頭からバスタオルかぶせ4往復 身体が不自由な子との雨の日の外出事情

1

2022年05月24日 16:00  AERA dot.

  • 限定公開( 1 )

  • チェックする
  • つぶやく
  • 日記を書く

AERA dot.

写真傘の持ち手部分が曲がり、形を自由に変えることができるアイデア商品。片手が不自由な車いすユーザーの外出も助けてくれる/林田光来さん提供
傘の持ち手部分が曲がり、形を自由に変えることができるアイデア商品。片手が不自由な車いすユーザーの外出も助けてくれる/林田光来さん提供
「インクルーシブ」「インクルージョン」という言葉を知っていますか?  障害や多様性を排除するのではなく、「共生していく」という意味です。自身も障害を持つ子どもを持ち、滞在先のハワイでインクルーシブ教育に出会った江利川ちひろさんが、インクルーシブ教育の大切さや日本での課題を伝えます。


【写真】「食べやすさ」を優先したおいしそうなお弁当
■雨の日はどうやって移動するの?


 梅雨の時期が近づいてきました。我が家には身体が不自由な子どもが2人いるため、「雨の日はどうやって移動するの?」と聞かれることがあります。


 現在は子どもたちも大きくなり、困ることは少なくなりましたが、それでも必ず車で移動できる訳ではなく、ぬれるしかない場面もあります(笑)


 今回は、車いすユーザーの雨の日のおでかけについてです。


■子どもにバスタオルをかぶせ4往復


 我が家の子どもたち(双子の娘と弟)は年子のため、1〜2歳頃の外出時には、双子用のベビーカーと抱っこひもを合わせて使っていました。


 未就園時期には「雨が降った日は外出しない」ことも可能でしたが、習い事や通園が始まると、朝夕の混み合う時間帯にも家を出なければならないことが増えました。


 当時住んでいたマンションは、エントランスから車道まで10m以上ありました。屋根が無かったので、雨の日はエントランスの中に置いたベビーカーからひとりずつ抱き上げ、頭からバスタオルをかぶせた状態で車まで走り、チャイルドシートに乗せました。これを3回繰り返してベビーカーを畳んで入れ、帰宅時には逆の手順で子どもたちをベビーカーに乗せるのは、ほぼ「作業」です(笑)


 私は子どもを抱っこするので傘は使えず、レインコートも運転する時には邪魔になり、脱ぎ着に時間がかかるため、結局毎回ぬれていました。


■エレベーターを使うたびに申し訳なく


 さらにこのマンションは、100世帯に対してエレベーターが2基しかなく、私たちが乗ると階下の方が乗れなくなり、とても肩身が狭かったものです。特に雨の日は、エレベーターを降りた人たちが駐車場から車を出すのもスムーズには行かず、駐車場でも時間がかかるのにエレベーターを待たせてしまうことを申し訳なく思っていました。この頃は、優しい管理人さんが、私が車を出して戻るまで子どもたちと一緒にいて下さるなど、周りの方にかなり助けて頂きながら生活をしていました。


 いつまでこの状態が続くのだろう…と思っていましたが、次女が歩けるようになり、双子用の大きなベビーカーが1人乗りのバギーに替わり、長女と次女がそれぞれ日中を幼稚園や通園施設で過ごすようになると、息子を抱いて気兼ねなくエレベーターが使えるようになりました。


 どのご家庭でもそうだと思いますが、思い返すと、子どもが未就園の頃が一番大変なのかもしれませんね。



■雨の日の車いす登校に学校側の配慮 


 足が不自由な息子は、小学校低学年の時に両足の手術をし、しばらく車いすで過ごしていた時期がありました。学校は、雨の日は校舎に続く屋根のある通路まで車で入ることを認めて下さりました。


 でも、傘をさして登校して来る子どもたちの中に、車で入るのはとても危険です。雨の日はいつもよりかなり早くに家を出て、門が開くと同時に車を入れ、急いで車いすを出して息子を乗せ、校舎の入り口で車いすのタイヤを拭くと車を外へ動かし、安全な場所に止めてから再び息子のところへ戻るというバタバタをくり返していました。


 息子は一定期間でしたが、日々送迎が必要な車いすユーザーの子どもたちはたくさんいます。インクルーシブ教育とバリアフリーはセットのはずですが、雨の日の課題はまだまだあるようです。


■車いす用駐車場で残念なこと


 現在我が家は、医療的ケア児の長女のために、スロープが付いた福祉車両を使っています。


 スロープは車の後ろから出るため、病院などの駐車場では車を頭から入れることになります(バックで入れると、タイヤ止めにスロープが当たってしまうのです)。


 最近の車いす用の駐車スペースには、屋根があるところが多い印象ですが、駐車場全体を覆うようにできているところは少なく、さらに屋外の大きな駐車場では、車道部分にいくつかマンホールが設置されていて、スロープを出すとちょうどマンホール近くの水たまりに当たってしまうということがよくあります。


 雨の日は、長女に赤ちゃんの頃と変わらず頭からバスタオルをかぶせ、バギーでスロープを降りると走って屋根のあるところまで行きます。幸い、長女は顔に水がかかると「キャキャッ」と声を出して笑ってくれるので、今では開き直って、長女が多少ぬれても良いことにしています。


 そして10年前と比べると、街の中の環境が少しずつ、良い方向へ変化していることを実感しています。


■雨の日の外出を助けるアイテム


 さて。


 今回掲載した写真は、NPO法人の運営を手伝ってくれている、車いすユーザーの女の子が提供してくれたものです。「肩ブレラ」という名称で、傘の持ち手部分が曲がり、形を自由に変えることができます。



 本来はベビーカーを押したり、赤ちゃんを抱っこしたりする時にママの肩に巻きつけて使うようですが、片手が不自由な彼女が試行錯誤した結果、右手の前腕に巻きつけて、柄の部分を左肩に乗せると、車いすに乗った時にうまくバランスがとれて使いやすいと分かったそうです。さらに、傘と合わせてレインコートをひざ掛けのように置くと全身がぬれにくくなるとのこと。


 恐らく当事者の方は、私が想像するよりずっと、多くの努力と思考を重ねて日々生活しているのだと思います。


 雨の日の外出が少しでも楽になるようなアイテムが、どんどん開発されることを期待したいですね。


※AERAオンライン限定記事


    ランキングライフスタイル

    前日のランキングへ

    ニュース設定