「打たれた瞬間、脊髄反射で」 中日・福投手に「死ね」ツイート、ファン歴35年派遣社員の懺悔

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2022年06月25日 09:11  弁護士ドットコム

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プロ野球・中日ドラゴンズの福敬登(ふく・ひろと)投手(30)について、ツイッターで「死ね」「天に召されてくれないかなあ」などと書き込んだとして、派遣社員の40代男性が今年3月、侮辱の疑いで書類送検された。福投手の代理人によると、男性は福投手に謝罪し、5月24日に示談が成立したという。


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なぜ、福投手を追い詰める言葉を公の場で発信したのか。男性が弁護士ドットコムニュースの取材に応じ、胸の内を語った。



●「脊髄反射」でツイートした「死ね」という言葉

男性は子どものころから、中日ドラゴンズの大ファン。同じくファンの父親の影響を受けた。チームを応援し続けて約35年以上になるが、特定の好きな選手はいないという。



「昔から、好きな選手はつくらないようにしているんですよ。私は『ドラゴンズの勝ち』が見たいんです」



新卒カードを「適当に」使ったが、すぐにやめて、その後は派遣社員として生活する日々。ツイッターのアカウントは、約7年前に開設した。野球を観ながら、実況ツイートをすることが一番の楽しみという。



問題のツイートを投稿したのは、2021年6月13日。この日は、インターネットカフェでライブ放送を観ながら実況していた。派遣の仕事が雇い止めになり、時間的な余裕があった。





モニター前に座り、野球のライブ放送を表示しながら、実況のため、ツイッターの画面を開く。もちろん、応援するのは中日ドラゴンズだ。しかし、この日、男性が思うような結果は出ておらず、中日ドラゴンズはピンチに追い込まれていた。



「監督の判断で投手交代になり、福谷浩司投手から福投手に代わったんです。福投手は、前の年に最優秀中継ぎを受賞しているので、『今年もやってくれる!』と期待していました。しかし、この年のプレー内容に疑問もありましたし、6月上旬の試合から調子が落ちてきたようには感じていました。



投手交代に不満もありましたし、交代後、福谷投手は、手を組み、祈るようにしていたんですよ。そうしたら、福投手が勝ち越し打を打たれてしまって…ベンチでうなだれている福谷選手を見て、頭に血がのぼってしまったんです。ブツッときてしまいました」



咄嗟にツイッターで放った言葉は「福、死ね」。脊髄反射的にツイートした。



「ツイート内容は、ただの感想です。これまでも、野次のつもりで『アホ』『ボケ』『カス』などとツイートしたことはありますが、『死ね』は滅多に使わない言葉なんです」



「本当に死んでほしい」と願って「死ね」と投稿したわけではない。ツイートした瞬間は、期待が高かった分、怒りでいっぱいになった。「期待しなければ、『死ね』とは言いません。私も親に死ね死ね言われて育ってきていますから」と男性は語る。





ツイート後、「なんか言わなきゃ」と思っていた男性の視界に飛び込んできたのは、空を見上げる福投手の姿だった。そこで投稿したのが「天を仰ぐヒマがあるならば、天に召されてくれないかなあ」という一文だ。



「冗談のつもりでした。どすべりしましたけどね。福投手が嫌いだから『死ね』と言ったわけではありません。たとえ、今日打たれたとしても、明日活躍したら、『おまえはドラゴンズの宝だ』と言うつもりです。ドラゴンズの『負け』は、ドラゴンズの『勝ち』でしか上書きできません」



●福投手が被害届提出「自分のことではないと思っていた」

それから約5カ月後の2021年11月16日。福投手は契約更改後の記者会見で、打たれた試合ではおびただしい数の殺害予告が来ること、SNSに「今から殺しに行く」「嫁や子どもの亡きがら見るの楽しみにしておけ」などのダイレクトメッセージが届くことを明かした。



報道でこのことを知った男性は、「なんてことを書くんだ!」と怒りがおさまらなかった。



「選手のアカウントへのリプライや、通知がいくような形での投稿、ダイレクトメッセージで『死ね』ということは、絶対にしてはいけないと考えています。それは、『宣戦布告』じゃないですか。送っていいのは、激励だけです。叱咤もダメ。リアルな世界でも、見知らぬおじさんから、突然『あそこのコロッケ安いよ』と話しかけられたら、不気味じゃないですか。陰口は陰でしろ、と思います」





その後、福投手がSNSの誹謗中傷について、2021年11月21日付で被害届を提出し、愛知県名古屋市・中署に受理されたことが報じられた。これをみた男性は、被害届は「これまでの殺害予告に対するもので、自分のことではない」と思っていた。



ところが、2022年1月18日、男性に一通のメールが届いた。差出人はツイッター社で、仮処分命令申立書の写しが添付されていた。



当初は「詐欺」を疑った。しかし、その後に刑事告訴され、警察の取調べを受ける中で、福投手に「死ね」などと全世界に公開していることが罪になると知った。



そして、男性は3月22日、侮辱の疑いで書類送検された。



書類送検される前、男性は謝罪の手紙を福投手に送っている。福投手の代理人によると、福投手としては、一度は男性を許し、示談することを検討したものの、謝罪後も男性がツイッターでほかの選手を中傷する投稿を続けていたことから、その時点での示談を見送ったという。



その後、検察による取り調べがおこなわれ、再度男性から謝罪の言葉があったため、当事者間での示談が成立。男性は不起訴となり、現在に至る。



●「申し訳なかったとしか思えない」

現在、男性はアカウントに鍵をかけ、投稿を非公開にしている。二度と誹謗中傷はしないと肝に銘じてはいるものの、「もしかしたら、してしまうかもしれない」という不安も残るためだ。過去の投稿は、書類送検後にすべて削除した。書類送検前に削除しなかったのは、「警察にそのままにするように指示されたため」だという。



男性は、福投手への思いについて、次のように語る。



「私が書類送検されたのは、シーズン開幕の3日前でした。福投手は、大事な時期に、私の投稿のことでコメントを出さなければならなくなった。わざわざ思い出して、心を乱さなければならなくなったんです。



さらに、福投手は今年不調で、いま(取材時)二軍にいます。私の投稿が今までの不調にも影響を与えていたと思いますし、本当に申し訳なかったとしか思えません。



こちらが、どんなに福投手のプレーに文句を言ったり、野次を飛ばしたりしたところで、彼は立ち直れるわけではないんですよね。福投手は『打たれてやろう』と思って打たれたわけではなく、悔しかったと思います。その悔しさにまったく寄り添うことなくツイートしたことに対しても、後悔しかありません。



示談を受け入れてくれたことにも感謝しています。もし、私が福投手だったとして、同じ被害を受けていたら、示談は受け入れない。相手を許さなかったでしょうから」



男性は、福投手やその家族に殺害予告や脅迫などの文章をダイレクトメッセージで送った人たちに対しても「今からでも名乗り出るべきではないか」と訴える。



「『今なら、まだ間に合う』と言いたいわけではありません。ただ、直接リプライやメッセージを送っていない私でさえも、これだけ福投手を傷つけてしまいました。自分のことだけならまだしも、家族のことにまで何か言われるのは、我慢できないことだと思います」



男性は、これからも変わらずに中日ドラゴンズのファンを続けるという。チームのファンとして「(かつて山本昌投手がつけた)背番号34番といえば、福敬登という選手になってほしい」と願っている。



●福投手「誹謗中傷を少しでもなくしたい」

ネット上に軽い気持ちで放った言葉は、ときに「凶器」となる。著名人に限らず、顔が見えない相手からの心ない言葉に、心身ともに打撃を受け、人は傷つく。





福投手の代理人・萱野唯弁護士によると、福投手が法的措置に踏み切ったのは、「世の中に氾濫する誹謗中傷を少しでもなくしたい」との思いがあったためだという。



このような思いから、今回の示談には、福投手への謝罪、示談金の支払い、2度と誹謗中傷をおこなわないとの誓約が条件として盛り込まれている。今回の取材に応じることも条件の一つだった。


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