“母親たちの物語”にサスペンス要素も 『グリーン・マザーズ・クラブ』が描いた大人の友情

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2022年06月13日 08:01  リアルサウンド

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『グリーン・マザーズ・クラブ』(写真はJTBC公式サイトより)

 Netflixで配信中の韓国ドラマ『グリーン・マザーズ・クラブ』がクライマックスを迎えた。ママ友たちの関係を描いたドラマではあるが、それ以上に複雑に絡み合った関係にサスペンス要素も加わり、回を追うごとにファンを増やしていった。


【写真】『グリーン・マザーズ・クラブ』のママ友たち


 本作の大きなテーマだったのが、話のタイトルとしても議論されている「大人でも純粋に友達になれるのか」。


 主人公のウンピョ(イ・ヨウォン)が、教育熱心な地区に引っ越してきたことから物語は始まる。前半は、子供たちをいかに良い大学に行かせるか、母親たちがあくせくする様子を描いている。そこまでの基盤作りとして様々なコンクールに出場させたり、受験のためにテレビも禁止したりと、子供の能力に母親たちは全てを捧げていた。しかしながら、子供たちに大きなストレスがのしかかり、次第に壊れていってしまう、心の痛い描写も描かれた。


 後半は、幸せに見えた母親たちの本当の姿についてフォーカスされていた。ウンピョの同級生であるジナ(キム・ギュリ)が自ら身を投げたことから、明らかにされるママ友たちの新たな実態。チュニ(チュ・ジャヒョン)は、ギャンブルに溺れた夫の代わりに子供たちの学費を稼ぐため、薬の提供と投薬に手を染めていた。ヨンミ(チャン・ヘジン)の夫で映画監督のオ・ゴヌ(イム・スヒョン)は、ジナにストーカーのような行為をしていたことが判明し、さらにヨンミは子供たちにも虐待していたことを知る。それでも、名誉のために夫を守ったヨンミだったが、最終的にはあまりにも犯罪的な行為をしていたため、夫を見放した。


 ストーリー上、浮き彫りになってくるのは、過去から繋がる関係/大人になって育まれる新たな関係だ。ウンピョとジナは学生時代からの同級生であり、フランスへも一緒に留学した仲。しかし、ウンピョが付き合っていたルイ(ロイ)がジナに心を奪われてしまったことがきっかけで、二人の関係はギクシャクしたものになってしまった。大人になって偶然同じマンションに住むことで再会する。


 ジナは好意を持って再会を喜んだ。一方でウンピョは、恋人を奪われ、自分が持っていないものを全て持っていたジナに嫉妬をしていて、再会を避けたがっていた。学生時代から何年も経っているとはいえ、目の前で元彼と友人が夫婦として現れ、子供もいて、最上階に住んでいるという現実を目の当たりにして、ウンピョは堪え難く思っていたのだ。


 ジナが命を絶ってしまったことで、ウンピョは彼女の存在の大きさと新たな一面を知ることになる。ジナは母親が精神的に疾患があり、義母ともうまくいっていなかったことや、ルイがかつて愛したレア(キム・ギュリ)と瓜二つのジナを身代わりとして結婚したこと。薔薇色に見えていたジナの人生が明らかになり、ウンピョは自責の念に駆られるとともに、死後であっても彼女の名誉を守ろうと奮闘する。進展がないと思っていた古い関係が、昔の感覚を取り戻していった。


 新たに未来へと繋がっていく関係で代表されるのはウンピョとチュニの関係である。ママたちの中でも女王的な存在で、関わらない方がいいとまで言われていたチュニ。2人の出会いも決して良いものではなく、パン屋にケチをつけているチュニにウンピョが巻き込まれた形だった。新入りとして、最初は無視をされたりしていたウンピョだったが、ウンピョがチュニの娘ユビン(チュ・イェリム)を助けたことがきっかけで、次第にお酒を交わす仲に。しかし、ジナの死によって二人は引き裂かれていく。ジナが最後に会ったのはチュニだ、という噂が広まってしまったのだ。チュニは自分が警察に捕まらないように、ウンピョの夫で刑事のジェウン(チェ・ジェリム)から距離を置くため、ウンピョとも関わりを持ちたがらなくなった。


 それでもチュニの本質を知っているウンピョは、彼女に避けられようと、信じ続けた。そして支え合い、真の友情を育んだのだ。刑事の妻として、「犯罪者」であるチュニを匿い、警察の情報を垂れ流す行為は称賛されたものではないが、友情として考えると、そこまでするウンピョにとって、チュニはかけがえのない存在になっていたことが分かる。


 他にも、ウンピョのはとこでユンジュ(チュ・ミンギョン)の夫マンス(ユン・ギョンホ)は、チュニとかつて交際していた過去があり、チュニが今も危険な仕事をしていることを知っている。それを見て居ても立ってもいられなくなったマンスは、チュニに警告するためにメッセージを送っていたのだが、それがユンジュにバレてしまい不倫を疑われてしまうのだった。


 登場人物中で一番「まとも」と言われているのは、ウンピョの夫ジェウンだろう。ウンピョの実家が火災になり、父親が他界した事件の担当をしていた刑事である。ウンピョの携帯電話には「ほぼ他人」と登録されており、仕事が忙しくてなかなか帰ってこないという印象が強かった。しかし後半になり、ジナの事故を担当するようになってからよく登場するようになった。


 靴下を脱ぎ捨てたり、ご飯はまだかと言ってみたり、反感を買うような態度ばかりだった。それでも、ジナが他界し憔悴しきっているウンピョのために、子供たちの世話をしたり、気分転換に飲みに出かけるのも咎めずに笑顔で送り出す。ウンピョが非常勤講師として仕事に復帰できると決まった時も、誰より喜んでいた。さらに、ウンピョがドンソクの教育に急に力を入れ始めた時やドンソクが言葉を発せなくなった時、彼女の教育方針を責め立てるのではなく、優しい言葉でなだめていた。そんな姿に、視聴者としては「理想的な夫」というイメージを持たずにはいられない。ギャンブルにハマって借金を抱えたり、ストーカーをしたりする夫たちがいる中で、真面目に働き妻も気にかけて家庭を明るくしてくれる存在は大きいだろう。


 「母親たちの物語」と聞くと、少しドロドロした話を思い浮かべるだろう。そこに、ちょっとしたサスペンス要素が加わって視聴者を魅了していった『グリーン・マザーズ・クラブ』。人間には表に出している顔だけではなく、裏に潜んでいる感情が少なからずあるのだと教えてくれた。そしてこれから生まれるであろう友情にも、希望を持たせてくれた。


(伊藤万弥乃)


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