就寝中に2回以上トイレに行く「夜間頻尿」 多尿の原因に心不全、睡眠障害、糖尿病も

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2022年05月24日 06:00  AERA dot.

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写真※写真はイメージです(写真/Getty Images)
※写真はイメージです(写真/Getty Images)
中高年の頻尿は「年だから仕方ない」ととらえられがちだが、過活動膀胱や前立腺肥大症などが原因のケースも多い。生活に支障をきたすようになったら、原因疾患の存在を探り、適切な治療を受けることが頻尿の改善につながる。


【データ】頻尿が起こりやすい年代は?主な症状は?
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 頻尿は昼間に8回以上行く場合、夜間頻尿は就寝中に1回以上行く場合と定義されている。しかし、夜、1回トイレに起きるという人は少なくない。そのため、臨床の場では、2回以上を夜間頻尿とすることが多い。


 50代後半から患者数が急増する頻尿は、加齢がおもな誘因だが、その背景には、過活動膀胱と、男性では前立腺肥大症が存在することが多い。どちらも適切な治療を受ければ改善が可能で、頻尿も軽快する見込みが高い。


 頻尿によって生活に支障をきたすようになったら、受診を考慮しよう。まずかかりつけ医に相談して、基本的な診断・治療を受ける。改善がみられないようであれば、泌尿器科や排尿機能外来、女性の場合はウロギネ外来などを紹介してもらうといいだろう。


 診断には、医師の指導のもとで、飲水量、尿量、回数などを記入する「排尿日誌」が有効だ。自分の水分摂取量や尿量が明らかになって、頻尿の診断・治療に役立てられる。特に夜間頻尿の診断・治療では、排尿日誌が必要になる。めんどうがらずに記入を習慣化したい。


 頻尿の代表的な原因疾患として、過活動膀胱と前立腺肥大症があげられる。受診時には問診や、「過活動膀胱症状質問票」「国際前立腺症状スコア」などを用いて、症状を明らかにし、診断に導く。


■原因疾患の改善で頻尿も軽快する


【過活動膀胱】


 過活動膀胱は、膀胱が過敏になって、過剰に活動してしまうイメージだ。女性に好発するが、男性にも発症する。40歳以上の約12・4%(8人に1人)、80歳以上では約50%にみられる。推定患者数は約1千万人というデータもあり、身近な病気といえる。


 頻尿のほかに、▼突然尿意が起きて我慢できない(尿意切迫感)▼そのためトイレに間に合わず、尿が漏れてしまう(切迫性尿失禁)といった症状を伴うのが特徴だ。




 多くは原因が特定できない「特発性」で、第一の誘因は、加齢によって膀胱容量が小さくなること、膀胱と尿道括約筋の連携機能の低下、骨盤底の脆弱化などが考えられている。


 骨盤底とは、膀胱や直腸、女性の場合は子宮など、骨盤内にある臓器を下から支えている筋肉・筋膜・靱帯などの総称だ。中高年になると骨盤底が緩み、支えていた臓器が下に下がって、尿道括約筋の締める力が低下してしまう。そのため、過活動膀胱の症状があらわれる。また、過活動状態になった膀胱は、尿が十分たまりきっていないのに尿意を感じ、頻尿になる。


 治療は薬物療法と、行動療法が中心になる。


 薬物療法は、膀胱容量を増大させるβ3作動薬と、異常な膀胱収縮を抑制する抗コリン薬を服用する。山田泌尿器科クリニック院長の山田拓己医師は次のように話す。


「抗コリン薬は副作用として口渇があるため、水を余分に飲んでしまって、それが夜間頻尿につながることもあります。そのため、効き目が穏やかで副作用の少ないβ3作動薬から始めて、効果がみられない場合に抗コリン薬を用います」


 行動療法としては、トイレに行くまでの時間を少しずつ延ばしていく「膀胱訓練」があげられる。過活動膀胱では尿意を覚えても、実際には膀胱がいっぱいになっていることは少ないので、尿意を感じてから5分、10分とがまんして、排尿間隔を徐々にあけていく。


 緩んでしまった骨盤底を鍛え直す「骨盤底筋訓練」も推奨されている。


【前立腺肥大症】


 前立腺は男性特有の臓器で、膀胱の出口付近にある。クルミくらいの大きさで、多くは50代ごろから肥大が顕著になる。尿道を浮輪のように取り囲んでいるため、肥大すると尿道や膀胱の出口を締め付ける。そのため、▼尿に勢いがない、力まないと出ないなどの排尿症状▼頻尿や過活動膀胱症状である蓄尿症状▼残尿感などの排尿後症状、などのような症状が起きてくる。



 治療は薬物療法と手術になる。


 薬物療法は、前立腺の平滑筋の緊張を緩めるα1ブロッカーやPDE5阻害薬、前立腺細胞の増殖を抑える5α還元酵素阻害薬などを用いる。過活動膀胱症状が強い場合にはβ3作動薬や抗コリン薬を併用する。


 薬物療法で効果がみられない場合には、前立腺の摘除手術を考慮する。



■全身疾患が原因で夜間頻尿になる場合も


 頻尿のなかでも、夜間頻尿を訴える人は多く、質のよい睡眠を持続することができないため、悩みは深刻だ。高齢になると一般的に眠りは浅くなり、目を覚ますたびにトイレに行くという人もめずらしくない。


 多くは過活動膀胱や前立腺肥大症の治療、水分摂取量の見直しなどでトイレの回数を減らすことができるが、注意が必要なのは、全身疾患が原因となっているケースだ。


 睡眠障害の一つである睡眠時無呼吸症候群(SAS)は、眠りが浅くなるだけでなく、夜間の尿量を増やす(夜間多尿)ことがわかっている。就寝中に呼吸が一時的に止まるなどの症状がないか確認することが必要だ。


 また、心不全や慢性腎臓病(CKD)、高血圧、糖尿病なども夜間多尿の原因となりうる。原因疾患が存在する場合は、その治療が不可欠だ。


 なお、男性の難治性の夜間頻尿(夜間多尿)で、心不全や腎不全がないなどの条件を満たすケースでは、デスモプレシンという抗利尿薬が用いられることもある。日本大学板橋病院病院長の高橋悟医師はこう話す。


「かつては、夜間頻尿は最も頻度が高く、悩みが深く、最も治りにくいとされてきました。いまは男性に限ってですが、難治性のものも改善が可能になりました」


 原因となっている疾患を治療することで、トイレに行く回数を減らすことは可能だ。特に夜間頻尿では、全身性の疾患が隠れているリスクが高い。あまりがまんせず、受診することが肝要だ。


(文・別所 文)


※週刊朝日2022年5月27日号より


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