17年連続で市場規模が縮小傾向にあるビール業界の中で、1990年代の地ビールブーム、2010年代のクラフトブーム、と年代毎にトレンドを作りながら成長を続けているのがクラフトビールだ。こうした背景を受け、世界各地にあるクラフトビールを発掘して輸入販売を行うDIG THE LINEの取締役 本間浩揮(ほんまこうき)氏は、次のトレンドとしてワイルドエールに注目しているという。
一般的にビールは、カールスバーグ研究所の「酵母純粋培養法」に基づいて、上面発酵でも下面発酵でも純粋培養された酵母を用いる。これは酵母純粋培養法によって、大量生産における味の均一化を可能としているからだが、ワイルドエールは様々な野生酵母や細菌を利用して木樽で発酵させるため、自然な酸味と、ナチュラルカーボネーション(炭酸ガス)、果物や樽による香りや味の複雑さに繋がっている。類似したジャンルとしてサワーエールがあり、同じく酸味があるが、サワーエールは一般的に乳酸菌を使用して計算のうえに酸を作るビールを指すことが多い。
来るかもポイント1-欧米の主要スタイルがIPAから変化
2010年代のクラフトビールブームを牽引したのが、「ホップ」を大量に使用したIPA(インディア・ペールエール:India Pale Ale)。そもそもIPAは、18世紀にイギリスから植民地のインドへビールを輸送する際に腐敗することを防ぐため、ビールの原材料の一つで抗菌作用があるホップを大量に使用し、アルコール度数を高めたことで生まれたと言われている。IPAの流行によって、ラガー至上主義だった多くの日本人のビールへの価値観が変化し、ラガーだけでなく、多種多様なビールに触れるきっかけとなり、クラフトビールが広まるきっかけにもなった。ただ、本間氏によると欧米ではIPAがメインストリームではなくなってきているという。
ウィズ原宿に出店しているDIG THE LINEの店舗「DIG THE LINE DOORS」では、缶・瓶ビールの持ち帰り販売のほか、タップを設けており、店内での飲酒が可能。6つ用意しているタップのうち2タップをワイルドエールにして営業しており、回転率は日々上がっているという。「日本でも必ず受け入れられる」と意気込む本間氏は、ワイルドエールの更なる普及のために尽力していくといい、まずはレストランやバーなど飲み手に直接訴求できる飲食店との繋がりを強化し、いずれは酒類小売や百貨店への卸販売も強化していく計画だ。