JR東海、名古屋工場が設備更新 - 在来線で初の水性塗装ロボットも

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2022年05月27日 11:02  マイナビニュース

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JR東海は、名古屋工場の報道公開を5月25日に実施した。耐震工事が完了した名古屋工場は設備が刷新され、在来線として国内初という水性塗装ロボットや自動浮上式止水板などを紹介。車両の品質向上とさらなる安全に向け、積極的な技術革新をアピールした。


JR東海名古屋工場は、1890(明治23)年に関西鉄道四日市工場として発足した。1924(大正13)年、名古屋に移転し、現在はJR東海のすべての在来線車両の全般検査や重要部検査など担当している。



施設の老朽化にともない、2014(平成26)年から耐震工事を開始し、2022年3月に完了。約450名(うち関係会社約230名)の社員が働く、同社在来線車両の修繕の要となっている。


報道公開では、最初に在来線車両向けとしては国内初という「水性塗装ロボット」の作業を見学した。車体とロボットの間に静電界(物体が電気を帯びる空間)を発生させ、塗料を車体に吸着させていく。JR東海の車両はほとんどがステンレス製で、塗装する場所は多くないが、313系やキハ25形などの先頭部分は普通鋼製であり、白い部分は塗装している。



作業が始まり、水性塗装ロボットが313系の先頭部を塗装する。水性塗料を使用すると有機溶剤が99%以上削減できるため、作業員の作業環境改善や地球環境負荷の低減が期待できるという。「アニーローリー」のメロディが流れる間に、装置が移動。作業が始まると、マットな状態だった313系の先頭部分が徐々に光沢を帯びていった。作業開始から5分程度で、左半分の塗装が終了した。


続いて、新たに導入された車体洗浄装置を見学。今回導入した装置では、車体の前面部から上部を洗う「前面ブラシ」と「肩ブラシ」を新たに追加した。従来は手作業で行っていた車両前頭部の作業を自動化し、作業員の負担軽減と人員削減を実現している。装置は6〜7名の社員で操縦し、担当者によると現場の負担はかなり減っているとのこと。



説明の後、「アマリリス」のメロディとともに装置が動き、汚れていた313系を洗浄し始めた。とくに汚れの多い行先表示器付近を前面ブラシが包み、速いスピードで回転して汚れを落としていく。洗浄を終えた313系は見違えるようにきれいになり、キラキラと輝いていた。

報道関係者はここから2班に分かれ、輪軸検査ラインの見学をスタート。輪軸とは車輪と車軸を合わせた状態のもので、これまではフォークリフトを使って4カ所の貯留庫に格納していた。



今回の改修で貯留庫を1カ所に集約し、輪軸貯留庫にリフト装置を導入。フォークリフトの免許がない作業員でも、容易に輪軸を格納できるようになったという。装置まで人力で運ばれた輪軸は、作業員がボタンを押すと移動を開始。貯留庫に入った輪軸は自動で移動し続け、所定の位置に収まった。



輪軸回転試験装置にも新たな機能が搭載されている。これまでの潤滑油の温度測定に加え、振動測定機能を追加。さらに気動車の輪軸検査も可能となり、輪軸の品質向上につながるという。


今回、とくに強くアピールされていた装置のひとつが自動浮上式止水板である。水の浮力を利用して30cm近く上昇し、重要機器類を守る。従来は社員らが手作業で止水板や土嚢を積んで対応していた部分を自動化し、社員らの負担軽減に成功した。レール一体型の自動浮上式止水板は、国内で初めての導入だという。大雨予想は、平日のみとは限らない。担当者は、「土休日や深夜であっても迅速に対応できる自動浮上式止水板の存在はとても心強い」と語っていた。



他にも、VRや乗務員扉など活用して鉄道員の労災を疑似体験できる「安全スクール」を開設。筆者も乗務員扉の狭窄を体験したが、軍手をしているし、社員の指示に従えば安全だとわかっていても恐怖を感じた。実際、人間の小指の骨と同等の強度だという竹製の割り箸を狭窄したところ、きれいに割れてしまっていた。日常的な動作であっても、思わぬところに危険が潜んでいるものだと痛感する。


名古屋工場長(JR東海 東海鉄道事業本部)の神田英樹氏は、「耐震化や自然災害への備えに加え、機械設備の更新で在来線車両の質を高めていきます。作業環境の改善や地球環境への負荷軽減に向け、努力していきたい」と語った。



見学している最中も、至るところで作業員の「●●、よし!」という指差喚呼の大きな声が響いていた。どれだけ自動化や効率化が進んでも、最後は人の目が重要であることは変わらない。新たな名古屋工場から出場した安全な在来線車両が、東海地方の暮らしを支えていくことだろう。(吉谷友尋)
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