【全ドライバー独自採点/F1第9戦】満点ふたりのハイレベルな週末。年齢はデメリットにならないと証明したアロンソ

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2022年06月27日 13:00  AUTOSPORT web

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2022年F1第9戦カナダGP フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)が予選2番手を獲得
長年F1を取材しているベテランジャーナリスト、ルイス・バスコンセロス氏が、全20人のドライバーのグランプリウイークエンドの戦いを詳細にチェック、独自の視点でそれぞれを10段階で評価する。

 予選はウエット、決勝はドライコンディションで行われた2022年F1第9戦カナダ。シャルル・ルクレール(フェラーリ)はパワーユニット交換によりグリッド降格ペナルティを受け、優勝争いに絡めず。マックス・フェルスタッペン(レッドブル)がカルロス・サインツ(フェラーリ)とのバトルの末に、シーズン6勝目を達成、フェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)のフロントロウ獲得も大きな話題となった。カナダGPでのそれぞれのドライバーたちの戦いぶりを、バスコンセロス氏が振り返る。

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■評価 10/10:ほぼ完璧なフェルスタッペンと真価を発揮したハミルトン

 モントリオールは100パーセントの集中力とコミットメントを要求されるコースで、ほんの小さなミスが取り返しのつかない結果をもたらす。そんな難しいコースで、ほとんどのドライバーが高いレベルの走りを見せた。

 マックス・フェルスタッペン(レッドブル)はほぼ完璧な週末を過ごした。ウエットコンディションで優れた走りを見せ、スタートからレースをリード。タイヤのデグラデーションにより2回ストップを採らざるをえなかったが、カルロス・サインツがすぐ後ろまで迫った際に全くミスをすることなくポジションを守りきって、勝利を手にした。

 自身のF1初勝利の地で、ルイス・ハミルトン(メルセデス)は今も世界最高のドライバーのひとりであることを証明してみせた。金曜に行ったセットアップの実験はまるでうまくいかず、ハミルトンはウエットコンディションでゼロからやり直さなければならなかった。その後の予選で4番手を獲得。さらに日曜にはそこから見事な走りで表彰台をつかんだ。終盤のリスタートでは、明らかに劣ったマシンで、フェルスタッペンとサインツにしばらくついていった。


■評価 9/10:後輩たちを驚かせたアロンソ

 グリッドペナルティさえなければ、シャルル・ルクレール(フェラーリ)は優勝争いをしていただろう。しかしパワーユニット交換で最後列に降格され、決勝はそこからポジションをいくつ上げられるかの戦いになった。リヤタイヤのデグラデーションが大きかったことがポジションアップに響き、タイヤ交換で時間がかかったことで4つポジションを失った。そういったことがなければ、終盤ジョージ・ラッセルから4位を奪えたかもしれない。

 若いドライバーたちはフェルナンド・アロンソ(アルピーヌ)の予選での速さにびっくりしたはずだ。ウエットの予選で2番手を獲得、決勝ではエンジンがパワーを失い始めるまでは3番手を走っていたのだ。彼が全盛期だったころのようなパフォーマンスであり、F1で年齢はハンディキャップにならないということを強く示したといえるだろう。終盤のバルテリ・ボッタス相手のディフェンスでペナルティを取られたが、それがなければ満点をつけていた。


■評価 8/10:悩み続けたサインツが、ついに突破口を見つける

 これまでマシンに悩まされてきたカルロス・サインツ(フェラーリ)は、カナダの週末で突破口を見つけた。クラッシュを恐れずにアタックできるようなF1-75のバランスをついに見出したのだ。今回、ルクレールが下位スタートとなり、サインツは優勝する最大のチャンスを手に入れた。その目標達成まであと一歩のところまで近づいたサインツだが、ふたつの小さな、しかし決定的なミスを犯した。ひとつはQ3最後に最終シケインで行き過ぎてしまい、ポールポジションのチャンスを逃したことだ。あれがなければ最低でもフロントロウは確実だっただろう。そして決勝で最速だった彼は、最後の2周にアタックするなかで、最終ラップのヘアピンで深く突っ込みすぎてしまい、フェルスタッペンにチャレンジすることができなかった。今のF1はレベルが非常に高く、優勝するにはすべてを完璧に進める必要がある。サインツにはまだ改善の余地があるといえるだろう。

 ジョージ・ラッセル(メルセデス)はハミルトンより良い金曜を過ごすことができたことから、予選でもチームメイトを上回るかと思われたが、欲張ってスリックに交換したことで、スピンを喫し、グリッド4列目にとどまった。レースでは自分より遅いマシンを早い段階で抜き去ったものの、決勝日にはハミルトンほどのペースはなかった。

 周冠宇(アルファロメオ)はこの週末のスターのひとりだった。初めて走るモントリオールの予選で、バルテリ・ボッタスを破ってQ3に進出、セーフティカーが不利に働かなければもっと素晴らしい結果を出していたはずだった。それでもここまでのキャリアでベストの結果を達成、アルファロメオに8点を持ち帰った。


■評価 7/10:ミックにとって今季ベストの週末

 バルテリ・ボッタス(アルファロメオ)によると、セーフティカーが有利に働いたのはキャリアのなかでこれが初めてだという。それもあったが、安定した走りで7位を手に入れた。予選では期待したほどの結果は出せなかったが、それは今回もまた金曜プラクティスのひとつを丸々走れず、ベストな準備ができなかったことも影響しただろう。

 今回は、ミック・シューマッハー(ハース)にとって今シーズンここまでで最高の週末だった。ウエットの予選で速さを見せて、ここまででベストのグリッドを獲得。レースでは自分より速いマシンとは戦わず、ポイントフィニッシュを目指していた。しかし不運にもフェラーリ製パワーユニットのトラブルで、リタイアしなければならなかった。

 ミックの師匠セバスチャン・ベッテル(アストンマーティン)も、その走りにふさわしい結果を得られなかった。ウエットコンディションのFP3では3番手と輝いてみせたが、予選ではチームが最適なタイヤ内圧に設定しなかったことで、Q1で敗退した。さらに決勝5周目にピットインさせられて後方に落ち、序盤のバーチャル・セーフティカー時に2度目のタイヤ交換を行ったものの、それが状況の大きな改善につながることはなかった。その後、レース後半のセーフティカー時はステイアウトして非常に長いスティントを走ることになり、不可解な2回ストップ戦略により、ポイント獲得のチャンスをつかめずに終わった。

 ダニエル・リカルド(マクラーレン)は、入賞こそできなかったが、非常にポジティブな週末を過ごした。ウエットコンディションで速さがあり、9番グリッドからスタート。しかし決勝でのマシンには十分なペースがなく、しかも最初のピットストップでタイムとポジションを失った。それにもかかわらず、ポイント獲得まであとひとつのポジションでフィニッシュした。

 アレクサンダー・アルボン(ウイリアムズ)は予選Q2に進出。さらにレースでは序盤17周にわたってボッタスから非常にうまくポジションを守って走った。ボッタスについに抜かれた後、アルボンの1回目のピットストップのタイミングは悪く、その後は苦しむことになったが、最後のセーフティカー後はペースが良く、10番手争いに加わることができた。


■評価 6/10:決勝で挽回、アロンソへのサポートも行ったオコン

 エステバン・オコン(アルピーヌ)は週末を通してメカニカルグリップの不足に悩まされていた。予選ではアロンソほどの速さがなかったが、決勝では良い戦略で走り、アロンソにトラブルが発生したことで、6位という強力な結果をつかんだ。レース終盤、アロンソの前を走行していた際に、ペースを上げて遠ざかっていくのではなく、アロンソを助けるためにDRSを使える位置にとどまり続けたことを、チームは賞賛している。

 ランス・ストロール(アストンマーティン)は週末を通してベッテルよりはるかに遅かった。ストロールが好んでいるウエットコンディションでも、今回は輝くことができなかった。だが、レースでは優れた戦略で走ったことで10位を獲得、1ポイントをつかんだ。それでもアストンマーティンが新パッケージを導入して以来ずっと、ストロールはベッテルとのパフォーマンス差に苦しんでいる。


■評価 5/10:ガスリーと角田は不利な状況から挽回できず

 ピエール・ガスリー(アルファタウリ)と角田裕毅(アルファタウリ)は、決勝前の時点で不利な状況に陥っていた。ガスリーは予選でブレーキの問題に見舞われ、ひどい結果に終わった。角田は再びパワーユニットエレメントを交換したために最後尾スタートが決まっていたのだ。決勝を通してガスリーにはペースがなく、思うようにポジションを上げられずに終わった。角田の方は10番手争いに加わることができたにもかかわらず、ピットから出てきた瞬間にクラッシュしてしまった。

 ランド・ノリス(マクラーレン)にとっては不運な週末だった。パワーユニットの問題により14番グリッドからスタートすることになり、ピットストップがうまくいかなかったことで、ポイント獲得のチャンスを失った。それ以前から今回ノリスは好調だったとはいえず、特にウエットではリカルドほどの速さがなかった。

 この原稿を予選後に書いていたとしたら、ケビン・マグヌッセン(ハース)には最高点をつけていたところだ。予選5番手という結果は素晴らしかった。だが、決勝1周目にハミルトンに仕掛けた大胆な動きは成功する見込みのないものだったし、マシンの破損によりブラック&オレンジフラッグが提示されてピットインを命じられたのは仕方のないことだ。ルーキーではないのだから、1周目に無謀な動きをするべきではない。ドライコンディションでハースのマシンにメルセデスと戦う速さがなかったのは明らかであり、1周目はポジションキープでレースを戦っていれば、ポイントを獲得できただろう。


■評価 4/10:マシンに手こずっていたペレス

 今年素晴らしいパフォーマンスを見せてきたセルジオ・ペレス(レッドブル)だが、カナダでその勢いを維持することはできなかった。フロントエンドが強いマシンに手こずり、予選Q2ではクラッシュ。決勝では、マグヌッセンがピットインを強いられた後に10番手に繰り上がったが、ギヤボックスが壊れ、リタイアとなった。

 ホームグランプリでのニコラス・ラティフィ(ウイリアムズ)は、今までのグランプリより多少は良かったが、今回もアルボンのペースにはまるでおよばず、週末を通して、トラブルに見舞われていない者のなかで最も遅かった。


■全ドライバー評価/F1第9戦カナダGP(10段階)

評価 10/10
マックス・フェルスタッペン:予選1番手/決勝1位
ルイス・ハミルトン:予選4番手/決勝3位

評価 9/10
シャルル・ルクレール:予選15番手/決勝5位
フェルナンド・アロンソ:予選2番手/決勝9位

評価 8/10
カルロス・サインツ:予選3番手/決勝2位
ジョージ・ラッセル:予選8番手/決勝4位
周冠宇:予選10番手/決勝8位

評価 7/10
バルテリ・ボッタス:予選11番手/決勝7位
ミック・シューマッハー:予選6番手/決勝リタイア
セバスチャン・ベッテル:予選17番手/決勝12位
ダニエル・リカルド:予選9番手/決勝11位
アレクサンダー・アルボン:予選12番手/決勝13位

評価 6/10
エステバン・オコン:予選7番手/決勝6位
ランス・ストロール:予選18番手/決勝10位

評価 5/10
ピエール・ガスリー:予選16番手/決勝14位
角田裕毅:予選20番手/決勝リタイア
ランド・ノリス:予選14番手/決勝15位
ケビン・マグヌッセン:予選5番手/決勝17位

評価 4/10
セルジオ・ペレス:予選13番手/決勝リタイア
ニコラス・ラティフィ:予選19番手/決勝16位

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