サンナ・マリン首相 単独インタビュー 「国と未来を守るための決断」の背景とは

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2022年05月25日 06:00  AERA dot.

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写真Sanna Mirella Marin/1985年生まれ、ヘルシンキ出身。2019年から第46代フィンランド首相。フィンランド社会民主党代表(撮影/写真映像部・東川哲也)
Sanna Mirella Marin/1985年生まれ、ヘルシンキ出身。2019年から第46代フィンランド首相。フィンランド社会民主党代表(撮影/写真映像部・東川哲也)
 AERAは5月11日、フィンランドのサンナ・マリン首相に単独インタビューを行った。首相がニーニスト大統領とともにNATOについて「フィンランドはただちに加盟申請しなければならない」とする共同声明を発表した日の前日だ。中立の立場を取ってきたフィンランドがNATO加盟に踏み切った背景とは。AERA 2022年5月30日号の記事から。(全3回の1回目)


*  *  *


──北大西洋条約機構(NATO)への加盟申請について、「議会や政府、関係機関と検討中」と慎重に言葉を選びながらも、マリン首相は「私たちはきわめてすぐに決断するだろう」と力強く語った。実際、5月18日、申請した。


マリン首相:主な理由はロシアのウクライナ侵攻です。これが、ヨーロッパの安全保障環境をすべて変えました。私たちは、ロシアが隣国に、ウクライナに、極めて侵略的に振る舞っているのを目の当たりにしています。このようなことがフィンランドで絶対起きないようにしたいのです。


──決断の背景には、フィンランドの地理的状況や歴史がある。フィンランドは1300キロあまりにわたってロシアと国境を接している。1809年から1917年まではロシア領であり、第1次世界大戦中にロシア革命の際に独立した。だが、第2次世界大戦中には2度にわたってソ連の侵攻を受けて、領土を一部割譲した。


マリン首相:私たちは勇敢であらねばならないし、フィンランド国民の安全と未来を守るために、今、決断しなければならないのです。そのためにフィンランド国内で広く合意をとりつける努力もしてきました。隣国スウェーデンとも調整してきました。


──フィンランドは第2次世界大戦後の48年、「友好協力相互援助条約」をソ連と締結。外交や軍事で強い制約を受け、EU(欧州連合)の前身、欧州共同体(EC)にも加盟できなかった。


ソ連崩壊後の95年、EUに加盟したがNATO加盟を見送るなど、常にロシアの意向を気に掛ける外交を強いられてきた。


マリン首相:フィンランドはEUの構成国であり、EUは日本や米国、イギリスなどと協調しています。そしてもちろん国連の加盟国でもあります。私たちはロシアの行動を非難し、次の二つのことをせねばなりません。ロシアに制裁を加え、ウクライナを支援し続けることです。



 私たちは皆ウクライナを助け、武器を供与し、経済的・人道的な援助を続けなければなりません。戦争が続く限り、支援し続けなくてはならないのです。フィンランドでは、ウクライナから逃れてきた多くの人たちを迎え入れていますし、彼らに必要なすべてのサービスや働く機会を提供しています。私たちの連帯は強い。戦争が終わったら、ウクライナが自分たちの社会を立て直せるよう、助けなくてはなりません。


■国民の防衛意識強い


──フィンランドは18歳以上の男子には約6カ月以上の兵役(民間役務の選択も可能)を課し、終了後も訓練に招集されることもある。防衛費は国内総生産(GDP)の2%近くにのぼる。首都ヘルシンキには広大な地下シェルターがめぐらされ、歴史的、地理的なリアリズムに向き合う国民の防衛意識は強い。


 フィンランドがNATOへの加盟を正式決定すると、ロシアはどう反応するのか。ロシア外務省はすでに、大統領と首相のNATO加盟申請の声明を受け、「外交政策の過激な変更だ」と声明を発表。4月と5月、ロシア軍機がフィンランド領空を2度にわたり侵犯したとフィンランドメディアは発表した。


マリン首相:私たちの決断に対して、ロシアがどんな行動をしかねないかわかりません。しかし、私たちは自分たちの利益に基づいて決断しなければなりませんし、その権利があります。決断は誰に対抗するものでもありません。


──NATO加盟申請という重大決断の直前の訪日だった。本誌インタビュー後の11日の夕刻、マリン首相は岸田文雄首相と会談を行った。そこでも話題の中心はウクライナ問題だった。会談後の記者会見で、マリン首相はこう述べている。


「ロシアの侵攻に対する日本の協力、リーダーシップを高く評価しています。対応は全世界で行うべきです。日本も制裁をして、ウクライナを支援しています。フィンランドがNATOに加盟申請する可能性について、岸田総理に申し上げました。もしフィンランドが歴史的なステップを踏むのであれば、それはフィンランド国民の安全を守るためです。NATO加盟で共通の価値観を支える国際社会全体が強化されるはずです」


 3日間の訪日後、15日にはフィンランドはNATO加盟を申請するとの政府方針を決定した。


 18日、フィンランドはスウェーデンと同時にNATOへの加盟を申請。ストルテンベルグ事務総長は、温かく歓迎し、早急に結論を出す旨を述べた。NATOは6月末の首脳会議で新たな安全保障戦略を議論する。


(構成/朝日新聞編集委員・秋山訓子)

※AERA 2022年5月30日号より抜粋



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  • 素晴らしい�ؤ�OKわが国ではそういう決断はできず、事が起きてから誰が悪いとか内輪揉め、反対していた人たちはダンマリする予感。
    • イイネ!1
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