リバプールvsレアル・マドリード。CL決勝の戦力を識者3人が徹底比較。「監督対決も楽しみ」

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2022年05月26日 18:12  webスポルティーバ

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CL決勝プレビュー鼎談 後編  前編を読む>>

 サッカーの試合実況で日本随一のキャリアを持つ倉敷保雄、サッカージャーナリスト、サッカー中継の解説者として長年フットボールシーンを取材し続ける中山淳、スペインでの取材経験を活かし、現地情報、試合分析に定評のある小澤一郎――。
 経験豊富な識者3人が、チャンピオンズリーグ(CL)の決勝の見どころを語る後編。今回はリバプール、レアル・マドリード両チームの顔ぶれと戦力を比較します。

――今回も、引き続き5月28日(現地時間)に開催される今季のチャンピオンズリーグ決勝戦について、お三方のお話しを聞きたいと思います。前回は、リバプールとレアル・マドリードのストロングポイントとウィークポイントなどに言及していただきましたが、今回はさらにディープな視点で、お話しいただけたらと思います。




クルトワのシュートストップがすごい

倉敷 では、GK、DF、MF、FWと、ポジションごとに両チームの戦力を比較したいと思います。まずはGKの比較から、小澤さんはどう見ますか?

小澤 決定機阻止という点で、ややレアル・マドリードのティボー・クルトワが上回ると思っています。レアル・マドリードは、戦い方としてどうしても引いて守る時間が長くなり、相手に決定機を作られやすい構造で、その回数も多くなってしまいます。

 そんななかでも、最後はクルトワがシュートを阻止してしまう。アスリート能力が高いので、1対1の局面でもシュートブロックに出ていくスピードが速い。もちろんリバプールのアリソンもすばらしいGKなのですが、あれだけ高身長でありながら抜群のアジリティを誇るクルトワは、現在世界最高のGKだと思います。

倉敷 では、続いてDFです。サイドバック(SB)はアタッカー的な要素もありますが、ここではセンターバック(CB)とセットとして、4バックということで比較してみましょう。

 リバプールは、おそらく左SBアンドリュー・ロバートソン、CBがフィルジル・ファン・ダイクとイブラヒマ・コナテかジョエル・マティプ、右SBがトレント・アレクサンダー=アーノルドという布陣で臨むでしょう。

 一方のマドリードは、左SBにフェルラン・メンディ、CBはダビド・アラバが間に合えばエデル・ミリトンとコンビを組んで、間に合わなければナチョ・フェルナンデスとミリトンのCBコンビ。そして右SBはダニエル・カルバハルという予想になりますが、中山さん、両チームのバック4をどのように見ていますか?

DF&MFの戦力を比較

中山 総合的に見て、DFの戦力はリバプールのほうが上回っていると思います。何と言っても、ファン・ダイクの存在が大きい。彼の速さや強さを含めた守備能力は説明するまでもありませんが、個人的に注目しているのは、彼のロングパスの精度ですね。

 前線に精度の高いロングパスを供給できるので、いわゆるプレスの"逃げ口"にもなれる。セットプレー時の空中戦の強さもそうですが、あの守備能力を持ちながら、攻撃面でも武器になれる点で、間違いなく世界最高レベルの選手だと思います。

 おそらく彼とコンビを組むのは若いコナテになると思いますが、最近は以前よりプレーが安定してきましたし、空中戦も含めてフィジカル能力が高い。時々裏を取られるケースがありますが、ファン・ダイクのカバー能力が抜群。CBコンビとして見た場合でも、レアル・マドリードのアラバとミリトンを少しだけ上回ると見ています。

 また、両SBの比較でも、攻撃力とキック精度が異常にハイレベルなリバプールの2人に軍配が上がると思います。もちろん、レアル・マドリードのメンディとカルバハルも攻撃力は高いですし、とくにカルバハルは勝負どころの見極めみたいなものが、攻守にわたって優れています。

 ただ、ロバートソンとアレクサンダー=アーノルドは、場合によっては2人のロングレンジのパス交換でフィニッシュしてしまうほどのダイナミズムがある。それは、ほかのチームにはない、リバプールならではの武器だと思います。

倉敷 では、次に中盤を比較しましょう。リバプールの3人は、ファビーニョ、ジョーダン・ヘンダーソン、そしてチアゴ・アルカンタラが残念ながらケガと報じられていますのでナビ・ケイタかジェイムズ・ミルナーで予想します。対するマドリードは、いつもどおりなら、カゼミーロ、トニ・クロース、ルカ・モドリッチの3人です。小澤さんは、両チームの中盤3人を比べてどちらが上だと思いますか?

小澤 引き分けですね。というのも、最近のファビーニョはすさまじいレベルの選手になっていると感じていて、ラ・リーガの看板ピボーテのカゼミーロやセルヒオ・ブスケツ(バルセロナ)の域を超えているかもしれないと思うくらいなので。

 ボールを刈り取れて配球も抜群で、すべての局面をうまくつなげてくれるファビーニョがいて、さらにチアゴがクロップのサッカーにフィットしてきています。そのチアゴがケガで欠場となると、リバプールにとっては痛いですね。それと、ヘンダーソンやケイタのどちらが入っても、外に張るサラーの内側のレーンで無駄走りとわかっていながら走ってくれる。すごくバランスがいい中盤だと思います。

 一方のレアル・マドリードも、中盤は不動の3人がいて、たしかに身体的な衰えは多少ありますけど、とくに今シーズンのモドリッチは別格のプレーを見せている。それと、クロースが少しだけ調子を落としている点は心配で、個人的には、もしかしたら決勝戦ではクロースではなくフェデリコ・バルベルデを先発させて、右ウイングにロドリゴを使う可能性もあると見ていますが、そうなっても遜色ないレベルは保てるはずです。

 とはいえ、決勝戦で相手がリバプールとなると試合巧者ぶりを発揮する必要があるので、普通にいけばカゼミーロ、モドリッチ、クロースの鉄板3人をスタメン起用して、カルロ・アンチェロッティ監督が彼らの経験値を優先するでしょう。それも含めて、両チームの3人はがっぷり四つだと見ています。

攻撃のバリエーションはリバプールか

倉敷 では、両チーム自慢のFWにいきましょう。アタッカーも3枚ずつということで、リバプールはサディオ・マネ、モハメド・サラー、ルイス・ディアスと予想しますが、ここはディオゴ・ジョッタ、ロベルト・フィルミーノというオプションもあります。

 レアル・マドリードは、ヴィニシウス、カリム・ベンゼマは鉄板で、右はバルベルデ、もしくは小澤さんがおっしゃったように、ロドリゴを先発させてバルベルデが中盤というパターンも考えられます。中山さんは、両チームのFW陣にどんな印象を持っていますか?

中山 まず、バルベルデが右ウイングで先発した場合、役割はアタッカーというよりもMFになると思うので、ベンゼマ、ヴィニシウスのコンビという見方をしています。そのうえで、2人の能力とコンビネーションを考えると、現在ヨーロッパでもトップクラスの破壊力があると思います。

 覚醒したヴィニシウスの相手を剥がす力と、相手ボックス内における落ち着き、プレー精度とプレー選択は申し分のないレベル。ベンゼマは34歳にしてキャリア最高のシーズンを過ごしていて、とてつもない決定力がある。その2人には阿吽の呼吸もあり、どんな局面も打開して、2人だけでゴールを決める力があります。

 ただ、リバプールの3人もすごい。おそらく先発は左にルイス・ディアス、中央にマネ、右にサラーと予想しますが、左にマネ、中央ジョッタの組み合わせになっても、ほぼ同レベルの決定力があり、試合の流れを変えたい場合はフィルミーノという独特なプレースタイルの選手も控えています。

 そのなかでも、献身性も兼ね備えたマネのワークレートは世界屈指の高さだと思っていて、ロングボールに対して相手DFと競り合う時の身体の使い方もうまいので、普通のFWなら決定機にならないシーンも決定機にしてしまう。それと、各選手には個人で打開する力もありますが、それぞれにホットラインができているので、コンビネーションでフィニッシュできる強みもあります。

 そう考えると、攻撃バリエーションでリバプールに軍配が上がると思います。

経験値抜群の両監督

倉敷 続いて、両監督について話しましょう。ユルゲン・クロップとカルロ・アンチェロッティはそれぞれ異なるタイプの指導者ですが、この対戦ではどちらの監督の優位性を考えますか?

中山 難しい比較ですね。アンチェロッティのほうが監督キャリアは長いので、経験値という点ではクロップを上回っていると思います。ただ、クロップはドルトムント(ドイツ)時代に1度、リバプールでも過去に2度CL決勝戦を戦っていて、優勝も1度しています。今回は4度目のCL決勝戦になりますが、アンチェロッティよりも8つも歳下であるにもかかわらず、CLでこれだけの実績があるという点では、実際はそれほど経験の差はないのかもしれません。

 しかしながら、アンチェロッティほど酸いも甘いも知り尽くしている監督も少ない。たとえば、今季のラ・リーガ優勝を決めたエスパニョール戦から、大事なマンチェスター・シティとのCL準決勝第2戦まで中3日しかなかったのに、選手に思いきりリーグ優勝のお祝いをさせてあげました。最初にそれを見た時は、大一番の前に選手たちの気を緩めさせるようなことをして大丈夫なのか、と心配になりましたが、結果的にシティとの試合では劇的な逆転勝ちを収めました。ああいったことは、経験がないとなかなかできない。

 その後、消化試合になったリーグ戦では徹底的に選手のプレータイムを管理し、決勝戦から逆算しながらローテーションを組み、CL決勝戦前の最終節にレギュラーメンバーをスタメン起用するあたりは、さすがですよね。しかも、これでCL優勝を成し遂げたら、アンチェロッティは監督としてのCL優勝回数が4回になって、単独トップで過去最多を更新することになります。"旬"という部分ではクロップに傾くところもありますが、ここはリスペクトを含めて、アンチェロッティに軍配を上げたいと思います。

小澤 僕も、甲乙つけがたいというのが正直なところです。両監督の持ち味がまったく違いますし、近年で言うと、クロップのほうがチーム作りやサッカーの内容に対する評価が高いと思いますしね。もちろん、今季のアンチェロッティ監督はヨーロッパの5大リーグすべてを制覇した史上初の監督になったわけですが、レアル・マドリードに来る前はエバートン(イングランド)、その前はナポリ(イタリア)と、CL制覇を狙えるようなビッグクラブを率いていたわけではないので、近年の実績ではクロップが上回っていると見ています。

 とはいえ、今シーズンに見せたアンチェロッティのマネジメントはさすがだと感じていますので、ここは引き分けが妥当ですね。逆に、それだけ優れた監督同士が対戦する今回の決勝戦は、ベンチワークを見ても十分に楽しめるはずです。個人的には、年齢もキャリアも経験も違う2人だからこその対決を、楽しみにしたいと思います。

個人を楽しむか、チームを見るか

倉敷 今回の決勝戦はいろいろな視点で楽しむことができそうですが、お二人はどこに一番注目して決勝戦をご覧になるのか、最後に教えて下さい。

中山 やはり世界のトップクラスの選手を揃えたチーム同士の戦いなので、敢えて選手個人のプレーに注目してみたいですね。どの選手も一流のテクニックを見せてくれると思いますが、そのなかで僕は最も注目したいのは、レアル・マドリードのベンゼマです。

 相手ボックス内におけるシュート前の動き、相手DFとの駆け引きは、準決勝までのプレーだけを見ても、なぜベンゼマがこれだけゴールを決められるのかがよくわかると思います。味方がボールを持っても動きすぎず、フラフラ歩きながら、相手の動きを見て一瞬で背後をとる。味方も、その動きを先読みしてボールを供給するので、ベンゼマの動きとパスが見事に一致するわけです。あれは、絶妙としか言いようがありません。

 それと、試合のなかで何度か見せてくれる単独プレッシングも注目ですね。とくに味方と連動しているわけではないのに、相手GK、あるいはCBに対してベンゼマが単独でプレスに行くと、相手が焦ってミスするシーンが意外と多い。あのプレスにいくコースどり、スピードアップの仕方、足を出す方向やタイミングなどは、ベンゼマにしかできないテクニックだと思います。決勝のような大一番では、ミスをしたチームが負けてしまうことが多いので、そういう点でも、ベンゼマのひとりプレッシングは要注目です。

 リバプールでは、ファン・ダイクのロングパスに注目したいですね。先ほどもふれましたが、あのロングパスの精度は驚異的ですし、苦しい場面でもあの1本のパスで試合の流れを変えたり、ゴールにつなげたりするので。ファン・ダイクを見る時は、守備のみならず、キックにも注目してほしいと思います。

小澤 僕は、チーム対チームという視点で楽しみたいですね。おそらく戦術的なトレンドで言っても、近年はプレミア勢が先頭を走っていると思います。

 また、戦力的に充実しているうえ、インテンシティが高くて、常に90分間アグレッシブなサッカーができるくらい、フィットネスの調整の仕方、コンディショニングが整っているので、それほど大胆なローテーションを組まなくても、シーズン通してすばらしいサッカーをやりきれてしまう。その完成系が、現在のリバプールだと思っていて、そういう点では、どちらが有利かと言えば、やはりシーズン通したアベレージ的にリバプールでしょう。

 ただ、今シーズンのレアル・マドリードのラ・リーガやCLでの戦いぶりを見ていると、それほどアグレッシブではないし、ローテンポなのですが、逆にそのサッカーが論理的ではなく、言語化できないものであっても、しっかり守ってゴールを奪うことができれば勝てる、というスタイルでここまで勝ってきた。

 そういう意味では、戦術のトレンドに影響を与える可能性もありますし、それがレアル・マドリードの台頭の原動力なのだと思っています。理不尽で、説明がつかないようなことを起こせるレアル・マドリードは、とても興味深いと思いますし、そんなチームを、戦術的トレンドの視点から楽しみたいですね。

倉敷 両チームとも、ここまではアンフィールド、サンティアゴ・ベルナベウという魔法を使えるスタジアムで戦えましたが、決勝戦はフランスのパリ郊外にあるサン・ドニのスタッド・ドゥ・フランスで行なわれます。レフェリーは昨シーズンのヨーロッパリーグ決勝戦を担当したご当地フランスのクレマン・トゥルパンです。

 果たして、フランスのスタジアムで愛されるのはどちらのチームか? CLファイナルはいつも面白いのですが、とくに今回は歴史的に見ても、勝ち上がりを見ても、小澤さんがおっしゃった、人が創り出す不思議な魔法のような文化という視点から見ても興味深い。いろいろな要素が詰まった一戦です。

 どうぞお見逃しのないように。好ゲーム必至の一戦をたくさんの人に見ていただき、それから熱く語りあってほしいと思っています。

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