バイデン氏来日異聞、アメリカで民主党大統領が誕生すると、日本で“リベラル政権”が成立する不思議

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2022年05月25日 11:10  週刊女性PRIME

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5月23日午前、米バイデン大統領は天皇陛下と面会した

 アメリカのジョー・バイデン大統領が5月22日夕方、専用機エア・フォースワンで来日しました。

 今回の来日の目的は、海洋進出に野心を見せる中国の脅威をどう防ぐかです。 

 5月23日14時過ぎ、日米首脳による共同記者会見が開かれました。その場で岸田総理は「中国の力による現状変更の試みに強く反対し、防衛費の相当な増額を確保する」と宣言し、バイデン大統領も支持しました。

 安倍元総理の側近である山田宏・元防衛大臣政務官は「GDP比2%が急務。現状では自衛隊舎も修繕できず、隊員の待遇が大問題だ。部品購入への皺寄せが多大となっている。発射台や戦闘機はあれど、ロケット・ミサイルが買えない。継戦能力に欠け、苦戦を強いられているロシアの二の舞いとなる」と赤裸々に語っています。

 佐藤啓・前経済産業大臣政務官は「最新鋭の防衛装備は、米国に依存している。自国で賄えない現状は危機的だ。防衛産業の保護と振興に正面から取り組むべきだ」としており、会見の方針が日本の防衛を大きく前進させる事を物語っています。

 24日には、日米とオーストラリア、インドの枠組み「クアッド」の首脳会談が開かれました。共同声明では、5Gやバイオ技術で官民が連携し「軍民融合」の中国への対抗策が打ち出されました。松川るい防衛大臣政務官は「極めて重要な会談。自由で開かれたインド太平洋と安心安全な技術のサプライチェーンを作ってもらいたい」と、ゲームチェンジャーになり得る会談としています。

 23日夜には、岸田総理と東京白金の「八芳園」で非公式の夕食会をともにし、親睦を深めたとのことです。

 実は岸田総理、バイデン大統領が属するアメリカ民主党とはそもそも親密な関係にあります。

 3月26日総理は、エマニュエル駐日アメリカ大使と連れ立って原爆死没者慰霊碑に献花しています。

 核兵器の使用が懸念されるロシアのプーチン大統領を念頭に、核廃絶をアピールした訳です。

 実はこの光景からは2016年、アメリカ大統領として初めて広島を訪れたバラク・オバマ大統領に、外務大臣時代の岸田氏が原爆ドームの説明をした姿が思い起こされます。

 原爆を落とした側の米国の大統領が、被災地を訪問した事実に世界が驚きました。

 私はこの出来事はオバマ大統領が、岸田外相に花を持たせ、“ポスト安倍総理”に相応しいと示したと理解しています。

 これは、オバマ大統領に副大統領として重用されたバイデン大統領、首席補佐官だったエマニュエル大使と、現在に至るまでの強固な関係を物語っています。

バイデン政権と岸田政権が“一蓮托生”な理由

 そのバイデン大統領の支持率ですが、低迷の一途をたどっています。

 AP通信が今月中旬実施した世論調査によりますと、バイデン大統領を支持すると答えた人は39%と、先月から6ポイント下がり過去最低を記録しました。就任した直後は61%でした。

 バイデン政権の凋落は岸田総理にとっても他人事ではありません。

 私がそう考える理由は、日本とアメリカの政権の「カップリング」にあります。

 端的に言うと、「アメリカで民主党大統領が誕生すると、日本で“リベラル政権”が誕生し、共和党大統領が誕生すると、日本で“保守派政権”が誕生する」という歴史を繰り返してきたからです。

 簡単にまとめてしまうとこうです。

 アメリカで民主党大統領が誕生⇒日本では“リベラル政権”へ(宏池会、田中派系、社会党、民主党の首相)
 アメリカで共和党大統領が誕生⇒日本では“保守派政権”へ(清和会の首相、中曽根康弘氏)

 アメリカ民主党大統領の低迷、あるいは共和党大統領の誕生は、岸田政権とそれを支える宏池会にとり、好ましい状況とは言えないかも知れません。

 日本の“保守派政権”を担うのは自民党の派閥・清和政策研究会(清和会)です。創設者は福田赳夫元総理ですが、岸信介、鳩山一郎派の流れを汲んでいます。もちろん個人個人で異なり、全員がそうではありませんが、親米、憲法改正、反共産主義、防衛力強化に積極的、そういった基本思想のある議員が集まる傾向にある派閥です。

 また“リベラル政権”を担うのは、岸田総理が所属する宏池会、田中(角栄)派(を後継した経世会、平成研究会も)、旧日本社会党、旧民主党です。自民党内の派閥と社会党、民主党を一緒にするのは違和感があるかもしれませんが、宏池会、田中派系は親中国、再分配重視といった基本思想を持つ議員が集まる傾向にあるとされ、党内ではリベラル派と見られています。日中国交正常化を成し遂げたのは田中角栄元総理なのです。また宏池会とその流れを汲む派閥には憲法改正に否定的な議員も少なからずいます。

アメリカ民主党大統領の誕生後、自民党野党転落が起きることも 

 具体的に「カップリング」の歴史を紐解いてみましょう。ここで紹介するアメリカの大統領はすべて1月20日に就任しています。

 1977年、アメリカ民主党のジミー・カーター大統領就任翌年の1978年12月に宏池会の大平正芳総理が誕生、1980年1月には同じ宏池会の鈴木善幸総理に受け継がれます。

 1981年にアメリカで共和党のロナルド・レーガン大統領が就任すると、日本では1982年11月に中曽根康弘総理が誕生します。中曽根総理は清和会の出身ではありませんが、思想は自主憲法制定、防衛力強化など保守派そのものでした。

 1989年就任のジョージ・H・W・ブッシュ大統領を1代置いて、1993年に民主党のビル・クリントン大統領が誕生すると、同じ年の8月に自民党は野党に転落し、細川護熙氏が総理に就任します。この政権は非自民7党連立で最大政党は日本社会党、まぎれもないリベラル政権といえるでしょう。細川氏も政権交代の影の立役者である小沢一郎氏も、自民党時代は田中派に属していました。

 その後、連立政権はやはり田中派出身の羽田孜氏に引き継がれるも社会党が政権を離脱し崩壊、自民党と社会党(と新党さきがけ)が手を組むという驚きの「自社さ連立内閣」が成立し、自民党は復権。しかし総理に担がれたのは社会党の村山富市委員長でした。

 またその後の総理、橋本龍太郎氏、小渕恵三氏はいずれも田中派の出身です。続く森喜朗政権は、急逝した小渕総理の幹事長として政権の「骨格」であったことで後継に担がれました。政権の中枢機能は、田中派出身青木幹雄官房長官と野中広務幹事長が、田中派出身として継承したため、リベラル政権に擬せられます。

 2001年、アメリカでは共和党(ジョージ・W・ブッシュ大統領)へと政権交代し、直後に日本でも清和会の小泉純一郎政権が誕生しました。その後も安倍晋三氏、福田康夫氏と清和会政権が続いています。

 2009年、「Change!」「Yes,We can!」の掛け声とともに民主党バラク・オバマ大統領が登場しましたが、その8か月後に日本ではまたも自民党が下野(野党に転落)、9月16日に民主党鳩山由紀夫政権が誕生しました。

 その後、清和会安倍晋三政権の期間にすっぽり収まる形で共和党ドナルド・トランプ大統領が在職しています。

 そして、2021年のジョー・バイデン大統領誕生の約9か月後に宏池会岸田文雄総理が誕生したわけです。

 こうしてみると、例外はありますがおおむねアメリカ民主党大統領と日本の“リベラル派”政権、共和党大統領と“保守派”政権がカップリングしていることがわかります。

 因果関係はわかりませんが、歴史の事実としてそうなのです。

トランプ前大統領、“粉ミルク”を材料に政権口撃

 さて、バイデン大統領が支持率を下げている要因はなんといっても記録的な物価の上昇です。

 アメリカの4月の消費者物価指数は、前の年の同じ月と比べて8.3%の上昇を記録しました。

 3月の8.5%と比べると、小幅ながら伸びが縮んだものの、8%台というのは記録的な高さです。

 また、支持率低下のもう一つの要因として「粉ミルク」危機もあるようです。

 アメリカでは、2月に大手メーカーの粉ミルクを飲んで細菌感染を起こした赤ちゃん2人が死亡した報告があり、食品医薬品局(FDA)が同社製の粉ミルク3種のリコールを発表、また工場が閉鎖したことをきっかけに粉ミルク不足が深刻化しています。

 欠品率が4月のわずか3週間で40%までにもなり、大手ドラッグストアチェーンは全国で粉ミルクの購入を1回につき3つまでに制限するなど、赤ん坊を持つ親には、深刻な事態になっています。

 5月12日にはバイデン大統領が、ネスレや小売りのウォルマート幹部と面会し、供給不足の解消を要請、ヨーロッパからの空輸が決まったものの、共和党サイドはこの“失策”を見過ごさず、政権攻撃材料の一つとしています。

 その中心は前大統領であるトランプ氏で、バイデン大統領がウクライナへの400億ドルの援助を可決させたことについて、「民主党はウクライナにまた400億ドルを送ろうとしているが、アメリカの親たちは子どもたちを養うことすらままならない」との声明を発表しました。

 とりわけ、粉ミルク不足について「2022年、アメリカの家庭が子どものために粉ミルクを手に入れることができないというのは、考えられないことです。子供が深刻なアレルギーを持ち、『エレメンタルフォーミュラ』(ミルクアレルギー等の赤ちゃんのための母乳代替食品)を必要とする家庭は、さらに絶望的で悲惨な状況にある」と政権を非難しました。

 この存在感、根強い人気からいって私は2024年の大統領選でバイデン大統領(あるいはカマラ・ハリス現副大統領)の座を脅かすのはやはりトランプ氏なのではと考えています。読者の皆さまにも、分水嶺となる11月8日のアメリカ中間選挙など今後の日米の政権の動きにぜひ注目していただきたいと思います。

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  • そうなってほしい。自民党下野。
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