地域実業家と企業人が農業・漁業の課題解決に取り組むプロジェクト“ことこらぼ×NTT EAST@よこすか”とは?

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2022年05月23日 13:02  マイナビニュース

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日本能率協会マネジメントセンター(以下、JMAM)と一般社団法人KAKEHASHI、そして東日本電信電話株式会社の神奈川事業部(以下、NTT東日本)が2022年2月から取り組んでいるプロジェクト“ことこらぼ×NTT EAST@よこすか”。



神奈川県横須賀市を舞台に、地域の農業・漁業における課題を「鈴也ファーム」を経営する鈴木直也氏、および飲食店経営をしている「たのし屋本舗」などを経営する下澤敏也氏らと共に協力しながら解決するという、約半年間の取り組みだ。



プロジェクトがスタートして約3カ月が経った4月下旬、中間発表会が開催された。彼らがどのような課題を発見し、どのような施策を打っていくのか、プロジェクトの途中経過と共に紹介したい。

農業の収入安定を目指すチーム鈴木



まず、「鈴也ファーム」を経営している鈴木 優也さんの課題解決にあたるチーム鈴木の発表から見ていこう。彼らがまとめた資料のタイトルは「志ある農家さんが想いを実現できる農業の未来をつくる」だ。


彼らが協働することになった鈴木 優也氏は、横須賀で農場経営をしている。「豊かな土壌で育った80品目の野菜をはじめ、メディアへの露出や飲食サービスとのコラボなどチャレンジもたくさんしてますし、若手の育成にも熱心で後進が夢を持って農業に携われるような未来を描いています」と、鈴也ファームの特長を紹介するチーム鈴木。



そんな彼らが行き着いた結論は「法人野菜」と「対外国人販売」だった。



これまで彼らが繰り返し現地へ訪れ、慣れない農作業を手伝いながら共に汗を流して学んだことの一つが「これだけ苦労をしながら、出荷したら赤字になることもある」という、農業の根本的な問題だった。


これをできるだけ軽減していくには販路の拡大が重要なポイントだと彼らは考えた。「対外国人販売に関しては横須賀という土地柄、米軍基地のみなさんのも美味しい野菜を届けたいということでベース内での販売を企画しましたが、法律や内規の問題で実現は難しそうでした。一方の法人野菜は、企業が一定数を買い取り、それを社内販売や社員サービスとして提供することで、地域貢献として取り組んでもらおうという趣旨です」とチーム鈴木は説明する。



いわゆるBtoBの販売チャネルの構築を目指すということになるが、この解に至るまでにアグリビジネスで成功している実業家へのWEBインタビューや、同じ神奈川のトップ農家に出向いてのヒアリングなど、積極的に活動してきたという。


「鈴也ファームにはカラフルなレインボー野菜など、優れた商材があります。良いものがたくさんあるので、私たちの知識や経験を活かして発信力を強め、新しい販路を獲得していきたいと思います」とチーム鈴木は後半戦の目標について語った。


―発表を終えて「チーム鈴木」



日常の業務で中小企業の方々とはよくお会いするのですが、すでに課題を持っている方がほとんどです。今回は実際に現場に入って課題を探ることからはじめたので大変でした。


現場でお会いしたみなさまは苦労されているとは言いつつも、お人柄も素晴らしく、農業にかける愛情がとてもよく伝わってきました。この取り組みを続ける中で、新しい自分の得意分野なども発見できたので、これからの後半戦に向かってそういった部分も伸ばしつつ、楽しみながら結果を残せるようにしていきたいと思っています。

横須賀ブランドの認知向上を目指すチーム下澤


続いて登場したのは居酒屋チェーン「たのし屋本舗」の経営をはじめ、すでにたくさんのチャネルを持つ横須賀の実業家 下澤 敏也氏と共に課題解決を目指す、チーム下澤の面々。



冒頭、下澤氏の半生を振り返りつつ、彼が地元横須賀への熱い思いを持っていることに触れる。「商売がうまくいかなかった時期に、三浦半島をめぐって、この土地の食材の魅力に気がつき、そこから経営が急上昇したそうです。そんな下澤氏と話を続けるうちに、一番成し遂げなければいけない到達点が『横須賀プライド』であることに気づきました」とチーム下澤は語る。



「横須賀プライド」とは、下澤氏が考えたスローガンで、横須賀市に住む市民たちがあまりにも地元産の食材のことを知らない現実を変え、この地域のことを自慢したくなるような意識を創り上げるという決意がそこにあるのだという。



「最終的に『横須賀プライド』の醸成が目的ですが、すでにたくさんのチャネルを持っている下澤さんですから、まずは商品開発や発信力を高めることでビジネスを拡大させたいと考えました」と話す。彼らのいう商品開発では、余った野菜を捨てずに商品化する「ペーパー野菜」というアイデアを準備中だという。


また、ビジネスの拡大に関しては下澤氏のチャネルの広さを活かしていきたいのだという。



「下澤さんのチャネルにいるお客様を、他のチャネルへ誘導する仕組みを作りたいと思います。商品を買ってくれるお客様が飲食店も好きになってもらえるように、飲食店の常連さんに商品も買ってもらえるように各チャネル同士をメッシュのように相互接続する仕組みを作りたいと思います」とチーム下澤は語る。同チームはこれを「メッシュコンセプト」と呼び、欠かせない取り組みだと自信を持っているという。


―発表を終えて「チーム下澤」

私たちはまったくの異業種ですから、課題を見つけるのがとても大変でした。下澤さんには本当にたくさんお話をいただいて、少しずつ理解していった感じです。下澤さんのパーソナリティや取り組みの数々を知るたびに刺激にもなりましたし、発見も多かったと思います。


もう後半戦になりますが、早くアイデアに取り掛かりたくてしかたありません。これだけはやったねといえるシンボルを作り、このプロジェクトが終わった後も下澤さんと一緒に続けられる何かを生み出したいと思っています。

プロジェクトを熱く見守る関係者はどう見た?



これだけ大規模なプロジェクトなので、関係者の数も多い。彼らの取り組みを見守ってきたみなさんにも話を伺った。



横須賀市側の企画団体として取り組みを見守っている一般社団法人KAKEHASHI 代表理事の山中 靖氏と高橋 正和氏はこう話す。



「地域の実業家でもある鈴也ファームやたのし屋本舗の立場からすると、地域に密着している分、純粋に労力が足りず、人脈形成などを広げるのも難しいという側面があります。そこで、大企業であるNTT東日本さんの協力を得ながら、足りない部分を補ってもらうという地元側のメリットがあります」


「また、NTT東日本さんの目線でいうと、地域の課題というのは大企業の足元で起こっているので、とても見えづらい。そこで取り組みを通じて一緒に課題を発見することや、現場感を得ながら体験できるというのがメリットになると思っています」



「両者が歩み寄ることで地方創生に役立ったり、企業にとってはノウハウを得たり、事業拡大にまでつながるような結果が生まれるのが理想です。半年間の取り組みですが、今後ももっと地元の方々と深くふれあい、これで終わりではなく、できればビジネスとして継続できるような結果が出てくれるとうれしいですね」



また、NTT東日本とオリジナルの地域活性化プロジェクトを設計・組成したJMAM 新事業開発部長の川村 泰朗氏にも話を聞いた。


「メリットや理想についてはKAKEHASHIさんの言う通りだと思います。ただし、このプロジェクトでよく起こりがちなのが、たくさんある地域の問題点をかき集めてそれを課題としてしまい、解決策を提示して終わりにしてしまうパターンです。本当の課題はもっと根深いところにあり、それはその地域で実際に暮らし、働き、話し合ってようやく見つかるものです。今回の中間発表はすばらしいものでしたが、マラソンでいえば中間地点なので、もう一度振り返って見落としがないか問いかけてみるのも良いでしょう」



最後はNTT東日本 神奈川事業部 企画部 経営企画担当 担当課長の小野寺 円氏。今回のプロジェクトへの参画には、同社の方針でもある地域活性化への取り組みと、人材育成・働き方改革の二つの理由があったという。



「地域活性化についてはなるべく具体的に、地域の方々も我々も共にwin-winになれるようなご提案を常に考えています。人材育成に関しては、今後、副業やパラレルワークを採用していこうと考えております。つまり、地域活性化や地方創生も大切ですが、自分の働き方や人生の幅も広げて欲しいという願いもあるのです」


また、中間発表を聞いて今後の期待についてはこう話す。



「自分たちのやりたかった事がブラッシュアップできているのは伝わりました。しかし、まだ企業人の目線でどうしてもフレームワークにはめたくなったり、情報として処理したがったりしているように感じました。ソリューションを提供する側から見た課題解決ではなく、地域の側にたって一緒に課題解決をすることが今回のプロジェクトの大切なポイントだと思います。今日もたくさんのフィードバックをもらっていたので、あと3か月でどこまで相手の立場に立てるのかとても楽しみですね」

地域実業家からみた期待



まず、「鈴也ファーム」を運営している鈴木氏に今後の期待について聞いた。「鈴也ファーム」では様々な作物を作っており、現在はカラフルなレインボー野菜の育成を続けているそうだ。



プロジェクトの参加経緯については、「ここ最近、農業経営のことで悩むケースが多くありました。ちょうどそんなタイミングで今回の話を伺い、これは自分にとってのチャンスだと思い、喜んで参加しました」と話す。


「NTT東日本の方たちはみな良い人で、企画力や行動力もあってよく働いてくれます。一生懸命話を聞いてくれますし、日本の農業で第一人者と呼ばれる方々とのコネクションも作ってくれました。彼らとのミッションは楽しいという思いしかなく、私にとってもやりがいのある毎日です」



「プロジェクトもちょうど半分まで来てしまいましたが、このペースでいけば必ず結果が出ると思っています。できることなら、プロジェクトが終わっても良い関係を続けたいので、そのためにも何かしら形になるものが残せればと考えています」



続いて、「たのし屋本舗」を経営する下澤氏。下澤氏は、居酒屋を始めて少し経った頃、経営がよくなかった時期があったとそうで、その時に三浦半島の食材をいろいろと探してみたところ、魅力的な農産物、海産物がたくさんあることに気づかされたそうだ。



「それからは地産地消にこだわり、お店も並んでもらえるまでに成長しました。自分を助けてくれた三浦半島、それに横須賀に恩返しがしたいという気持ちで今回のプロジェクトに臨んでいます」と下澤氏。


「実は話をもらった時は嫌だったのです(笑)。これまでも地域の課題解決をするという企業の方がたくさん来て、解決を押し付けて帰ってしまう。ですから良いイメージがありませんでした。でも、3カ月間一緒にやってみたら、イメージが全然違う。チームのみんなが私の課題、横須賀の課題を一生懸命考えてくれて、スピーディーだし、行動力もあります。そんな彼らに驚くと共に、とても楽しくやらせてもらっていますし、自分自身のアウトプットができたのも大きな収穫です」



後半戦に向けては「まずは形にすること。そしてこれからも一緒に活動していけることができれば一番うれしいです。せっかく築いてきた信頼関係ですから、それを将来に向けて伸ばし続けていきたいですね」と話す。

まとめ



中間発表が終わり、本日のプログラムが終了しても会議室を離れるメンバーは一人もいない。発表会やその後のディスカッションで得られた各方面からのフィードバックについて、チーム鈴木、チーム下澤のメンバーらはいつまでも議論を交わしていた。この熱量があれば、3か月後にはきっと地域のために何かを残してくれると確信できる。本プロジェクトの結果についてもリポートしていきたいと思うので、ぜひ楽しみに待っていて欲しい。(中山一弘(エースラッシュ))
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