたら』(作者:三永ワヲ) (C)Wawo Mitsunaga/LINE Digital Frontier
 大人になって、社会に出るとふとした瞬間に、学生時代の“楽しすぎた日々”に想いを馳せることはないだろうか? そんな大人たちを懐かしい世界に誘うと話題になっているのが、LINEマンガで連載中の『板の上で君と死ねたら』。芸人を目指す2人の女子高生の青春成長記に、「青春すぎて泣ける」「胸がキュっとする」など多くの反響が集まっている。青春マンガの名手である三永(みつなが)ワヲさんが、“お笑い”をテーマに“エモい”作品を生み出した背景にはどのような想いがあるのか? 本人に話を聞いた。

【漫画】女子高生がなぜ芸人に?いばら道に挑む2人の健気さに“エモさ”爆発

■すべてを分かり合えていた気がした青春時代 その幸せな“思い違い”が原動力に

 高校3年生の熊井由乃(くまい・よしの)は、1年生の頃からの親友で“相方”の藤倉(ふじくら)さわと、文化祭のステージで漫才を披露し、体育館は大爆笑。だが、進路選択を迫られ、この楽しい日々が終わることを惜しんでいた由乃。2人が下した決断は、“芸人”を目指すというものだった。社会の厳しさ・周りからの目など、さまざまな困難にぶつかり、途中で揺らぎながらも、立ち向かっていく2人は成功を収められるのだろうか…。

――本作は、“青春”を軸に、その延長線上にある未来が、“お笑い”という形で描かれています。本作のテーマはどのようにして思いつかれたのでしょうか?

【三永ワヲさん】人と人とは本当の意味で分かり合うことはできないと思うのですが、青春時代にはすべてを分かり合えたような気がしていました。おそらく誤解なのですが、あの幸せな“思い違い”が大人になった自分を支えているな…と今さら、グッときてしまって。
 それで“青春”を描きたいと思ったのですが、当時を思い出すと本当にバカみたいなことしかしてないんです。日常に潜むセンチメンタルをブチ壊して笑い合うことが、あの頃の私たちの在り方で、それが“お笑い”というテーマに繋がっていきました。

――というと、三永さんご自身の経験も本作に入っているのですか? だからこそ読者が、“エモさ”をより深く共感できるのでしょうか?

【三永ワヲさん】そうだと思います。ただ昔からわけもなくセンチメンタルになってしまう節があって、常にそんな感情に襲われているので、具体的にこの経験が…みたいなものではないです。
“エモい”って、いつか終わりがくるものへの惜別とか愛しさみたいな側面があると思っていて。永遠に変わらないものは存在しないので、目に映る全てにエモい感情が発動してしまって。「そんな日々の思いを取りこぼさず全部描かなくては…!」という焦燥感が作品作りの原動力になっています。

■主人公2人にだけ見える“鮮やかな世界”を形にしたい

――確かに、三永さんの作品を振り返ると、LINEマンガでも大人気だった『それは、君が見た青だった』『さよなら、青の日』など青春を感じさせる作風が大きな特徴です。それと同時に、1人の圧倒的な主人公というより、キャラクターの異なる2人が軸になり、物語を進めていくという作風も特徴として挙げられるかと思います。先述の2作と本作もそうですが、このような作風になったのはどのような思いからですか?

【三永ワヲさん】1対1の関係性の間にはその2人にしか分からない世界がある気がして、そのリアルさが好きだからですね。自分たちだけのものだからこそ強烈で、些細でも当事者にとっては感情を揺さぶられる出来事で、個人的なはずなのに普遍的な面もある。そんな2人だけに見える鮮やかさみたいなものを、鮮やかなまま形にできたら素敵だなと。

――なにかきっかけがあって、このような作風に?

【三永ワヲさん】きっかけは曖昧なのですが、自分の中で「作品に残したいほど強く残っているものは何か」ということを考えていった結果こういう作風が増えていきました。私自身、これまで誰かと1対1で構築してきた世界が本当に好きなんだと思います。

――本作も、天真爛漫な由乃と、しっかり者でありながらどこか変わり者のさわという魅力的な2人の掛け合いを中心に描かれています。2人のキャラクターはどのように作られていったのでしょうか?

【三永ワヲさん】藤倉は私が今まで付き合った友人の詰め合わせです。ツッコミ気質の子が多かったんですが、みんな常識人風なのに謎の一面を隠し持っていて、しかも自分で気付いていなかったりするんです。他人のおかしいところはすぐ気付くのに。人にもすぐ怒るんですが自分に一番厳しくて、世が世なら切腹していたんじゃないかなあ…そういうところ好きだったなあ……などと懐かしく思い出しながら描いています。逆に由乃のキャラクターはモデルというモデルがなくて試行錯誤しました。

――そうなんですか?

【三永ワヲさん】はい。個性はほしいけどあんまりぶっ飛びすぎてもついていけなくなってしまうし…と悩みましたが、最終的にすごく自然体になりました。今までの主人公で一番描きやすいです。

■お笑いの部分は2000年代の『M-1』がモチーフに?

――さらに本作の大きな特徴と言えば、2人の漫才シーン。最初の文化祭や、オーディションでの漫才の“ネタ”やアドリブのやり取りも、フリ・オチを効かせて伏線を回収するなどしっかり描かれています。こうしたお笑いの部分はどのように考えられているのですか? どなたか、モデルにした芸人さんがいらっしゃるのですか?

【三永ワヲさん】漫才部分に関しては思いのまま作っていたので、そう思っていただけたならとても嬉しいです。ただ、面白いという感情には偶然性がかなり重要な気がしていて。奇跡的に何かが起きたとか、不意の空気感がツボにハマったり。漫画ってすでに描いてあるものを見てもらうものなので、偶然性を作り出すことが難しいんです。なので、ストーリーが入ってこないくらいネタがつまらない、という状態さえ回避できれば大丈夫だぞ…という気持ちで描いています。ちなみにお笑いは、2000年代の『M-1』をがっつり観ていた世代で、その影響はある気がします。しっかりツッコミが入る漫才が好きです(笑)。

――読者からも大きな反響があったかと思います。感想の声のなかには「青春すぎて泣ける」「胸がキュっとする」などの声が多くあがっていますが、特に気になった、嬉しかった反応は?

【三永ワヲさん】「2人にしか分からないはずなのになぜか分かる」とか「芸人を目指したことなんかないはずなのに分かる気がする」とか、「分からないのに分かる」という意味のことを言ってもらえたことです。「私たちにしか分からないからこそ価値がある」という自己満足だけが持っている、鮮烈な喜びみたいなものがある気がしていて。私自身が1対1の人間関係に重きを置いて生きてきて、「私たちの間でだけ伝わること」にたくさん助けられてきたのですが、「これが他の人にも伝わればもっと楽しいのに」という感情もやっぱりあって。それが長い時間を経て、こういう形で他の人にも伝わったのかもしれないと思うと嬉しいです。

――『板の上で君と死ねたら』というタイトルも印象的ですが、このタイトルに込めた想い、本作を通して、読者に届けたいメッセージをお聞かせください。

【三永ワヲさん】「死ぬまでこのまま一緒に生きていきたい」という若さゆえの熱量と覚悟です。若い時って人生が終わっていくイメージなんかあまり持っていないのに、「死ぬまで」って全力で願えたんですよね。今はあの頃より確実に終わりがくることを理解しているのに、死ぬまで変わらないと言い切れるものは減っていて。不思議だなと思います。
 読者の方々へは、いろいろあるけどお互い笑って暮らしていきましょう。大人になってもあの頃みたいに、お腹痛くなるくらい笑い合える瞬間があれば素敵ですよね、と伝えたいです。

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