「推し」は水や空気と同じ! 推すことの尊さを笑いながら味わえるコミックエッセイ『まめの推しごと』爆誕

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2022年05月29日 20:41  ダ・ヴィンチWeb

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写真『まめの推しごと』(まめ/集英社)
『まめの推しごと』(まめ/集英社)

 これまで有名人や芸能人のファンは、一部では「○○オタク」や「○○担当」といった呼び方をすることがあったが、昨今ではさらに「推し」という言葉を使って表現することも目にするようになってきた。「推し」の言葉とともに、推しがいることを公言する人も多いのではないかと思う。

「私がいる!」と共感の声多数――リアルな女性会社員の心情を描いた社会人コメディ漫画

 そんな中、思いがけない笑いに満ちた日常を『おばさんデイズ』で描いた人気漫画家・まめさんが、推し活(推しに情熱を注ぎファン活動すること)にスポットをあてた新作のコミックエッセイ『まめの推しごと』(まめ/集英社)を発表した。

 いつも突然、推したちはまめさんの心をとらえ彼女の生活の中心になるのだという。

何があった!?というくらい泣いたり
思いを馳せすぎて苦しんだり
突然幸せを祈ったり
とにかく情緒不安定がとまりません

 だれかを推したことがある人なら、この台詞に共感できるはずだ。

 ちなみにここで祈る「幸せ」は、当然のことながら自分の幸せではなく推しの幸せである。私もそうだが、推しのいる人は「ああ、尊い……」とよくひとりごとをつぶやいたり、本当に夜寝る前、「推しが幸せでありますように」と祈ったりする。

 推しのいる人にとって活動は日常茶飯事なのだが、暗黙のルールはある。決して推しの活動を邪魔したり、推しのプライベートを詮索したりしないということだ。まめさんはギャグテイストを保ちつつ、自身の清く正しい推し活を描写している。

 たとえば推しの誕生日、まめさんは寝る前にSNSで推しの名前をつけたハッシュタグを見て、同じ推しがいるファンたちと祝いたい気持ちを共有し、推しの親に感謝する。血縁者への感謝は推しの先祖までさかのぼり、猿にまでお礼を言う。猿までいくともはや私たち人類すべての祖先なのだが、祖先についてはアダムとイヴ説、アメーバ説もあり、まめさんはベッドの中で人類の起源について調べ始めて眠れなくなってしまう。

 このように推しはファンの探求心を刺激するきっかけをくれる存在なのだ。

 例えば筆者の推しはお笑い芸人なので、漫才・コントの歴史や推しが生まれた都道府県についてはもちろん、推しの地元を応援するためにふるさと納税にまで詳しくなってしまった。

 まめさんが推しの写真をスマホで見て「しんどい」と倒れる姿は普遍性のあるものだ。そして推しに感動したまめさんは、コンサートに行きたい、会いたいと泣く。

 彼女は推し活をしながらも推しが自分の存在すら知らないことを自覚しているし、知ってもらうことを目的とした極端な行動に出ることもない。あくまでも自分の楽しみとして、地に足をつけた推し活をして、そんな自分を客観視し、読者が楽しめるように漫画で描写しているのだ。

 あえて推しと自分との間に距離を作り、「推しのおかげで今日も頑張れる」と励ましをもらうことこそが「尊い」と呼ばれる行動なのだと、本作を読むことで実感できるだろう。

文=若林理央

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