「川」でロシア軍を撃破するウクライナ キーウ攻防戦は秀吉「備中高松城の水攻め」の逆パターンだった

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2022年05月24日 06:00  AERA dot.

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写真18日、ドネツ川に架かる橋を爆破してロシア軍の侵攻を止めた瞬間。ウクライナ内務省が公開
18日、ドネツ川に架かる橋を爆破してロシア軍の侵攻を止めた瞬間。ウクライナ内務省が公開
 古今東西、戦場では「川」を巡る争いが繰り広げられてきた。攻撃型ドローンや対戦車ミサイル、ジャベリンなど、最新兵器が注目されることが多いウクライナの戦場でも、それは変わらない。いま東部ドンバス地方ではドネツ川を挟んだ激戦が続いている。川を巡る攻防戦に詳しい防衛省防衛研究所・戦史研究センター長の石津朋之さんに聞いた。


【写真】爆破した橋は激しく煙を上げた
*   *   *


 5月12日にウクライナ国防省が公表した写真は衝撃的だった。


 上空からの映像には川が流れ、その周辺には焼け焦げたロシア軍の戦闘車両が多数確認できる。川に架けられた浮き橋は破壊されて沈み、対岸に上陸したロシア軍の戦車や装甲車両は引き返すこともできず、川岸に追い詰められたようにかたまった状態で撃破されている。


 米政策研究機関「戦争研究所」などによると、ロシア軍がドネツ川に浮き橋を架け、ウクライナ軍が支配する対岸に進撃を開始したのは同月11日。しかし、その動きを察知していたウクライナ軍は橋の周囲に敵軍が集結したタイミングを狙って集中砲火を浴びせた。この一方的な戦いによって500人あまりのロシア兵が亡くなり、80以上の戦車や装甲車両などが破壊され、1個大隊戦術群がほぼ全滅したという。



■橋は「敵を締め上げるポイント」


 石津さんによれば、戦場の川に架かる橋は「チョークポイント」であるという。


「チョーク(choke)というのは『首を締め上げて窒息させる』という意味です。要するに、橋というのは『敵を締め上げるポイント』なのです」


 どのように展開した軍隊であっても、川を越える際には必ず橋を渡らなければなければならない。


「かつて、ナポレオンがロシアに遠征してモスクワ占領に失敗した際、川を渡って退却するところを集中的に狙われて敗北を喫しています。川を渡れる場所は限られていますから、それをよく知るパルチザン(民兵)にとっては格好の標的となりました。つまり、昔から軍隊というのは渡河するときがもっとも脆弱(ぜいじゃく)なのです」




 ドネツ川でのウクライナ軍の攻撃もまさにロシア軍のチョークポイントを狙ったものだった。


 ウクライナは、戦争が始まるかなり以前からロシア軍の侵攻ルートを予測し、河川などの自然防御線をどう生かすか「綿密に練り上げてきたに違いない」と石津さんは推測する。


 その典型的な例が、首都キエフの攻防戦だった。2月24日、ロシア軍の侵攻直後にウクライナ軍はキーウ北側を取り囲むように流れるイルピン川の橋を爆破。さらにこの川のダムを放流し、周辺を水浸しにした。水攻めによる足止めもあり、ロシア軍の戦車部隊はついにキーウに入ることなく退却した。



■架橋や水攻め「工兵部隊」


 水攻めは日本の戦国時代においても、城郭の攻略などで行われてきた。


「戦国時代の日本や中世のヨーロッパの城や要塞というのは、その一角か二角にうまく河川を利用しています。大川(旧淀川)や寝屋川を生かした大阪城はまさにそうです。その城を攻めるために、川をせき止め、堤防を決壊させる水攻めなどが行われました」


 戦国時代で水を使ったもっとも有名な攻城戦といえば、足守川の流れを引き込んで包囲した「備中高松城の水攻め」(1582年)だろう。一方、イルピン川を溢れさせ、ロシア軍を足止めしたキーウ攻防戦は、その逆のパターンだった。


 備中高松城攻めは、治水など土木工事に精通した羽柴秀吉がその腕前を発揮したものだったが、現代の戦場で活躍するのが「工兵部隊」である。


「どうやって川を渡るかというと、土木エンジニアの集団である工兵部隊が出て行って、冒頭のロシア軍の浮き橋のように、川に即席の橋を架ける。さらに工兵部隊は敵が迫ると橋を爆破して追撃を防ぐ。それを直すのも彼らです。重要な役割なので、どこの国の軍隊でも工兵部隊にはかなりの人数が配置されています」


 何度も戦争を続けてきた欧州諸国にとって、川をめぐる攻防がいかに重要であるかを示す“部隊”となっている。


(AERA dot.編集部・米倉昭仁)


※記事後編<<ウクライナ侵攻「川」をめぐる攻防戦 「史上最大の作戦」「レマゲン鉄橋」映画が伝えるチョークポイント>>に続く


このニュースに関するつぶやき

  • 朝日は戦争反対だろ?嬉々として戦術を語るのに違和感。防衛してる方々に戦争反対、防衛も反対?と聞くと否定する姿だけでも無責任なのに戦術までねぇ
    • イイネ!2
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