写真![]() ニラとスイセンの葉はよく似ているため、毎年誤食による食中毒が報告されています。ニラとスイセンの見分け方、においの違い、誤食してしまった場合の治療法などを解説します。 |
ニラの栄養素・主な食べ方・健康効果
ニラは、可食部100gあたり21kcalの低エネルギー食材です。野菜の仲間ですから、食物繊維(2.7g/可食部100g)とカリウム(510mg/可食部100g)が豊富です。さらに、カロテン(ビタミンA)は3500μg、ビタミンEが2.6mg、ビタミンKが180μg(それぞれ可食部100gあたり)とビタミン類も豊富に含まれています。※『日本食品成分表2020年版(8訂)』

ニラは強い香りを持つ野菜としても知られています。この強い香りは硫化アリルの一種である「アリシン」という物質です。
硫化アリルは玉ねぎやニンニクの香りでもあります。血液の凝固を抑制したり、動脈硬化や血栓予防に効果があると言われています。また、ビタミンB1の吸収率を高めたり、慢性疲労・筋肉疲労の解消に役立つともされています。
調理方法も様々で、餃子の種に混ぜ込んだり、汁物やもつ鍋などの具材として利用するほかに、卵とからめてフライパンで焼いたニラ玉、レバーとともに炒めたレバニラ炒めなど、いろいろな調理法で親しまれている野菜です。
ニラに似たスイセンは有毒! 嘔吐・下痢などの食中毒症状も

身近な野菜であるニラですが、実は毎年のように、ニラと間違えてスイセンを誤食してしまう食中毒事故が起こっています。
スイセンによる主な食中毒症状は、嘔吐、下痢、めまいなどです。命にかかわるほど重症化することはあまりありませんが、海外では、小児や高齢者の死亡例の報告もありますので、油断は禁物です。
なぜニラとスイセンなどと間違えてしまうのか不思議に思う人もいるかもしれませんが、スイセンの細い葉は、食用のニラやワケギとよく似ています。ニラを自分で栽培しているような場合、近くに植えていたスイセンを「ニラ」と勘違いして食べてしまう事故が多く報告されています。
スイセンの食中毒事故事例……葉だけではプロでも見分け困難
非常に近々の例として、保育園の職員が譲り受けた「ニラ」を給食に提供したところ、実は有毒なスイセンであり、園児が下痢や嘔吐などの食中毒症状を呈したという事故がありました。また、過去には、農作物直売所で販売されていた「ニラ」が実はスイセンであり、酢味噌和えにして食べたところ、食中毒症状を呈したという事故例もあります。
ニラとスイセンの見分け方のポイント…大きな違いはにおい

花が咲いていれば一目瞭然ですが、葉だけの見た目は非常に似ています。見分け方として一番有効なのは「におい」でしょう。
生の状態であれば、切り口のにおいを確認することで簡単に見分けることができます。
ニラは硫化アリルを含むため、特有のツンとした香りがありますが、スイセンはツンとした香りがありません。
スイセンを誤食してしまった場合の対処法・治療法
万一スイセンを誤食してしまった場合、30分以内に嘔吐、下痢などの症状が現れます。しかし症状は軽く、そのまま回復することが多いです。ニラは日常的によく食される野菜のひとつです。スーパーなどで購入することが多いと思いますが、家庭菜園や畑でも作りやすいので、自宅で栽培されていたり、知人から譲り受けたりすることも珍しくない野菜です。
先述の通り、ニラとスイセンは葉だけではプロでも見分けがつきにくいです。調理をする際は必ず切り口のにおいもチェックして、確実にニラであることを確認したうえで、加熱調理をするようにしましょう。
■参考
・日本食品成分表2020年版(8訂)
・食品成分データベース・野菜類/(にら類)/にら/葉/生 - 一般成分-無機質-ビタミン類-アミノ酸-脂肪酸-炭水化物-有機酸等(文部科学省)
・ココロも体も元気になる!元気の種(北海道医療大学付属薬用植物園)
・給食にニラと間違え有毒のスイセン…園児12人が食中毒(FNNプライムオンライン)
・自然毒のリスクプロファイル:高等植物:スイセン類 概要版(厚生労働省)
・自然毒のリスクプロファイル:高等植物:スイセン類(厚生労働省)
・ニラと間違えスイセン食べた男性死亡 北海道(毎日新聞)
平井 千里プロフィール
メタボ研究を行いエビデンスに則ったダイエットを教える管理栄養士。小田原短期大学 食物栄養学科 准教授。女子栄養大学大学院(博士課程)修了。前職の病院での栄養科責任者、栄養相談業務の経験を活かし、現在は教壇に立つ傍ら、実践に即した栄養の基礎を発信している。(文:平井 千里(管理栄養士))