【驚愕】生活保護申請者の事実を歪め謝罪もしない杉並区の「不誠実な対応」と「黒い闇」

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2022年05月27日 11:00  週刊女性PRIME

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東京・杉並区役所

 東京・杉並区在住の高木さん(仮名)は、杉並区荻窪福祉事務所に生活保護の申請をする際、親族に知られたくないと扶養照会を拒否する申出書を提出。すると職員に受け取りを強く拒否され、地方に住む両親に扶養照会通知が送られてしまった。本サイトはこの“問題”について、生活困窮者の支援活動を行う『つくろい東京ファンド』の小林美穂子氏によるレポートを2度に渡り報じてきたが、ここにきて第3弾が届いた。杉並区役所、さらには杉並区長の不誠実な対応と、疑わざる得ない“黒い闇”。高木さんが3月に送った「区長への手紙」は本当に読まれているのだろうかーー

 2021年春、生活保護に伴う扶養照会(親族に援助の可否を問う通知)の運用が改善され、申請者の意思が一定尊重されるようになった。

 生活保護の申請をすると「この申請者の援助をできませんか?」という通知が親族に送られる。この扶養照会がハードルになって、生活に困っても生活保護制度を利用しない人がたくさんいることが問題になっている。

 昨年春の運用改善は、扶養照会があるために「助けて」と言えない、そんな現状に危機感を持った官僚が厚生労働省にいたことを偲ばせる。

面談室に放置された高木さん

 改善の内容は細かく設定されていて、「10年以上連絡をとっていない」「(親族が)70歳以上の高齢である」「この親族に借金がある」など、かなり具体的に示されているが、基本的には扶養照会を実施することが(1)申請者の自立を阻害する、あるいは(2)親族に援助を見込めない、ということが分かれば扶養照会は省略していいとされている。

 また、申請者が扶養照会を嫌がる場合には、特に丁寧に話を聞いて、「しなくてよい」項目に当てはまるものがないか聞き取りをするようにという助言が加わった。 

 私たちは、生活保護制度に詳しい法律家や研究者たちとともに、厚労省の通知をそのまま落とし込んだ「扶養照会を拒否するための申出書と添付シート」を作成し、扶養照会を拒む申請者の事情を福祉事務所が一目で分かるようにした。

 ところが、である。

 2021年7月、高木さん(50代)は杉並区荻窪福祉事務所で生活保護の申請をした。その際に、地方に住む両親が80代と高齢で、しかも二人ともに持病を抱えていて老々介護の状態で自分たちの生活でいっぱいいっぱいであること、きょうだいからも援助の見込みはないことを伝え、その旨を記入した申出書も持参した。

 しかし、杉並区荻窪福祉事務所はこの申出書を受け取ることすら拒否し「どうしても提出するなら保護の申請はできない」と虚偽の説明をした上、イジメのように高木さん一人を面談室に放置したりした。

 高木さんは、申請後も扶養照会の拒否を表明、懇願し続けたものの、ついに11月には地方に住む両親に扶養照会通知が送られてしまう。

 生々しい経緯については、過去記事を読んでほしい。

【実録】生活保護申請者の「扶養照会拒否の申出書」を受け取らず、照会を強行した杉並福祉事務所の冷酷

【衝撃発言】生活保護申請で扶養照会拒否の申出書を受け取らなかった、杉並区の呆れた開き直り

扶養照会は保護の要件であるかのようなHP説明

 杉並区のホームページの「生活援助」の中の「よくある質問」のページには、2022年3月末まで「保護を受けるための要件はありますか?」という質問に、「親・きょうだい・子どもなど扶養義務者からできる限りの援助を受けるようにしてください。」と、「要件」として挙げていた。

 国は、扶養照会の位置づけを「保護に優先されるもの」としており、「要件」とも「前提」とも定めていない。

 これが杉並区の認識だったのだとしたら、職員はただ上の指示どおりに動いていたのかもしれない。しかし、福祉事務所はそれを頑として認めず、事実を捻じ曲げ、矛盾だらけの答弁を議会で繰り返している。そして、話し合いを求める高木さんとも、区議や支援者とも断固として話し合おうともしない。その姿勢は徹底している。

 ここで、これまでの杉並区とのやりとりを簡単ではあるが振り返ってみたい。

■2月4日 高木さんと支援団体、複数の区議で杉並区に申し入れを行い、高木さんへの謝罪と対応改善を求める。同時に、ホームページ記載事項の誤りも指摘し、訂正を求めた。このとき、管理職は誰一人出てこず、係長が書類を受け取る。この時点での杉並区の回答は、コロナ禍を理由に「話し合いは当面不可能」とのこと。

 同日夜 東京都が都下自治体宛に「生活保護に係る扶養能力調査における留意事項について」と題した事務連絡を発出。

■2月16日 樋脇岳議員(立憲)が区議会の一般質問で質問。

「生活保護を申請した区民が親族に扶養照会をしないよう求める申出書を出したのに、区職員が受け取りを拒否したのはなぜか」それに対し、保健福祉部長の回答は「抗議、要請書への対応についてですが、今回の事案において福祉事務所は誤った対応は行っておらず、本人から謝罪も求められておりませんので、特段の対応は考えておりません」高木さんの意思とは食い違う回答だった。

■3月初旬 謝罪も、話し合いも、対応改善も拒否し、高木さんの言い分を虚偽のごとく議会で報告、回答する福祉事務所に困り果て、高木さんが区長への手紙を送る。

 同時に、ケース記録(面談の記録)の開示請求をする。

■3月9日 予算特別委員会にてくすやま議員(共産)が本件について質問。福祉事務所長が「高木さんが申出書を提出すれば扶養照会されないと誤認していたため、受け取らなかった」と説明。

■3月17日 ケース記録が届く。そこには、「扶養照会に関する申出書を持参していたが、申請時必要な書類ではないため受け取らず」と記載されており、3月9日のくすやま議員の質問に対する回答と食い違う。

 このケース記録にも高木さんが一貫して扶養照会を嫌がっていたことが明記されており、区側がたびたび「扶養照会は合意のもと実施」と話していた内容とも異なる。

■4月1日 杉並区のホームページが更新され、扶養照会の説明が修正される。

■4月中旬 3月21日に新型コロナウィルス感染症まん延防止等重点措置が終了したこともあり、樋脇岳区議より保健福祉部長へ高木さんとの話し合いを打診。部長から福祉事務所長に伝えるということに。

■4月27日 所長からの返答はなく、樋脇区議が確認のため何度も電話をかけるもなぜか常に不在。折り返しもなし。係長の一人より「所長は会いません」という伝言が樋脇区議に届けられる。

■5月9日 再び申し入れを郵送。

■5月22日 3月初旬に高木さんが送った「区長への手紙」の回答はいまだない。

区政は誰のためにあるのか?

 杉並区は一体どうして区民の声を無視し続けることができるのか。さらに区民の代表である区議会議員と話すことすら拒むのはなにゆえか。自分たちにとって不都合な事実が明らかになるのが困るからではないか、と思わざるをえない。

 区民の税金で成り立つ区政が、区民の声を聞かないなんて、許されない。これは福祉事務所だけの体質なのだろうか。それとも杉並区全体の問題なのか。

 区議会をネット中継で視ていると、どうも全体的に不穏である。何かがおかしい。そう感じるのは私だけだろうか。区議会ホームページから視聴できる議会の模様を、特に杉並区民のみなさんには是非、見てほしい。杉並区の福祉行政に関する議会の録画中継を見ているうちに、更にキナ臭い質問に行き当たった。

 堀部やすし議員や無所属の議員らが問題にしている、田中良杉並区長のゴルフコンペだ。

 堀部区議のホームページには「田中良区長は、以前より、区が補助金を支給している相手方など「利害関係者」にパーティー券を売り付ける形で、定期的に大規模な政治資金パーティーを開催してきました」との記載もある。 

 最近では、阿佐ヶ谷地域区民センター他3施設の指定管理業者選定にあたり、選定委員である区民生活部長と区長が、公用車を使って軽井沢まで行き、業者と宴会&ゴルフを楽しんでいたことが区議会で問題になっている。業者選定の日に特定の業者と一緒に同じコースでゴルフをする。しかも、この業者はみごとに選定されているのである。

 芝の上で、一体どんな会話が交わされたのだろうか。その宴会費と宿泊費は区の税金から支払われている。しかし、区側はどんな追及にも「問題はない」と質問を撥ねつけている。

 また、3月7日の予算特別委員会で富田たく議員(共産)が除草請負の落札事業者が6年間にわたり同じブロックで落札を続けていること、他にも学校の警戒業務、公園清掃など計13分野で同様の結果であることから、談合の疑いを追及したが、区側の回答は「毎年公正に入札している。この結果が不自然だとは思わない」だった。

 区議会で追及されては「問題はない」と次々にスルーされる深刻な問題の数々に、まるで昭和にタイムスリップしたかのような、あるいはどこかの独裁国家に不時着してしまったかのような錯覚に陥ってしまう。

 杉並区側が「問題ない」というこれらの問題には、もちろん多額の税金が使われている。問題ないかどうか決めるのは杉並区でも杉並区長でもなく、杉並区民だろう。

区議会での区長の発言

 話を本題に戻す。

 3月9日の予算特別委員会ではくすやま議員に加え、奥山たえこ議員も本件について質問してくれている。そのときに田中区長が口を挟んで「委員長のお許しをいただいて」と前置きして意見を述べている。発言内容には「基本的に扶養照会はする」という姿勢が透けて見え、厚労省の通知はまるで反映されていない様子だ。

 区長は最後に、こうおっしゃっている。

「ですから、一方的な言いぶんだけで議論を進める、役所が絶対悪いんだというような進め方、言い方というのは、もうちょっと配慮していただけないかなと。でないと、現場の職員が非常に精神的に追い詰められるような状況になりますから、そこは奥山委員も少し分かっていただきたいというふうに思います」

 申し訳ないが、それはこっちのセリフである。一方的に高木さんの事実を歪め、一区民である高木さんを悪者にして、話し合いからも逃げ続けているのは一体、誰なのか。

小林美穂子(こばやしみほこ)1968年生まれ、『一般社団法人つくろい東京ファンド』のボランティア・スタッフ。路上での生活から支援を受けてアパート暮らしになった人たちの居場所兼就労の場として設立された「カフェ潮の路」のコーディネイター。幼少期をアフリカ、インドネシアで過ごし、長じてニュージーランド、マレーシアで働き、通訳職、上海での学生生活を経てから生活困窮者支援の活動を始めた。『コロナ禍の東京を駆ける』(岩波書店/共著)を出版。

このニュースに関するつぶやき

  • 何も全額負担して扶養してくださいって話じゃなくて、一部負担できる部分はお願いしますよ。という話に見えるんだけど、違うの?
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