【ヤキュイクキャンプ】野球の土台にもなる「ライフスキル」ってなんだ!?

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2022年06月22日 13:32  ベースボールキング

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ベースボールキング

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2021年夏休み、2022年春休みに開催し満員御礼となった『ライオンズ×ヤキュイクキャンプ』が今年の夏休みにも開催されます(8/8〜8/10@大宮、8/15〜8/17@所沢)。3日間日帰りで行われるキャンプでは、埼玉西武ライオンズOBのコーチ陣からの技術指導はもちろん、野球を通じて「ライフスキル」(生きるための技術)を向上させることを重視したプログラムに取り組みます。そんなキャンプにヤキュイクコーチとして、子ども達の指導をされている、メンタルコーチの河合さんにお話を聞きました。



■野球の土台にもなるライフスキル
——「ヤキュイクキャンプ」は、毎回満員御礼になっていますし、リピート率も高いそうですが、野球の技術を伸ばす野球塾やキャンプなどが他にもある中で、ライフスキルを主とした「ヤキュイクキャンプ」が保護者の方々から支持される理由はどこにあると思いますか?

まずは一緒にやらせて頂いている埼玉西武ライオンズさんのお名前の力が大きいというのが大前提にあると思います。その上での話になりますが、野球って挨拶や礼儀が身につくイメージがありますよね。でも野球をたくさんやっていく中で、身につくのがそれだけだとちょっと物足りない。そういった親御さんに興味、関心を持って頂けているのかなと思います。

——コーチとして参加されている河合さんから見て、毎回どういった子がキャンプに参加されているのでしょうか?

「○○ジュニア」に入れそうというレベルの子もいますし、まだ野球を始めたばかりの子もいて、技術レベル的にはバラバラで幅広いですね。

——「ヤキュイクキャンプ」では、ライフスキルを『考える力』『リーダーシップ』『感謝の心』『チャレンジ』『コミュニケーション』の5つに定義して、野球を通じてこれらを育むことを目的していると思いますが、それぞれどのようにアプローチしているのでしょうか?

まずは、初日に子ども達を集めて1時間くらいかけて、ライフスキルとはどんなものなのか、『考える力』や『感謝の心』を、自分たちの普段の行動に置き換えるとどういうことなのか?そんなふうに子ども達に考えてもらうワークショップのようなことを行います。
「打つ、投げる、走る、守る、野球の技術的なことは色々あるけれど、ライフスキルがその土台になっているんだよ。こういった土台がしっかりしていると、上に乗る技術の部分は大きくなるよね?」
そういった話を通じて、まずは子ども達にライフスキルというものを分かってもらうことから、キャンプはスタートします。

——はじめは座学なのですね。「ライオンズOBのコーチに教えてもらうために来たのになんで座学なんだよ!」とか、そんな感じにならないですか?

ずっと話を聞いてもらうのではなくて、子ども同士で二人組とか四人組で話し合ってみよう、というスタイルでやっているので、話を聞かされるだけという受け身にはならないように工夫しています。

——どんなことを話し合ってもらうのですか?

例えば「野球や日常生活のなかでどんなチャレンジができるといい?」「野球のどんなところが好き?」という問いを投げかけて、それを子ども達で話し合ってもらいます。そうすると色んな考えを言ってくれるので、座学=学校の授業みたいな感じにはならないですね。キャンプの導入部分としてみんな楽しそうにしていますよ。




■キャンプを通じて学ぶ、5つのライフスキル


——ライフスキルの5つの項目は、具体的にキャンプではどのように落とし込んでいるのでしょうか? まずは『考える力』から教えてください。

「ヤキュイクキャンプ」は埼玉西武ライオンズOBのコーチの方々とヤキュイクコーチ陣で大きく役割分担をしています。ライオンズOBのコーチ陣には基本的に技術のレクチャーを担当してもらっています。それに対して、我々ヤキュイクコーチ陣は「いま、コーチが言ったこと、どういうことか分かった?」「今のどうだった?」のような、一方的になりがちなレクチャーに対して、問いを投げかけたりしながら、考えることを働きかけたり、そんなふうにしてグラウンドの中での『考える力』にアプローチを行っています。

——ライオンズOBのコーチ陣が先生だとすればヤキュイクコーチ陣はチューターのような役割を担っているわけですね。これは普段の少年野球の現場でも取り入れることができそうですね。

そうですね。あとは「どう感じている?」「やってみてどう?」などといった問いかけも意識して行っています。それに対して「やりづらい」という返答があれば、「じゃあどうやったらいいと思う?」とまた問いかけたりとか、彼等が考える材料をどんどん与えていくような感じですね。まさに「コーチング」ですよね。

——2つ目の『リーダーシップ』についてはどうでしょうか?

リーダーシップってどうしても「キャプテン」とか「みんなを導く」というイメージがあると思いますが、「ヤキュイクキャンプ」ではどういうことを伝えているかというと、「リーダーシップってキャプテンとか副キャプテン、○○係などの役職のことではない」「どんなところにもリーダーシップはある」ということをまず伝えます。その上で、練習の時、集合するとき、コミュニケーションをとるとき、旅館にいるとき、寝るとき、などの色んな場面において「自分からやってみよう!」「周りに働きかけてみよう!」だとか、そういったことがリーダーシップなんだよということを説明します。そしてそれを意識して一日やってみようというところからのスタートです。

——キャンプ中に参加した子がリーダーシップを発揮するようになった等の変化に気づくはありますか?

もちろんありますよ。ボールを率先して片づけるようになったり、グラウンドの中で積極的に声掛けをするようになったり、そういう些細なことも我々は注意深く見るようにしていますから。「今のそれがリーダーシップなんだよ」というように、その都度本人にも伝えてあげています。時には全員を集めて「いま、○○君が率先してボールを集めていたの見た? こういうのもリーダーシップの一つなんじゃないかな?」のようにここでも問いかけてみたり。そういうことをやっています。

——3つ目の『感謝の心』はいかがでしょうか。

今の子ども達って、今ある環境があたりまえ、グローブを買ってもらってあたりまえ、と思うこともあると思うんです。まずはそれが「あたりまえ」ではないんだよということから伝えます。では「感謝」とは何かと言ったら、分かりやすく言葉にすると「ありがとう」だと思うんです。ですからキャンプ期間中はコーチ陣が率先して「ありがとう」と伝えるようにしています。

——なるほど。

例えばノックの時にボールを拾ってくれて渡してくれた子に対して、それをあたりまえのことだと思わず、我々も「ありがとう」と伝える。大人であるコーチ陣がそれを示すことで子ども達にも波及して欲しいと思ってやっています。

——4つ目は『チャレンジ』ですね。

まず子ども達には2つのことを伝えています。1つは「今までやったことがないことをやってみる」。もう1つは「今やっていることをもっとやってみる」。「この2つって『チャンレンジ』だよね?」ということを彼等に伝えることからスタートですね。キャンプを通じてやったことのないポジションをやってみるとか、それも「チャレンジ」だから、キャンプ期間中にどんどんそういったことを推奨するようにしています。
周りの仲間達に対しても、仲間がチャレンジしてみたこと自体を認めてあげよう、と伝えますし、グラウンドの中で失敗してもOKなんだ、どんどんチャレンジしていいんだ、という空気になるように意識しています。

——「いつもと違うポジションを守る」以外にも何かチャレンジしていた事例はありますか?

「ベースボールファイブ」もやるんですけど、チーム決めだったり、打順を決めるときも子ども達だけで話し合って決めるんですけど、これまで意見をあまり言わなかった子が、積極的に自分の意見を言ったりする姿などを見ると、これもチャレンジの1つですよね。

——最後が『コミュニケーション』ですね。

さっきのチーム決めの話もそうですけど、「○○がサードで、○○はレフト」のような、普段は大人がやっている部分も子ども達でコミュニケーションを取り合って決めてもらいます。
あとは、子どもと大人のコミュニケーションですね。子どもが大人であるコーチ陣にどんどん質問をする、思ったことを言ってみる。そうやってたくさんコミュニケーションをとる。そんな体験もできるようにすることも意識している部分ですね。そういったことを含めて、まわりの人とコミュニケーションがとれると野球もやりやすくなるとうことが理解できると思うんです。それはプレーにも影響出てくることですから。
「じゃあ、どんな声がけをするとみんなが元気になる?」
「どんな言葉だと勇気が出る?」
「その場の空気をよくするためにはどんな声かけがいい?」
など、そういったところまでセミナーで話して、意識させている部分ですね。

後編に続きます。



河合雄也(かわいゆうや)

外資系不動産総合サービス企業に勤務。400名の部署における教育及び研修を担当するほか、個人経営者やビジネスマン等に対してのエグゼクティブコーチングなども行っている。プロ野球、社会人野球、大学野球、高校野球、その他スポーツの個人サポートなども行っているほか、国家資格キャリアコンサルタント、一般社団法人フィールド・フロー認定スポーツメンタルコーチ、投球動作研究会副会長など、様々な分野で活動している。
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