4299万円の“スピード確保”の裏側 インターネットカジノ事情と田口容疑者の狙い 誤入金問題

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2022年05月25日 11:30  AERA dot.

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写真写真はイメージです(GettyImages)
写真はイメージです(GettyImages)
「全額をインターネットカジノに使った」わけではなかった。山口県阿武町の4630万円誤入金問題。5月24日、町は4299万円を確保したと発表した。急展開で返金のめどがついた背景に何があったのか? ネットカジノとの関係は? それぞれ探った。


【写真】阿武町の記者会見の様子
「このニュースを聞いてやっぱりだと思った。4630万円も一気にネットカジノに使うだけの度胸はないですよ」


 そう話すのは、電子計算機使用詐欺容疑で逮捕された無職田口翔容疑者(24)の幼なじみだ。


 当初、田口容疑者は「すべて海外のネットカジノで使った」と弁護士らに説明していた。


 しかし、この日、花田憲彦町長とともに記者会見した町側の代理人、中山修身弁護士は、


「田口容疑者が送金した決済代行業者3社に対し、国税徴収法に基づいて差し押さえなどの手続きを進めました。具体的には5月19日に東京にある3社に書面を直接手渡したところ、直後に阿武町の銀行口座に送金してきたようです。それを阿武町が確認したのが23日。まだ他の手続きが完了していないので、返金というより確保という言葉になります」


 と説明した。


 田口容疑者がネットカジノに使うために送金したとみられる決済代行業者。ネットカジノとどういう関係があるのだろうか。


 関西地方でネットカジノ関連の仕事をしているある男性に話を聞くと、仕組みはこうだ。


 ネットカジノは、サーバーが海外にあり、いったん決済代行業者にカネを預けてポイントに交換し、それを使ってカジノで賭けることができる。


「決済代行業者は、初回の客などにはポイントを多くつけて、囲いこもうとする。例えば、100万円を業者に預けると通常なら100ポイントのところ、150ポイントくらい、つまり50%上乗せして交換する。業者も競争なので、ポイントをどれくらいつけるかはそれぞれ」


 業者は損はしないのだろうか。


「決済代行業者は、サーバーのあるフィリピンなどの、胴元となるネットカジノ業者に登録しており、ポイントを数億円、それ以上の単位で大量に買い付ける。そういう単位で取引し、信用ができれば、相当多くのポイントを上乗せして交換してもらえるようになる。例えば1億円を胴元に払うと、5億ポイントもらえるという感じ。だから、客にポイントを50%程度還元してももうかる仕組みになっている」




 客がゲームを終えて勝った場合は、


「基本は登録口座にポイント還元という形になる。もちろん、現金という人もいる。その場合、銀行口座に振り込むと賭博罪で立件されかねないので、こっそりと現金を手渡しする」


 とのこと。ネットとはいえ、賭博となれば犯罪行為とも思われるが、


「サーバーが海外にあるという理由で、法的には、賭博罪などには該当しないという解釈になっている」との説明だった。


 ネットカジノと決済代行業者については、これまでもマネーロンダリングの可能性も指摘されてきた。


 2016年にはネットカジノの決済代行業者が、千葉県警に逮捕され、有罪になった事件もある。


 そこで、「インターネットカジノ」「決済代行業者」でネット検索してみたが、業者の具体的な名前は出てこなかった。田口容疑者は、決済代行業者にどうやってたどりついたのか。


「(カジノに関係する)決済代行業者の背後には暴力団関係者が多いので、地方都市でも口コミで簡単に見つかります。東京や大阪の繁華街では、深夜にチラシを配って客集めしている店もあります」(前出のネットカジノ関係者)


 田口容疑者が全額使ったと説明していたことについてはこう推測する。


「決済代行業者を使ってネットカジノで使ったふりをして、ほとぼりが冷めたらカネを引き出そうという、『マネーロンダリング』を最初から考えていたのではないか。大々的に報道されたことで、決済代行業者もプレッシャーを感じて、早めに返金したほうがいいと判断したと思う」


 田口容疑者は逮捕前、山口県警の任意の事情聴取に応じた際にスマートフォンの提出を求められ、応じたという。


「田口容疑者がスマートフォンを出した時に当然、さまざまなデータをとっている。社会的な関心も高く、スピードある被害回復が必要だ。そのデータが早急な逮捕のきっかけとなった」(捜査関係者)


 現時点で4299万円が阿武町に戻るめどがついたようだが、まだ300万円あまりが残っている。今後はどうなるのか。



 元東京地検の落合洋司弁護士は、


「田口容疑者の逮捕容疑、電子計算機使用詐欺という罪名自体が成立するのかと考えていた。おそらく、警察、検察は罪名より逮捕でプレッシャーをかけ、返金を最優先したのではないか」


 とみる。そして、大半が返金されることを踏まえ、


「起訴前に4630万円に近い返金があれば、田口容疑者は起訴されずに処分保留で釈放されるかもしれない。財産犯なので、金銭的な被害が回復されることが最も優先される。起訴後に返金があった場合でも、裁判では執行猶予が付いて、刑務所に入らなくてもよいという判決になるのではないか。この事件は、田口容疑者が金を盗んだのではなく、阿武町の誤入金が端緒なので、裁判になるとかなり量刑には考慮されます。もし、今の電子計算機使用詐欺という罪名のまま検察が起訴すると、裁判では無罪になる可能性が十分にある」


 と話す。


 花田町長は、4630万円の9割ほどが「確保」できたことで、


「大半のお金が確保でき、若干、安心しています。しかし、すべて回収できていないので、今後も努力します。(4630万円が)どう流れ、使われたかは、できるだけ解明したい。警察が一定程度やると思うので、町民には説明をしたい」と記者会見で心境を明かした。


 しかし、花田町長ら阿武町は、安心できる状況ではなさそうだ。


「役場には、誤入金したこと自体に責任があるという内容の電話がたくさんきています。今後、住民監査請求や訴訟などになると、ますます厳しい状況になります。もう被害者という言い訳が通じなくなる。職員が被害弁済を求められる可能性もあり、花田町長の責任問題で辞職にも発展しかねない。すでに、次の町長が誰か、7月の参院選と同日のダブル選挙にして新しい町長を選ぶべきだとの声も上がっています」(阿武町議会関係者)


 カネが戻ってきたとしても、それでおしまいというわけにはいかないようだ。


(AERA dot.編集部・今西憲之)


このニュースに関するつぶやき

  • 俺思うにこの容疑者鉄砲玉にされたって思ってっるこの容疑者の取り分の前金が3百万じゃね?
    • イイネ!2
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