【ピーナッツくん×nerdwitchkomugichan対談 『Walk Through the Stars』制作秘話の画像・動画をすべて見る】
最終調整を残すだけとなった音源を、リリース前に、ただただ大きな音で聴いてみたい。そんな趣旨で行われた集会だ。国内最大級のヒップホップフェス「POP YOURS」への出演を経て、いまシーンからの注目を一身に集めているピーナッツくんの新作が完成する瞬間でもある。
その存在を聞きつけ、我々取材班は動画の撮影と、前作『Tele倶楽部』リリース時と同様の全曲解説インタビューを事前に依頼して、集会に同席させてもらった。
当日スタジオに到着すると、一足はやくスタジオ入りしていたピーナッツくんが「こんにちナッツー!」と出迎えてくれる。
次いで、アルバムのMIX担当・玉田デニーロさんが到着。スタジオのスタッフと会話しながら、音出しの準備を進めていく。
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「ピーナッツくん!」「どーもナッツ!」。楽しげに話しはじめたnerdwitchkomugichanとピーナッツくんの2人に釣られて、スタジオの空気がゆるむ。準備もそこそこに、めいめい挨拶を交わし、しばしの談笑と近況報告。
そして──頃合いを見計らった玉田デニーロさんが「そろそろいきますか?」と一声。緊張と興奮を孕んだ空気がスタジオに充満する。「いきましょう!」と応えるピーナッツくん。スタジオの壁いっぱいを陣取るスピーカーから、アルバムの先陣を切る「Roomrunner!」のイントロが爆音で流れはじめた。取材/執筆:ゆうき 撮影:古見湖 編集/企画:わいがちゃんよねや
『Tele倶楽部』リリース直後にオファー、成功を確信させた言葉
──改めて爆音でアルバムを聴き終えて、もう本当に最高でした。まだ細かい調整があるとのことですが、ひとまず、アルバムの制作お疲れさまでした。
ピーナッツくん komugichan、泣いてたけど落ち着いたナッツ?
nerdwitchkomugichan(以下、komugichan) はあ〜〜〜危ねえ、ダメになりそうやった一瞬。
ピーナッツくん 僕もちょっとやばかったナッツ。
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ピーナッツくん 皆さん本当にありがとうございます! KAI-YOUさんどうでしたか?
──(無言であらゆる感情を噛み締めながら頷く)
ピーナッツくん やった〜!
コイデシュンペイ いえ〜い!
komugichan マジで僕みたいなピーナッツくんファンのオタクたちに泣いてほしい。泣きじゃくってほしい。あ〜まだ身体がぞわぞわするけど、落ち着いてきました。はじめましょう。
──はい。本日はピーナッツくんとkomugichanにアルバムについて、そしてすべての収録曲を解説していただこうと思うのですが、玉田さんとコイデさんにも随時ツッコミを入れていただけたらと思います。まずはピーナッツくんとkomugichanがアルバムを一緒につくることになった経緯から教えてください。
ピーナッツくん はじめて会ったのが、Age Factory(komugichanが西口直人名義で所属するロックバンド)が恵比寿のLIQUIDROOMでライブした時に、ぽんぽこさんと一緒にお邪魔させてもらった時でしたよね。あ、ぽんぽこさんが最高のライブだったって言ってたナッツ。
komugichan ぽんぽこさん、ありがとうございます、めちゃくちゃ嬉しいです(笑) 。あのライブは2020年の12月だったと思うんですが、「笑うピーナッツくん」がすでに完成してて、「Unreal Life」がもう少しでできるところだったかな。曲づくりのやりとりをはじめたのはいつだっけ?
玉田デニーロ ぽんぽこさんの夏休み配信をみんなで観てた後やから、2020年10月ぐらいちゃうかな。
komugichan それや。普段は昼過ぎに起きてるのに、皆で毎朝早起きしてね。
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ピーナッツくん 皆さん暇人ナッツね!
komugichan それで「Unreal Life」も完成して、翌年の6月に2ndアルバムの『Tele倶楽部』が出たわけですけど、その少しあとにピーナッツくんと電話してたら「次回はアルバム全曲を誰かにプロデュースしてほしいんですよねぇ」って言ってて。僕はその声色に「komugichanにプロデュースしてほしいんですよねぇ」的なニュアンスを感じたんですよ。
コイデシュンペイ 誘い受けだ。
komugichan 誘い受け(笑)。
ピーナッツくん 僕は5歳なので何を言ってるのかわからないけど、『Tele倶楽部』をリリースする前のデモ段階で、komugichanと玉田さんが熱い言葉で長文のレビューを送ってくれて。それを見て僕も納得するところがあったというか、自分の限界を感じていたところがあったんです。
もちろん2ndアルバムも当時の自分にできる全力で作った作品だけど、彼らにプロデュースしてもらえばもっと良い作品をつくれると確信したのでお願いしました。
そのあとコイデさんも加わってくれたんですが、3人が僕の音源の弱点をわかってくれてたのが今作の制作にとっては大きかったナッツ。
必要なのは「ピーナッツくんへの愛」だった コムピー結成の前日譚
──ピーナッツくんの弱点ですか。お聞きしてもいいですか?
ピーナッツくん はい。どうぞ言ってください。
komugichan 『Tele倶楽部』の収録曲はType Beat(※)がメインなのもあって、個々の曲の音圧に違いがあったりして、一つのアルバムとしての一貫性にブレがあると感じたんです。
ピーナッツくん Type Beatは難しいですね。『Tele倶楽部』をつくったあとにもうわかんなくなっちゃって。
komugichan Type Beatってお金さえ払えば世界中の美味いものがすぐに食えるみたいなことですよね。「School Boy」のビートなんてほんまにヤバいじゃないですか。
正直、僕がああいう最高峰のType Beatにクオリティで勝つのはほんまに難しい。じゃあどうやって超えるかって考えた時に、ピーナッツくんへの愛が必要だなと思ったんです。
※「〇〇っぽいビート」という意味を持つトラック/ビートの文化及び音楽制作の手法。例として「Lil Nas X Trap Type Beat」としてタイトルをつけてYouTubeで公開。それをラッパーが検索して見つけ、楽曲として利用するためにビートの売買が行われている。世界中の音楽プロデューサーや有名アーティストも利用しており、トレンドとなっている。
──ピーナッツくんへの愛?
komugichan 例えば、僕は一人で曲を作っているとき、楽曲の着地点があらかじめ決まってしまうから、そこに向かって黙々と頑張る作業になりがちで、想像の外まで飛べないんですよ。
でも今作ではピーナッツくんとたくさん話して、一緒の時間を多く過ごして──誰かと一緒に曲をつくった時の方が遠くまで飛べるんです。Type Beatは音楽的なクオリティは高いけど、そこにピーナッツくんへの愛はないから、そうやって勝つしかないと思いました。
──「ピーナッツくんのための最高のビート」を追求することで、Type Beatを越えようとしたと。そしてそれに必要なのが、ピーナッツくんへの愛だった?
komugichan はい。
ピーナッツくん 照れるナッツ。
──コムピーですね……!
komugichan ちょっと熱くなっちゃいましたが、エンタメでもありポップスでもあった『Tele倶楽部』はフィーチャリングゲストをたくさん招いていた分、オムニバス的なアルバムだったと思うんです。最終的にはすげえ良いアルバムになったんですけど。
──ピーナッツくんもいま指摘された『Tele倶楽部』の弱点みたいなものは感じていたのでしょうか?
ピーナッツくん 感じてたけど見ないようにしてました。komugichanの話に繋げると、これまで僕は、僕の一人の感覚と勢いだけで曲をつくってたんです。
それでも1stアルバムの『False Memory Syndrome』は奇跡的に上手くいったと自負してるんですが、同じノリとスタンスで『Tele倶楽部』をつくったらkomugichanが「いやそれはどうだろう」って。
komugichan すんません(笑)。
ピーナッツくん そこが僕の弱点ですね。ただ単発で勢いに任せて曲をつくっていただけで、アルバムをつくるということを、ぜんぜんわかってなかったナッツ。
komugichan もちろん『Tele倶楽部』のわちゃわちゃした感じはあの時のピーナッツくんが欲しかったものだと思うから、まったく問題ないです。その上で僕は、アルバムとしてのバランスをもう少し詰められたらもっと良くなりそうですねと伝えたんです。
ピーナッツくん 今作をつくっている時に、komugichanも玉田さんもコイデさんも僕をめっちゃ解釈してアドバイスをくれたので助かったナッツ。
ピーナッツくん「白状させられた」 さらけ出す本音と原点回帰
──3rdアルバム『Walk Through the Stars』の構想はいつからあったんですか?
komugichan ピーナッツくんが住んでいる滋賀県の景色と......
ピーナッツくん 僕は原宿に住んでるナッツ!
komugichan 失礼しました(笑)。ピーナッツくんがよく遊びに行っている滋賀県の田舎の景色と、そしてVRChatの広い世界が繋がっているイメージが構想としてありました。
ピーナッツくん バーチャルと田舎(リアル)の構図は今作全体のテーマになってるナッツ。komugichanも奈良県の田舎に住んでいるんですが、田舎に縁のある僕らにしか見えない景色があるって思っていたナッツ。
玉田デニーロ “バーチャル望郷感”ってずっと言ってたもんね。
komugichan そう。そして、あと10年から20年後にはバーチャルの世界をも懐かしく感じると思うから、その感覚も入れたいとピーナッツくんは言ってたよね。
いま多くの人にとってVRChatは未来を感じる場所だけど、VTuberであるピーナッツくんにとって、そこはある種の地元でもあるから。
──今度のワンマンツアーの最終公演の会場がバーチャルですが、そういう意味では地元での凱旋ライブにもなるんですね。
ピーナッツくん そうナッツ。楽しみにしててください!
komugichan そんな構想のもと、最初にできた曲が「respawn」です。僕とピーナッツくんと玉田さんがスタジオで顔を合わせて、セッションしながらつくりました。この曲を起点にアルバム全体の空気感や色、入れたい音を決めていったんです。
──『Tele倶楽部』までは事前にコンセプトをガチガチに固めていたと思うんですが、今回は「respawn」を軸に、楽曲をつくりながらコンセプトを固めていったんですね。
ピーナッツくん はい。それに今作について言うと、僕自身があまりコントロールしてないんですよ。これは前作までとの明確な違いです。
前作までは「ピーナッツくん」を客観的に見ることが通底するコンセプトだったんですけど、この客観視する部分を今作では3人が担ってくださったんです。だから、僕はこれまでにないほど、自分自身に素直になって曲をつくれたと思うナッツ。
komugichan ピーナッツくんを客観視して解釈する作業は僕ら3人でやってましたね。
ピーナッツくん komugichanに僕の原風景、いま見ている景色、都会じゃ感じられないもの──そして「自分のこと」を歌ってほしいと言われたのは特に覚えています。
──今作の収録曲の歌詞から、ご主人様である兄ぽこさんとピーナッツくんのストーリーを感じることが多かったんですが、そういう制作環境の変化があったからなんですね。
ピーナッツくん そうかもしれません。僕の活動は、この見た目なのでキャラクターのそれっぽい感じになるんですね。僕はそれが好きでVTuberをやっているんですが、こと音楽に関しては「自身のキャラクター性に逃げる」ということもできてしまいます。
──自分の分身に身を委ねて、自分自身という主観よりも、パブリックイメージである客観に寄る、みたいなことでしょうか?
ピーナッツくん はい。でも今作は客観の部分を3人が担ってくれるから、僕は僕自身のことに集中して......自分のことを歌うのは少し恥ずかしかったけど歌いました。今作を通して自分の中にある本音を白状させられたナッツ。
komugichan 主観と客観の話は制作中にちゃんとしたよね。これはピーナッツくんに限らない話だけど、自分のやりたいこと/ファンがやってほしいことの間をアーティストは永遠に行き来して登っていく、表現していくしかないって話。
ピーナッツくん しましたね。それで結局どんな音楽が良いんだろうって話になった時に、「絞って絞って出てくる最後の一滴にその人の人間性が表れる」ってkomugichanと玉田さんが言ってて、僕も納得したナッツ。だから今回はこれまで以上に、自分自身を反映したものをつくったつもりナッツ。
──主観と客観の話で思い出したのが1stアルバムに収録されている「Drippin' Life」です。あの曲は今作っぽいなと感じました。主観が強い歌詞ですよね。
ピーナッツくん 確かにそうですね。あの曲は僕が音楽をつくりはじめて、最初にできた曲なので、初期衝動が一番現れているかもしれません。
komugichan じゃあ今作はある種の原点回帰をしたアルバムなのかな?
ピーナッツくん そうかもしれないナッツ!
「ただ音楽が好きなんだってことを伝えたい」
──「KidsRoomMan」のリリース時に「初めて自分のために作ることができたアルバム」とコメントされていました。
ピーナッツくん&komugichan あ〜。
──あのコメントにはどのような意図や思いがあったのでしょうか。これまでのアルバムの流れや受け止められ方に何か思うところがあったのかな?とも感じて。
ピーナッツくん う〜ん、難しいですね。僕というキャラクターの客観的な見え方は、ポップとかキャッチーという受け入れられ方で良いと思うんですけど、音楽活動に関しては、ただ純粋に「音楽が好きなんだ」ってことを伝えたくて。
komugichan ピーナッツくんはヒップホップに限らず、本当に音楽そのものが好きで、好きだからこそ自分もやろうって気持ちから音楽をつくりはじめたんだと思うんですね。ピュアなので、音楽のすべてに対してリスペクトがある。
さらに彼の活動の下地には、これまで丁寧にインディペンデントで積み重ねてきた文脈があるから、言ってることにもやっていることにも中身がある。だからこそピーナッツくんとしての今があるんだけど、彼はそこまで考えてないと思うんです。でもその考えてなさが良いんだよなぁ。
ピーナッツくん めちゃくちゃ褒めてくれる!
komugichan でもこれは誰が聴いても感じ取れることだと思う。個人的に今一緒に曲をつくってるKamuiくんもこの前のピーナッツくんのライブに来てくれてたし、某ライブの打ち上げでralphくんと話してたらピーナッツくんの話題になって、彼も「ヒップホップがマジで好きなやつのラップ」って言ってたから(笑)。
ピーナッツくん いや、ほんと嬉しいですね。
──「POP YOURS」への出演もあり、着実に音楽シーンからもピーナッツくんのプロップスが高まっているわけですが、ピーナッツくんの周りの人たちは今作を聴いてどう思ったんでしょうか。デモの視聴などもしてもらったと思うんですが。
ピーナッツくん 今作はあまり聴いてもらってないんですよね。
──そうなんですね。ぽんぽこさんもですか?
ピーナッツくん ぽんぽこさんはいつも聴いてくれないんですが、僕はぽんぽこさんの曲はぜんぶ聴いてますっ!
──今日イチ大きな声ですね(笑)。今作では「PetbottleRocket」にぽんぽこさんがコーラスで参加してますし、応援しているのは間違いないと思うんですけど、やっぱり複雑な関係性ゆえなのか......素晴らしい曲ばかりですよ、ぽんぽこさん。
komugichan 僕が言うのもあれですけど、KAI-YOUの皆さんも厄介オタクですよね。
ピーナッツくんとnerdwitchkomugichanを見守った玉田デニーロの存在
──『Tele倶楽部』の全曲解説インタビューではボツ曲も相当数あったとお聞きしましたが、今回はどうでしたか?
komugichan めっちゃあるよね?
ピーナッツくん ありますね。アルバムの流れに合わないからお蔵入りになったり。あとは僕のラップがダメだなぁって自分で取りやめた曲もあります。
komugichan 歌詞を入れないまま終わったのもあるし、最後の方までつくったけどお蔵入りしたのもあるし。あと俺のビートが悪いなぁって(笑)。
ピーナッツくん そういう意味では、ビートはめっちゃつくってましたよね?
komugichan 「respawn」が出来たあとにばーっと50曲ぐらいつくって、そのうち2つを「Makeup」と「KidsRoomMan」に使ったね。残りの48のビートは全ボツです。トータルでは70曲ぐらいつくったかな。
──お互いに納得できないものはボツになったんですね。制作中に意見がぶつかったりはしなかったんですか?
komugichan なかったよね?
ピーナッツくん まったくなかったナッツ!
──玉田デニーロさんはMIX担当で、ピーナッツくんとkomugichanを一番近くで見てこられたと思いますが、制作中の2人はどんな様子でしたか?
玉田デニーロ 「これどうですか?」「あ〜いいですね!やりましょう!」「こういうのはどうですか?」「それは微妙じゃないですか?」「あ〜微妙かも!」みたいな感じで、コミュニケーションの引っかかりが無くて、すごく噛み合っていたのが印象的ですね。逆に俺がMIXの視点で「これはどう?」って提案したら「それはちゃうっすねぇ」ってなって「そうかぁ」みたいな(笑)。
コイデシュンペイ あったあった。
ピーナッツくん&komugichan ごめんなさい!
玉田デニーロ でも息がピッタリの2人だからこそ良いアルバムになったんだと思います。
特にkomugichanが「やりたいことをやる!」ってスタンスが強いので、ピーナッツくんもそれに感化されて「やんぞ〜!」ってなっているのを横で見てて「楽しそうやなぁ」って。
コイデシュンペイ お父さんだ…。
──お互いにリスペクトし合っていて、相性が良いんだなということは、お二人の今日のやり取りからも伝わってきます。
ピーナッツくん でも玉田さんがいたからこそ全曲ちゃんと仕上がったし、もらったアドバイスをもとに完成した曲もあるんです。「Youngpixar」なんて玉田さんがいなかったらできなかった曲なんですけど、これはあとの全曲解説の時にお話しするナッツ。
決死の覚悟で引き受けたプロデュース、自問自答を繰り返した日々
──komugichanはもともとピーナッツくんのファンだったわけですが、アルバム全体のプロデューサーを引き受けるにあたってのプレッシャーのようなものはありませんでしたか?
komugichan いや、死ぬかと思いましたよ。僕は長く音楽活動をやっているけれど、パソコンを使ってトラックメイクをしはじめたキャリアとしては1年も経ってないぐらいの新人だったので。引き受けたはいいけど「あ、終わったかもしれない」って何度も思ったり。
ピーナッツくん 今作はkomugichanがアルバムとしての流れをちゃんとつくってくれてたから、流れで聴いた時に「え、こんなに見えてたの?」ってびっくりしたナッツ。ありがとうございます。
komugichan こちらこそありがとう。ピーナッツくんのアルバムに泥を塗るのは絶対に嫌だったけど、でも絶対に一緒に曲をつくりたかったからプロデューサーを引き受けて、めっちゃ嬉しくて。
でも実際に作業をはじめてからは1人でずっと自問自答してました。「いけるか? 俺いけるか?」って。思い返すとほんま普通にしんどかった(笑)。
──めちゃくちゃ葛藤があったんですね。
komugichan やばかったです。今までにもHEAVEN(RY0N4さん、Lil Soft Tennisさん、Age Factoryの清水エイスケさんらが結成した関西発のコレクティブ)として出したアルバムでビートを作ったこととかはあったんですけど、今回のような大きな作品を長期間でつくったのは初で、手探りでしたし。
komugichan でも大きなプレッシャーの分だけ勉強もしたし、責任を持ってプロデュースしたからこそ、いつもの1年よりも遠くに行けてると思います。この実感を得られることが、誰かと音楽をつくる良さですね。
ピーナッツくん 僕もkomugichanにプロデュースしてもらって光栄ナッツ。
これまではVTuberとして音楽をやることの意味を意識的に繋げてたところがあって──その世界の中で試行錯誤してきたけど、今作をつくる過程で別に何も意識しなくても良いんだと思えて。それは3人の音楽家の、カッコいい生き方に触れられたからナッツ。
玉田デニーロ 嬉しい〜!
komugichan 感謝。黄金感謝龍。
コイデシュンペイ ゴールデンサンクスドラゴン。
ピーナッツくん なんか変なこと言ってる人もいますが気にしないでください。みんなの変な口癖ナッツ。
nerdwitchkomugichanの決意表明「絶対にあいつら黙らす」
──komugichanがピーナッツくんとの制作で得たものの大きさが伺えましたが、ピーナッツくん的にはいかがですか?
ピーナッツくん komugichanはこんな見た目なんですけど......
komugichan ちょっと(笑)。
ピーナッツくん いつも少年のようなピュアな心で音楽に向き合ってるから、僕も感化されて、少年のような心で曲をつくれたナッツ。あ、5歳児だけど。だからプロデュースをお願いして本当に良かったです。
komugichan 嬉しいなぁ。しんどかったのはウソじゃないけど、それ以上に楽しかったので、プロデュースさせてもらえて嬉しかったですね。それに僕はプロデューサーを引き受けた時に、絶対にあいつら黙らすぞって決めてて。
──あいつら?
komugichan 「ピーナッツくんのくせに良い曲で草」とか言うてる奴らです。あいつら黙らします。
玉田デニーロ&コイデシュンペイ (笑)。
ピーナッツくん 3人とも口元は笑ってるけど目が笑ってないナッツ。治安が悪くなってきたナッツ!
──見た目と作品のギャップは度々言われてしまうことですが、今作の意欲的な作風はこれまで以上に多くの人に届くものだと思います。改めて、アルバムのタイトルについてお聞きしたいのですが、なぜ『Walk Through the Stars』になったんでしょうか。収録曲をタイトルに使うのははじめてですよね。
ピーナッツくん 僕はいま毎日6000歩を目標に歩いているんですけど。
──2021年から2022年の年越し配信で決まった罰ゲームですね。
ピーナッツくん はい。それでいつだったか、夜に歩きながら今作のデモを聴いてたら星が見えて、その時に“Walk Through the Stars”ってワードを思いついたナッツ。
実は先にアルバムのタイトルに使うことが決まっていて、そのあとに曲のタイトルになったんですが、この「Walk Through the Stars」は、いままで言えなかった僕の本音もかなり込められた曲でして。
──いままでのピーナッツくんからすると変化を感じるというか、興味深いラインが多くて、気になっていました。
ピーナッツくん ありがたいことに、最近はVTuberとしても、音楽活動の面でも、いろいろと評価していただけるようになったんですが、でも同時に、マジでなんにもわかってくれないなって思わされることも多々あって……いや、長くなるのでこれは楽曲の解説のパートにとっておくナッツ。
──そうですね。ピーナッツくんまで治安が悪くなる前に、KAI-YOU Premiumの全曲解説にいきましょう。