客がツッコんで完成する展覧会? ガチャの歴史を嘘で振り返る「大嘘博物館」が大阪にやってきた

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2022年06月25日 17:40  まいどなニュース

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写真ガチャの歴史を嘘で振り返る「大嘘博物館」
ガチャの歴史を嘘で振り返る「大嘘博物館」

 「カプセルトイ2億年の歴史」と題して、思いつく限りの虚構を具現化した嘘だらけの展覧会「大嘘博物館」が6月10日から梅田ロフト(大阪市北区)で始まっている。7月10日まで。

【写真】指の示す方向に進めば入り口がある、嘘のようで本当の張り紙

 これは2022年春に「ほぼ日刊イトイ新聞」を運営する株式会社ほぼ日(以下、ほぼ日)とカプセルトイメーカー「キタンクラブ」の共同企画により渋谷PARCOで1カ月半に渡って開催され、約1万人を動員し、大盛況のうちに閉会した。

 もともと巡回の予定はなく、会期終了後には全てが1点ものの展示物は廃棄せざるを得ない運命にあった。しかし展覧会の様子がSNSなどで広まるにつれ「ぜひ私の街でもやってほしい」という声が多く寄せられたという。

 ならばと、巡回先の募集がおこなわれ、多くの人がその行方を見守っていたところにもたらされた、大阪での開催決定の知らせ。待望の巡回は、どのように実現したのか。そして特別に用意されたという大阪会場限定展示とは。すべての嘘を産み出したクリエイティブディレクターの藤井亮さんをはじめ、関係者に聞いた。

実際に見て、心を決めた

 「あれは、まだ肌寒さの残る3月はじめのことでした...」

 遠い昔を振り返るようにそう話すのは梅田ロフト次長の坂崎さん。主催である「ほぼ日」とは、昨秋にも「MOTHERのひろば」を開催するなど、さまざまな取り組みを共にしてきた良きパートナーである。今年もなにか楽しいイベントを、と話し合う中で「大嘘博物館」をロフトで開催できないかと具体的な検討が始まった。

 ガチャマシンのメンテナンスなど、バックヤードも含め運営の大変さをすべて見たうえで決めてもらいたいという「ほぼ日」の山下哲さんの思いもあり、ロフトのスタッフが実際に渋谷へ来たという。そこで目にしたのは、ガチャを回したり、展示パネルをひとつひとつ丁寧に読みこむ来場者の姿だった。

 「クスっと笑える内容で『嘘』なのにどこかリアルさがある。会場を出た後も誰かと共有したくなり、それがSNS発信にもつながっていると感じた」と坂崎さん。空間を越えて楽しまれている様子に、ますます大阪開催への思いが強くなったと当時を振り返る。

「大嘘博物館」の楽しみ方

 この展示では、入場時にもらえる専用コインで場内のガチャを回して遊ぶことができる。そこで手に入るのは、特に使い道を見い出せない品々、要するにガラクタである。ただ、笑いと、藤井さんへの尊敬を誘う愛すべきガラクタがおみやげになるという点で、みうらじゅん氏の「いやげ物」を彷彿とさせる。この仕掛けに、お得感を見出す方も多いだろう。今回のために制作された凝ったつくりのコインをガチャマシンにセットし、ガリガリと回す時の高揚感たるや。

 実際にガチャを回して楽しめる。この展覧会を語る上で、大きな特徴であることには違いないが、楽しみ方はそれだけではない。設置されたガチャは、当然ながら展示内容と連動していて、1台1台のガチャを下支えする(嘘の)物語が用意されている。

 例えばこんなふうである。警官風の衣装を身に着けている女性の啓発ポスター。よーーく見ると.....。キャンペーンガールの名前が「古磯財子」。古ぃそざいこ...ふりーそざいこ!!これはつまり、フリー素材サイトの写真を使っていることを示しているのだ。

 あるいは、スクープと思われる情報を入手した。ガラスケースに収められた貴重な資料の中で、ひときわ存在感を放つ貝殻。これは「ほぼ日」の山下さんが渋谷パルコの地下にある寿司屋で貝汁を食べて入手したという、汗のにじむ逸品である。知らなければ見当もつかないことではあるが「これはどこから用意したんだろう?」という視点で見るだけでも、ずいぶん楽しめる。

 気になる大阪限定展示は、その全貌をあえてボカシておく。藤井さんによると、構想も含め、開幕の2週間前ごろから一気に作り上げたという。ガチャといえばカプセル、ガチャカプセルといえば球体...あぁなるほど、さもありなん。なんともいい塩梅で散りばめられたリアリティが、嘘を支えている。

ツッコんで完成するエンターテイメント

 こんな調子で、信じられないほど緻密に作り込まれた嘘は、パネル内にふられた小さなルビや人物写真、ガラスケースの中の大小さまざまな展示物など、会場内に存在する全てのもののすみずみまで及んでいる。あらゆるものが統一された世界観で作り込まれたテーマパークのようである。

 考えてみれば、私たちの身の回りには、夢とかフィクションという呼ばれ方をしている「嘘」で溢れている。藤井さんは「古代の石版だって、嘘彫ったろって僕みたいな人がきっといたと思います」と笑う。

 すみずみまで、すき間なく仕掛けられた嘘。藤井さんの全力のボケに、私たちはどう接するべきだろうか?それはもう、ボケられたならツッコむしかないだろう。幼い頃から吉本新喜劇を見せられ、英才教育を受けてきた関西の人間ならワケもないはず。入り口から出口までボケっぱなしの「大嘘博物館」は、入場者がツッコむことで完成する、高尚なエンターテインメントといえるのではないだろうか。

夏には東北へも巡回

 大阪での会期が終われば今度こそ廃棄では、と憂えてしまうところだが、水面下で調整が進んでいたという青森での開催決定が発表された。藤井さんは「青森にちなんだご当地モノの展示もやりたい」と意欲を見せる。さらに次があるのがあるのか、ないのか。全国にじわじわと広がっていく「大嘘博物館」に、これからもツッコむチャンスをうかがい続けたい。

◇ ◇

「大嘘博物館」@大阪
会期:2022/6/10(金)〜7/10(日)
場所:梅田ロフト 4階 イベントスペース
時間:11:00〜20:00 ※最終日は18時閉場
入場料:600円(税込)

「大嘘博物館」@青森
会期:2022/7/29(金)〜8/21(日)
場所:八食センター 市場棟1階 催事ホール
時間:10:00〜17:00
入場料:600円(税込)

(まいどなニュース特約・脈 脈子)

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