トマト農家で映画監督、山崎樹一郎の新作『やまぶき』カンヌ国際映画祭で上映

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2022年05月26日 09:38  ORICON NEWS

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写真(左から)小山内照太郎、黒住尚生、山監督、カン・ユンス(C)Lea Rener | ACID Cannes 2022
(左から)小山内照太郎、黒住尚生、山監督、カン・ユンス(C)Lea Rener | ACID Cannes 2022
 フランスで開催中の「第75回カンヌ国際映画祭」のACID部門で正式出品された、山崎樹一郎(※崎はたつさき)監督の『やまぶき』(秋より全国順次公開)の舞台あいさつ付き上映が、現地時間24日午前11時半と午後8時半に実施され、山崎監督、主演のカン・ユンス、出演の黒住尚生(くろずみ・ひさお)、音楽のオリヴィエ・ドゥパリ、プロデューサーの小山内照太郎が登壇した。

【画像】満席の大盛況だったことがうかがえる会場の写真

 本作は、今年1〜2月に開催された、オランダ・ロッテルダム国際映画祭のタイガー・コンペティションがワールドプレミアだったが、新型コロナウィルスの影響でオンライン開催となったため、今回の上映は、スタッフ・キャストにとって、初めて観客と一緒に大画面で作品を見る機会となった。

 出品された部門名の「ACID」は、「インディペンデント映画普及協会」の略称。映画作家たちが創設した同協会が、マーケットの原理に左右されがちなカンヌ映画祭のなかで映画の表現の多様性を守るために、監督週間と批評家週間にならぶ3つ目の並行部門として創設した。15人の映画作家による選定委員会が、毎年9作品を選び招待している。部門30年の歴史上、日本映画からは『やまぶき』が初めて招待された。

 ACID部門にはレッドカーペットやタキシードなどのドレスコードも一切なく、リラックスして純粋に映画を楽しむ雰囲気であることが特徴だ。上映後には、時間の許す限り観客との質疑応答が行われる。

 午前11時半の上映は、映画業界人だけではなく一般市民にも開かれており、老若男女、多くの映画ファンが来場。上映後は、ACIDの選定委員の一人が司会を務めて、質疑応答が行われ、『やまぶき』の世界に魅了された観客たちからの質問は止まず、およそ50分間も続いた。

 午後8時半からの、世界の映画業界人に向けた公式上映も満席。ACIDの選定委員の映画作家3人による進行で舞台あいさつがスタート。「日本映画は本当に素晴らしい歴史を持っているが、それでもこんな日本を映画の中で見たことがない」と選定委員の一人が『やまぶき』を称賛して紹介。

 山崎監督が「メルシーボークー。日本からやって来ました。僕は普段トマト農業をしていて、カンヌが決まって大変うれしかったんですけど、トマトの農家の仕事の作業をちょっと後ろにずらしたので、帰ってすぐに苗の定植作業をすることになります。とにかく映画を楽しんでいただけたらと思います」と、あいさつをすると会場は大いに沸き、上映がスタートした。上映後には大きな拍手が起こり会場は暖かい雰囲気に包まれた。その後の質疑応答では、質問は止むことがなく、予定していた20分はあっという間に過ぎた。

 最後に、山崎監督は、フランスが全国の幼稚園・小中高校で実施している映画教育のメソッドを取り入れて、映画館の全くない真庭市の学校で映画教育を実施していることに触れ、「僕は2年前に1ヶ月ほどフランスの学校で映画教育の調査をして、今、岡山県真庭市で実践しています。日本でそういう活動を続けていけたらと思います。映画文化を大切にするフランスという国を尊敬しています」と言うと、フランス各地の映画教育の担い手である業界人の多い観客席から再び大きな拍手が湧き起こった。

■映画『やまぶき』について

 山崎監督は、岡山県真庭市の山間で農業に携わりながら、地方に生きる人々に光をあてて映画製作を続けており、『やまぶき』は長編3作目。再び地元でロケをし、初めて16ミリフィルムで撮影に挑んだ。

 物語の舞台は現代。かつては韓国の乗馬競技のホープだったチャンス(カン・ユンス)は、父親の会社の倒産で多額の負債を背負った。真庭市に流れ着き、今はヴェトナム人労働者たちとともに採石場で働いている。一方で、刑事の父と二人暮らしの女子高生・山吹(祷キララ)は、交差点でひとりサイレントスタンディングを始める。二人とその周囲の人々の運命は、本人たちの知らぬ間に静かに交錯し始める――。陽の当たりづらい場所にしか咲かぬ野生の花「山吹」をモチーフに、日本社会と家族制度の歪みに潜む悲劇と希望を描いた群像劇。

 フランスのSurvivance(シュルヴィヴァンス)との国際共同製作によって完成。『大人のためのグリム童話 手をなくした少女』でアヌシー国際アニメーション映画祭で2冠を得たセバスチャン・ローデンバックがアニメーションパートを、オリヴィエ・ドゥパリが音楽を担当。また、フランソワ・トリュフォーやモーリス・ピアラ、フィリップ・ガレルなどの巨匠監督の作品を手がけた、フランス映画の伝説的な編集マンであるヤン・ドゥデが編集協力をしている。

 ロッテルダム国際映画祭に引き続き、『やまぶき』について好意的な批評記事が、フランスを中心に海外の各媒体に露出。フランス映画批評界の重鎮ジャン=ミシェル・フロドンも高く評価した。また、山監督は、カンヌ滞在中に日本の新聞各紙に加えフランスの媒体の取材も受け、フランスを代表する日刊紙ル・モンドや、カルチャー誌などにインタビュー記事が掲載される見通しとのことだ。
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