「プリクラの文化はこの先も衰えない」 25年経っても若者から愛される理由

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2022年06月27日 10:51  Fashionsnap.com

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(左)WEGO店舗にも設置された、人気の「ハルイロセカイ」で撮影したプリントシール (右)私物のプリントシール

Image by: FASHIONSNAP
1995年の誕生から25年以上が経ち、令和時代の現在も若者のカルチャーとして浸透しているプリントシール機。今年2月には「ウィゴー(WEGO)」が「若者が集える場所の提案」として、プリクラコーナー「プリパーク」を原宿竹下通り店内に設置した。スマートフォンのカメラアプリが普及してもなお支持され続ける理由はどこにあるのか。プリントシール市場で圧倒的なシェアを誇るフリューに聞いた。

「プリント倶楽部」から始まったプリントシールの歴史
 プリントシール機は1995年にアトラス(現セガグループ)が「プリント倶楽部(プリクラ)」を発表して以降、テレビなどでも取り上げられるようになり市場が急拡大。日本アミューズメント産業協会の調査によると、1997年には1000億円(アミューズメント施設 プリ機売上高)を超える市場規模に成長した。参入企業が相次いだことを背景に、各社はTシャツやテレホンカードにも印刷できるサービスを取り入れるなど、差別化を図るための施策が裏目に出て、一時は市場全体の売上が落ち込んだものの、全身が写る機種や落書き機能の登場により復活。現在も若者のカルチャーの一つとして「プリを撮る」ことが定着している。マクロミルの調査(2020年6月実施)によれば、プリントシール機で撮影経験のある女子高生の割合は97.9%だったことから、プリントシール機は学生時代の欠かせないアイテムの一つとなっていると言えるだろう。

 フリュー(当時はオムロン)が参入したのは、プリントシール市場がレッドオーシャン化した1997年。顔認証技術が同社の強みだったが独自路線を打ち出すべく、撮影した写真を似顔絵にできる「似テランジェロ」を第1号機種として開発したが失敗に終わった。この経験を糧にマーケティングを強化。女子高生に週1回のヒアリングを繰り返し、現在も年間200回以上のグループインタビューを実施している。実際に製品としてリリースされるまでに最低1年を要することから、意見をそのまま反映するのではなく、もともと“ギャル”だったメンバーが多く在籍する企画チームが女子高生のマインドを維持し、1年後のトレンドを見据えながら開発を行っているという。これが奏功し、最近では「#アオハル」や「メルル(Melulu)」シリーズ、「ハルイロセカイ」といったヒット機を続々とリリースしている。現在のプリントシール機設置台数シェアは94%(2021年夏同社調べ)とほぼ独占状態にある。同社の2022年3月期のプリントシール事業の売上高は75億7600万円。

スマホのカメラアプリにないプリントシールの魅力
 25年以上にわたるプリントシール市場の歴史の中では、スマートフォンの浸透とともにスマートフォンカメラの高機能化と写真アプリの進化もあった。「写真撮影」という目的は共通でありながら、なぜプリントシール文化は今も若者の身近な存在であり続けることができているのか。同社広報部の疋田裕貴氏はプリントシール機の強みとして「盛れる」「遊び」「記念」の3つの要素を挙げる。
 「盛れる」機能はフリューのプリントシール機最大の特徴。これが、メイクに興味を持ち始める女子高生にとっては欠かせない要素になるという。「メイクへの関心が深まる女子高生は、“顔を盛る”ということへのこだわりが他の年代よりも強い。スマートフォンのカメラアプリは自撮りなので“盛る”ためのテクニックが必要ですが、プリントシール機は写真スタジオのような高機能の設備が整っているので、間違いなく“いい環境”で撮れますし、全自動で可愛く盛ることができるのはプリントシールの魅力の一つと考えています」。
 一つの箱に入って撮影する、というのもプリントシール機ならではの体験だ。「一緒に皆でポーズを考えたり、プリントシールを撮ること自体が楽しみになっているという声を聞きます。近くのアミューズメント施設に行けば体験できるという身近な遊びの場になれたことも、カルチャーとして定着できたことにつながっていると思います」。
 そして、そういった体験から得られる楽しみは卒業シーズンや出かけた際の記念にもなる。「思い出を可愛く残せる。撮ってその場ですぐシールが出てきて思い出を持ち帰ることができるというのは、カメラアプリにはない体験。デジタル上の画像と違って、シールをスマートフォンケースの背面に入れたり、今はアクリルキーホルダーを自作したり、目に入るところに貼ったり飾ったりして楽しむ方が多いです。ふとした瞬間に目に入ってその時の思い出を振り返ることができるのも、プリントシールならではの魅力と捉えています」。

時代に合わせてプリ機も多様化
 女子高生のメイクへの探究心や“盛りたい”という心理は25年以上経っても変わらないが、多様化が進み、憧れの対象や好みの幅が広がったことは当時とは環境が大きく異なる。「1990年代〜2000年代前半はテレビが主な情報源。まさに安室奈美恵さんや浜崎あゆみさんといった“なりたい”憧れの対象が一極集中していましたが、今はSNSやウェブから情報を自分で取捨選択して、欲しいものだけ取り入れる時代。憧れの対象も多様化しています」。
 こうした時代の流れに合わせて、プリントシール機もひとつのトレンドに傾倒するのではなく、例えば「韓国風」「きれいめ」「ナチュラル系」などさまざまなニーズに応えられるように、機種ごとに全く違うテイストを用意するなど進化させてきた。「盛る」ためのレタッチ機能も、顔や目の大きさを変えられるだけではなく、涙袋を含むアイメイクからリップメイクまでバリエーションを拡大。今年2月にリリースした「ハルイロセカイ」では一人ずつ好みの顔に仕上げられるように異なる加工を施すことができる機能を搭載したほか、透明なシール台紙を選べるようにした。

 デジタルの普及に伴い、昔のようなシールの交換はほとんど行われず、撮影後にダウンロードしたプリントシールの画像をSNS上で公開するのが現代の主流。SNSの世界観に合わせるために、落書きブースでは落書きを行わず、使われるのはレタッチ機能のみということが多かったという。
 しかし最近では平成のギャルカルチャーの回帰もあって「平成プリ」という名前が使われているように、派手に落書きをするプリントシールがトレンドになりつつある。撮影後にアプリでわざわざ落書きを施す人も増えているという。疋田氏は「コロナの外出制限で思うように遊べなかった背景から、Z世代の女の子たちは体験自体に価値を置くようになりました。そこにY2Kのトレンドの流れも相まって、平成時代のギャルがやっていたようなプリントシールに落書きをするという楽しみ方が広がっているのかもしれません」と分析する。
「友達同士のつながりが希薄化」 アフターコロナが大きな壁に
 「女子高生のプリントシール機で撮ることへのモチベーションは高い。それは昔から変わらないですし、衰えないと思います」と語る疋田氏。最大の懸念点は新型コロナウイルス感染拡大の影響だ。緊急事態宣言や行動規制が出されたことでアミューズメント施設や、「ガールズミニョン(girls mignon)」「モレルミニョン(moreru mignon*)」といった同社のプリ機専門店は一時休業を余儀なくされた。外出が緩和されてからは少しずつ回復しているが、友達同士のリアルな関わりが希薄になったことで「プリを撮る」というイベントからも足が遠のいてしまっていると感じているという。
 「プリントシールは友達との大切な思い出を残したり、一緒に時間を共有するというベースがあったからこそ文化として残ってきたので、今後も若い子たちには一緒に出かけてもらってプリを楽しんで欲しいとは思っていますが、まだ客足が戻りきっていないというのが実感としてあります」。
 実際に、2021年度のプレイ回数は前年比で10%増と伸長したが、2019年度比では30%減と苦戦した。同社は集客の施策として、季節にスポットを当てたプロモーションを計画。「プリを撮る」楽しみを一度体験してもらうことでリピート利用につなげたい考えだ。
 6月下旬から設置を開始する「可愛い」がテーマの最新機種「ルートミー」では、従来の機種にはないリングライトも置き、プリントシール機での撮影自体を楽しめるようにした。また、ワンタップで好みのデザインを選べる新落書き機能に加え、「プリコピー機能」では落書き前に撮影画像をコピーしてネオンペンで落書きして「平成プリ」を作れるようにするなど、顔だけではなく落書きも「盛る」ことを楽しめる新たな機能を搭載している。

 全国に33店舗を展開(※今年3月末時点)している同社運営のガールズミニョンの店舗網も拡大する方針。アミューズメント施設が減少している地方でもプリントシールが楽しめるよう、今後も地方を中心に出店を進めていくという。メイクブースやヘアアイロンの貸し出しなどのサービスも提供する予定。立地環境に合わせて物販にも力を入れていく。
 なお、同社が6月20日に発表した5月度のプリントシール事業の売上高は4億3700万円を計上。前年同月から54.4%増と、前月に続いて大きく伸長した。プレイ回数も同41.1%増の271万回に増加するなど好調に推移している。「シェアナンバーワンとして今後も楽しい機種作りを継続していきます。そして、もっといろんな女の子たちの青春に寄り添っていきたいです」と疋田氏。アフターコロナ以降の回復に期待がかかる。

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