アウディのマグナス、ヒョンデのアズコナが勝利。リンク&コー陣営はBoPに不満爆発/WTCR第4戦

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2022年06月28日 13:31  AUTOSPORT web

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レース1は予選ポールポジションを獲得したジル・マグナス(Comtoyou Team Audi Sport/アウディRS3 LMS 2)が、ロブ・ハフ(CUPRA Leon Competición TCR)からの猛攻を凌ぎ"ライト・トゥ・フラッグ"でシーズン初勝利
6月25〜26日にスペインのモーターランド・アラゴンで開催されたWTCR世界ツーリングカー・カップの第4戦、実質的な第3戦は、予選ポールポジションを獲得したジル・マグナス(コムトゥユー・チーム・アウディスポーツ/アウディRS3 LMS 2)が、ロブ・ハフ(ゼングー・モータースポーツ/クプラ・レオン・コンペティションTCR)からの猛攻を凌ぎ“ライト・トゥ・フラッグ”でシーズン初勝利を達成。続くレース2はセーフティカー(SC)も発動する波乱のなか、ミケル・アズコナ(BRCヒョンデN スクアドラ・コルセ/ヒョンデ・エラントラN TCR)が地元戦を制し、今季3勝目を手にしている。

 7月頭のポルトガル・ヴィラレアル市街地ラウンドを控え、イベリア半島初戦となった第4戦は、週末の予報で気温30℃超えが予想されるなど、世界的な猛暑による過酷なコンディションでのレースが想定された。

 また、2023年に共通ハイブリッド機構の導入を計画するTCR規定ツーリングカーは、その最高峰たるWTCRとTCR規定派生のフル電動シリーズ、FIA ETCRことeツーリングカー・ワールドカップとの本格的な併催に向けカレンダー統一の動きが噂されるなど、早くもパドックでは来季に向けた動きが活発化している。

 そんなスペインでの1戦を前に、引き続き最多となる40kgのコンペンセイション・ウエイトを搭載するホンダ・シビックに加え、新たにアウディとリンク&コーにも10kgのウエイトが追加されることに。また、TCRの権利保有者であるWSCグループは、週末に先立ち車両技術規則の“グレーゾーン”を明確化する速報を発行し、サスペンションのスプリングに関する規約を明文化。

『スプリングはスチール製のリニアコイルで、ヘルパーは直列の1個まで』とされ、リバウンドスプリングの使用は禁止。さらにバンプストップやバンプラバー、パッカーの材質なども明確化された。

 これに対し、2021年を通じて第2世代モデル本格カスタマーデリバリー前の開発作業を続けてきたアウディ陣営からは「特定のダンパー設定を中心にクルマを開発してきたが、今ではすべてが変わった。またゼロからふたたび開発しなければならない」との声が挙がるなど、開発時間の浪費について懸念が表明される状況となった。

 そうした不穏な空気も漂うなか始まったセッションは、最初のプラクティスを元世界王者の好調ハフが制し、続く2回目は現役王者ヤン・エルラシェール(シアン・レーシング・リンク&コー/リンク&コー03 TCR)が最速タイムを記録する。

 しかし予選では直線速度の不足に苦しむチャンピオンがブレーキングでロックアップし、ターン12ではオーバーステアを抑え切れず0.323秒差の3番手、こちらもQ3で激しいプッシュを見せたハフは0.460秒差の4番手と、ともにセカンドロウ止まりに。

■マグナスが薄氷のポール・トゥ・ウイン

 その2台を打ち負かしたのは“スプリング規約騒動”で反応を見せたアウディ陣営のコムトゥユーで、セクター3で華麗なスライドコントロールを披露したマグナスが、僚友ナサニエル・ベルトン(コムトゥユー・DHLチーム・アウディスポーツ/アウディRS3 LMS 2)を0.195秒差で降し、今季初のポールポジションを射止めてみせた。

「このQ3は本当にメンタルゲームだ。僕らも集中力を維持する必要があったが、今回はそれを上手くやり遂げることが出来たよ。フリープラクティスの後にはこの結果を予想していなかったから、素晴らしいことだね」と、予選後に振り返ったマグナス。

 明けた日曜午前11時過ぎに始まったレース1は、オープニングのターン1に向けアウディの背後から2列目の猛者たちが仕掛けると、ベルトンとの攻防を強いられたエルラシェールらを出し抜き、ハフがターン2までに2番手へと進出する。

 ベルトンとの接触後にペースを落としたチャンピオンは、5番手発進だった“叔父”イヴァン・ミューラー(シアン・レーシング・リンク&コー/リンク&コー03 TCR)や、依然としてウエイト0kgを継続するアズコナとノルベルト・ミケリス(BRCヒョンデN スクアドラ・コルセ/ヒョンデ・エラントラN TCR)にも先行を許すことに。その一方、首位追撃に入ったハフは首位マグナスとのギャップを詰めていく。

 終盤に向け各陣営はポジション争いを繰り広げながらも、第2戦ニュルブルクリンクでコントロールタイヤに発生した「安全上の懸念」や、猛暑のコンディションなども勘案し「タイヤのケアとマネジメントを意識する」よう指示。最終的に0.393秒差のギャップで16周を走破したマグナスが薄氷のポール・トゥ・ウインを決め、2位ハフの背後には4周目に4番手まで上がってきた地元アズコナを抑え切り、ベルトンが続く表彰台となった。

 一方、5番手スタートながら“甥っ子”に道を譲り7位に終わった帝王ミューラーは、オープニングのバトルで一時順位を上げたものの、すぐさま背後のヒョンデ勢にオーバーテイクを許すなど、性能調整による明らかな戦力差に不満を表明した。

「悪いスタートではなかったし最善を尽くした。しかし、アウディをストレートで追いかけることは不可能だったし、ヒョンデでさえ『彼らが望むときだけ』ストレートで速く、それはかなり奇妙な感じだった。だがまあ良い。4台並んだ我々のクルマを、アウディはストレートで全部抜いていったのは事実だ。それでも7位でいくつかのポイントを獲得出来たんだからね」と、フラストレーションを募らせたミューラー。

■“地元の英雄”アズコナがリンク&コーとクプラを仕留めて優勝

 一方、ベルトンとの接触で6位に終わった"甥っ子"のチャンピオンも、マナーやBoPを含め「こうなるともはや、ツーリングカーではない」と不満を露わにした。

「ツーリングカーでの接触はレースの華だ。でも、相手を押しやり、ふたつも3つもポジションを失わせるのは公平ではない。ハコ車では何らかの接触が必須だが、それは接触ではなく衝突だよ」と続けたエルラシェール。

「予想どおりタフで難しいレースだった。僕たちよりもはるかに軽量で、パワーが2.5%高いクルマが相手では、このような状況で追いつくのは困難だ。明らかに直線速度の不足に苦しんでいるが、あまり政治に参加したくはないからね」

 続いてリバースグリッド採用のレース2では、今季復帰組のマ・キンファ(シアン・パフォーマンス・リンク&コー/リンク&コー03 TCR)との勝負でミケリスがターン1のタイヤバリアに接触。「アウト側から丘を登ったら、リヤがヒットした。どういう状況か映像で確認が必要だが、その後はクルマがまったく応答しなくなった」と語ったミケリスに加え、その背後にいたトム・コロネル(コムトゥユー・DHLチーム・アウディスポーツ/アウディRS3 LMS 2)が巻き添えの憂き目に遭い、ここでSCが導入される。

 3周目のリスタート後は、ダニエル・ナジー(ゼングー・モータースポーツ/クプラ・レオン・コンペティションTCR)がマ・キンファをかわしてリードを奪うと、5周目には“地元の英雄”アズコナがリンク&コーとクプラを仕留めて首位へ。その背後では、僚友をパスしたハフがふたたび2番手に上がってくる。

 そのままリーダーとのギャップを縮めたハフだったが、12周のチェッカーまでに前に出ることは叶わず。アズコナが今季3勝目を挙げ、イギリス出身の元世界王者が連続の2位表彰台、3位にはナジーを攻略したサンティアゴ・ウルティア(シアン・パフォーマンス・リンク&コー/リンク&コー03 TCR)が続くポディウムとなった。

 この結果「ここでは苦戦すると予想していたが、それよりは良い戦績を得ることができた。引き続き、この水準で仕事を続けていくしかないね」と語ったアズコナが129点でランク首位に立ち、29点差でマグナス、33点差でウルティアが追う展開となった2022年WTCRシーズン。続く第5戦は、前述のとおり7月1〜3日の連戦開催となるポルトガル・ヴィラレアル市街地サーキットでの1戦が待ち受ける。

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