町内会が孤独死を救う? 自治体が取り組む「困りごと」支援

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2022年05月23日 08:00  AERA dot.

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写真※写真はイメージです (GettyImages)
※写真はイメージです (GettyImages)
 運転免許を返納したため買い物に行けない、足腰が弱って重いものが運べない……。高齢になると、生活する上でさまざまな「困りごと」に直面する。楽しく快適に暮らすために、地域の“資源”で解決できる方法がある!


【図表】「もしも」の時の備えや支援サービスなどの一覧こちら
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 高齢期になると、生活上の不便だけでなく、「リスク」が生じてくる。


 ある日突然、家の中で倒れたとき、救急車を呼べないまま息を引き取ってしまうことが、最も恐れるリスクのひとつだ。


 北関東のとあるマンションの管理組合に、住人から連絡が入った。


「上の階からの水の音が止まらない」


 警察や管理業者が立ち会いのもと、水の音がする部屋に入ると、一人暮らしの女性(当時70)が風呂場で亡くなっていた。


 心臓発作を起こしたのか、死因は不明だが、お湯が出しっぱなしの状態だったという。


「孤独死というと、親戚や近所との付き合いがない人が病気になって、ひっそりと亡くなるといったイメージがありますが、その女性は、部屋の中はきちんとして、マンションの住人とも挨拶は普通に交わしていた。元気だと思っていた人でも突然亡くなることがあるのだと、そのとき痛感しました」


 そう語るのは、終活アドバイザーでファイナンシャルプランナーの廣木智代さん。


 廣木さんは、約20年前に仕事場用としてワンルームマンションを購入し、2010年に管理組合を立ち上げ、理事長に就任した。後に自宅がある町内会長なども兼ねるなかで、高齢期に差しかかる人たちが直面するさまざまな「困りごと」を見てきた。


 当事者にとっての困りごとは、地域にとっても放っておけない問題という。


 終活というと、葬式やお墓などを決めておく「人生最終盤のための準備」といったイメージを抱く人も多い。しかし亡くなったときのための準備だけでなく、急に倒れたとき、認知症になったときなども想定しておくと、周囲や地域の人も慌てなくて済む。


「女性の親族には甥と姪がいましたが、相続放棄されていたので、マンションの管理費などが滞納となってしまい、私たちは困惑しました。特に一人暮らしの人は個人情報の壁はあっても、身元保証人や緊急連絡先をマンション管理組合や町内会と共有したほうが安心できます」(廣木さん)


 町内会では、一人暮らしの男性(40代)が、アパートの部屋で亡くなっていたことがある。前日、友人たちとお酒を飲んでいたそうで、出勤してこないのを不審に思った職場の同僚らが駆けつけて男性が倒れているのを発見したという。


 廣木さんは、一人暮らしの人は「まだ若いから大丈夫」といって安心しないで早めに「エンディングノート」を書くことを勧めている。




 書いておく項目は、万が一、部屋で倒れたときのために、緊急時の連絡先やかかりつけ医、服薬中の薬の情報は最優先に。


 また、救急搬送された病院で、健康保険証を持参していないと、医療費と入院費は全額自費になる恐れがあるので、これらをまとめてケースなどに入れておくとよい。


 自分が意思表示できなくなったときに何が必要なのか。具体的にイメージしながらチェックしてみると整理できる。


 そして、大事なのは「エンディングノート」の保管場所で、見つかりやすいように玄関などに置いておくとよいという。


「亡くなった後、空き家になるのが、地域にとって一番の困りごとです。特におひとりさまは、エンディングノートと遺言書をセットで備えてほしい」(同)


 高齢者の「困りごと」は身近でささいなことから始まる。


 内閣府が発表した「平成29年高齢者の健康に関する調査」によれば、約20%の高齢者が「健康上の問題で生活に影響が出ている」と回答。その中でも、特に目立つ「困りごと」が、重いものを運ぶという動作、階段を上がる動作で、「一人では困難」と答えていた。


■運転免許を返納 乗り合いで解決


 足腰が弱ると掃除や炊事の負担が増して身動きが取れなくなり、ゴミ屋敷化や孤独死のリスクも高まる。


 食材の買い出しや調理、掃除、洗濯などの家事は要介護認定を受けていれば、介護保険サービスで生活援助や家事援助を受けられるが、認定を受けていない人は地域の資源を最大限活用しよう。


 市区町村に1カ所程度ある「シルバー人材センター」では、1回30分以内1千円程度で、電球の交換や障子の張り替え、庭木の剪定といった軽作業をお願いできる(時間と金額は地域によって異なる)。


 東京都葛飾区では、在宅で生活している人への支援策のひとつに「しあわせサービス」がある。


 地域の人たちが協力会員として、掃除、調理、買い物や簡単な身の回りの手伝い、話し相手などのサービスを1時間あたり700円で行う。利用するには会員登録をした上で、年会費600円を支払う。おおむね65歳以上の人が利用できる。


 このような地域のボランティアの手を借りたいときは、社会福祉協議会に問い合わせよう。


 自治体独自の制度も知っておくと便利だ。


 部屋で具合が悪くなって倒れたときなどに、すぐに助けを呼ぶため、65歳以上であれば自治体から「緊急通報装置」をレンタルできる。設置料や1カ月の利用料は自治体によって異なるが安価で済むのが一般的だ。


 また、お弁当1食500円など、見守りを兼ねて届けてくれる「配食サービス」などの制度を実施している自治体も多い。




 中学校区におおむね1カ所ある「地域包括支援センター」に困りごとを相談すると、解決先を教えてくれる。


「困りごと」の解消に取り組む町内会もある。廣木さんが会長を担当した町内会では、高齢のため町内活動を負担に思う人が増えてきた。


 Aさん(80代)は「高齢なので町内会をやめたい」と言いだした。


「会議に出るのはしんどい。あまり役に立てることがないので申し訳ない」(Aさん)


 町内会から脱会してしまうと、地域から孤立して孤独死のリスクが高まってしまう。それを防ぐためにも、高齢者には役割を免除する代わりに、ゴミステーションの清掃をお願いするなど、負担のない範囲で町内会の活動に参加してもらうようにした。


 足腰が不自由になると、買い物や病院に行くのに不便になる。町内会では運転免許証を返納した高齢者が、買い物難民にならないために、乗り合いタクシーの活用を勧めている。


「タクシーの運転手さんが、玄関まで荷物を運んでくれたのでとても快適でした」と語るのは、Bさん(80代)。


 運転免許証を返納してから、自治体が地元のタクシー会社と提携して運行している「デマンド型交通」を利用している。


 利用者は年会費500円支払えば、高齢者に限らず誰でも1回300円で利用できる。病院やスーパー、飲食店、美容室など、行き先と往路の運行時間は決まっていて、復路は予約して迎えに来てもらうシステム。


 ある日のこと。CさんとDさん(ともに70代)は、ショッピングモールに一緒に買い物に出かけた後、食事を楽しみ、お酒を飲んで帰ってきた。


「免許を返納しても困らない、行動範囲も今までと変わりなくエンジョイしているという声もありました」(廣木さん)


 また、廣木さんの母親が入院後、在宅で療養していたときに、近所の人が廣木さんの留守中に傷口のガーゼ交換などを手伝ってくれたこともあった。食材を提供してもう一人が料理をするといったように、助け合いが自然に起きている。“醤油の貸し借り”ができるような近所付き合いを普段から心がけておくことも大事という。


■「困りごと」を金融機関が支援


 最近、銀行や信用金庫の間では口座開設者向けに、相続やお墓の購入といった終活から、家事など高齢者が抱えるあらゆる「困りごと」を支援する動きが出てきている。


 地域に頼れない人、あるいは、町内会の活動が活発に行われていない地域に住む人の「頼れる先」になっている。




 三井住友銀行では、顧客が希望する介護や葬儀の要望などの情報を預かるサービス「SMBCデジタルセーフティボックス」を始めた。認知症などになった際、預かった情報を、顧客があらかじめ指定した相手に伝える。月額990円(税込み)。


 地域密着の地方銀行、信用金庫はさらにきめの細かいサービスが実施されている。


 枚方信用金庫(大阪府枚方市)が実施する、高齢者支援サービス「巡リズムR」は、毎月の見守り、ウェアラブル端末を貸与する健康管理のほかに、緊急時の駆けつけなどサービスを拡充させた。


 金融機関が窓口になり、顧客の悩みに応じて、提携先の地元の業者を紹介するシステムだ。終活アドバイザーでファイナンシャルプランナーの廣木智代さんはこう語る。


「エンディングノートに何を書いたらいいのかわからない、介護が始まったときや、葬儀を行うときにはどれだけのお金が必要なのか。またはスムーズに相続するためにはどんな準備をしたらいいのかわからない、とお金にまつわる漠然とした不安を抱く人たちがいます。そういったニーズがあることから金融機関では終活セミナーの開催が増えています」


 セミナーを入り口に、金融以外のサービスを拡充させてきたと語るのは、鎌倉新書事業推進部の五島健二さん。同社は金融機関と提携して、終活に関するさまざまなサービスを提供している。


 介護施設の紹介や物の整理など、高齢期の生活支援や、お墓の購入や墓じまいの支援もある。


 都内に住む女性(80代)は、遠方に先祖代々のお墓がある。近くに住む親族(80代)がお墓を管理していたが、体調を崩してしまい、女性が管理を代わることにした。


 これから先も、お墓まで通い続けるのは困難なので、五島さんたちが紹介した事業者の支援のもと、都内にお墓を移したという。このような「困りごと」も、金融機関の終活支援サービスの窓口を経て、解決することができるという。


「金融機関と提携している業者なら安心してまかせられる、といった安心感があることから、利用者は増えています」(五島さん)


 まずはエンディングノートを書きながら、自分自身の「困りごと」を棚卸ししてみよう。


 銀行口座を複数開設していると、本人が亡くなった後、相続人は口座を解約するのに大変な苦労をする。本人が元気なうちに休眠口座を解約してもらうのが一番だが、その際、自分が必要とする終活サービスを実施している金融機関を選び、ほかは解約するという選択肢もある。


 町内会や銀行など、身近なところに「救いの手」はある。自分の身の回りにある資源を探して活用してみよう。(ライター・村田くみ)

※週刊朝日  2022年5月27日号


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  • お隣さん気にかかるけど、このご時世だとやたら声かけるのもためらわれるという・・・
    • イイネ!1
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