「ちょっと飛びぬけている」。ほほえみの貴公子・マッケンジーが東京SGを決勝へ導く

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2022年05月23日 07:31  webスポルティーバ

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  "ほほえみの貴公子"ことダミアン・マッケンジーに満面の笑みがこぼれる。ラグビーリーグワンの準決勝で、東京サンゴリアス(東京SG=旧サントリー)が、ブレイブルーパス東京(BL東京=旧東芝)に30−24で快勝。チームを決勝に導いた27歳のFB(フルバック)は、さざ波のごとき観客の拍手を受け、こう言った。

「非常に厳しい展開になったけど、チームとしていいパフォーマンスができた。たくさんのファンの前で一生懸命、ハードワークができ、とても満足している。アリガトゴザイマス」

 21日。曇天。強風下の花園ラグビー場である。ニュージーランド代表「オールブラックス」で40キャップ(国代表数)はダテではない。マッケンジーの存在は圧倒的だった。切れ味鋭いステップとスピード豊かなランだけでなく、キックチェイスやタックル、コンタクトエリアでも、177センチ、78キロのからだを張った。泥臭いまでの献身的なプレーで。

 記者と交わるミックスゾーンで、白いマスク姿のマッケンジーはこう、続けた。右腕と左ひざにはアイシング用の氷入りのビニール袋。額には小さな打撲の赤いアザも。

「リードされている状態からよく挽回できた。前半、すばらしいトライで追いついて折り返せたのは、大きかった。(BL東京に)前回負けていたので、リベンジできてほんとよかった」

 ノーサイド直後の笑顔のことを聞けば、マッケンジーは感慨深そうに言った。

「ファンの拍手を聞いて、すごく感情的になった。ハッピーだった」

 マッケンジーの運動量たるや。グラウンドの右にいたかと思えば瞬時に左にも動き、BL東京のディフェンスを切り裂いた。前半終了のホーンが鳴ったあとだった。ラストプレーとなるラインアウト。東京SGはモールを押し込み、右ラインに展開。CTB(センター)サム・ケレビがタックルを受けてボールを浮かす。これを逆サイドの右側から走り込んできたマッケンジーが捕って、ボールを左手で抱えて鋭いステップで1人、2人とタックルをかわした。右から左へ。

 相手ディフェンスが崩れた。最後は左隅で待っていたPR(プロップ)石原慎太郎が左隅にトライした。その後の難しい位置からのゴールキックも、マッケンジーが蹴り込んだ。いつものごとく、蹴る前に表情をふっと緩ませて。17―17とした。

 確かに東京SGの勝因はFW(フォワード)の頑張りだった。だが、自慢の「アグレッシブ・アタッキング・ラグビー」を勢いづけたのは、やはり王国のスターだった。負けじ魂の塊がチームにリズムをつくった。

 同じくミックスゾーン。マッケンジーのことを聞けば、SH(スクラムハーフ)流大は、「ワークレート(運動量)と嗅覚はちょっと飛びぬけている」と評し、こう続けた。

「ボールを触る回数は多いし、さっきアッチにいたのに次にはコッチと左のアタックに参加してくる。その辺はやっぱりオールブラックスの選手だなと思います。シーズンの最初は、みんな反応できず連係できていないことが多かったですけど、今日はほんと、よかったと思います。気合が入っていた」

 マッケンジーから学んだことは?

「たくさんありますけど、一番はラグビーを楽しむことですかね」

 途中から入ったSH齋藤直人はこうだ。

「一緒にやっていてすごく感じるのは、ヒラメキを大事にしているということ。チームの枠(約束事)のなかでもヒラメキを大事にしている。スペースがあれば走るし、ああいうサイズでボールをラックするのはすごく刺激的です」

 ただよく見れば、マッケンジーは小柄なからだで工夫している。フィジカルコンタクトを極力避け、ハイボールキャッチひとつとっても、正面からいかず、ちょっとからだをずらしてボールを捕ったりしている。自身のスキルにこだわりがあるのだろう。その存在が他の選手の成長も促している。

 昨季はボーデン・バレット、そして今季はマッケンジーと、オールブラックスの世界的スターがチームを引っ張る。とくにマッケンジーはフレンドリー。齋藤によると、毎朝、必ず自分から全員にあいさつするそうだ。選手はもちろん、裏方のスタッフにも。

 チームのHPをのぞけば、<好きなこと「寿司とゴルフ」>と記されている。チームメイトとゴルフに行き、グラウンド外でのコミュニケーションを深めている。これって、信頼関係構築には大事なことだ。

 その結果。リーグワンのリーグ戦の初代得点王(191点)に輝いた。この日も、ゴールキックこそ不安定だったが、攻守に存分に働き、「プレーヤー・オブ・ザ・マッチ」に選ばれた。

 ところで、マッケンジーはゴールキックを蹴る前、なぜ微笑むのか? チームスタッフによれば、自分をリラックスさせるルーティンワークのひとつだった。かつて、スポーツ心理学者のアドバイスを受け、始めたという。

 最後に再び、マッケンジー。

 決勝戦の抱負を聞けば、こう言った。

「楽しんでラグビーをしたい。優勝したい。ファンのみなさんには感謝している。来週も応援してほしい」

 果たして、マッケンジーは初代リーグワン王者に就いて、再び笑うことができるだろうか。

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