「診療ガイドライン」にはわかりやすい解説書がある…健康情報を読み解く【京大・准教授に聞く】

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2022年06月28日 20:50  ウートピ

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メディアで耳にする健康情報に関わるキーワードについて、京都大学大学院社会健康医学の准教授で、精神科指導医・専門医でもある田近亜蘭(たぢか・あらん)医師に連載でお話しを聞いています。前回の「診療ガイドラインって何? 前編」に続き、今回は、医師向きの「診療ガイドライン」には、一般向きのわかりやすい解説書もあるという情報について紹介します。

医学会作成の一般向き病気別解説書が公開されている

——前編では、医師ら医療関係者を対象にした診療についての手引書「診療ガイドライン」があるということ、それには「病気の治療法の推奨度」が示されているということでした。

その診療ガイドラインは、「Minds(マインズ)」という団体(厚生労働省による、エビデンスに基づく医療の普及推進を行う)が運営するウェブサイト「Mindsガイドラインライブラリ」で検索したり、一部は閲覧できたりするとのことでした。

そこで、田近先生が作成委員会の委員だという『統合失調症薬物治療ガイドライン』(日本神経精神薬理学会)を検索してみました。Mindsでは旧版の2017年版が公開されていて、ネット上で誰もが読むことができるようになっています。

田近医師:最新版は『統合失調症薬物治療ガイドライン 2022』として、2022年5月に日本神経薬理学会のウェブサイトで公開されています。ただ、最新版のほうはMindsのサイトにはまだアップされていないようです。どの診療ガイドラインでもそういうこともあるので、Mindsで「旧版」しかみつからない場合は、医学会のウェブサイトで確認してみてください。

——Mindsのサイトでは、医師向きだけではなく、患者さんや家族のための解説書もいくつかアップされていました。

田近医師:はい、それが参考になると思われます。Mindsのサイトでは、一般向きのわかりやすい解説書も検索することができます。前編で検索画面を紹介しましたが、その画面上に「ガイドライン解説 検索」という項目があります。その検索窓に病名などを入力して検索すると、ヒットする解説書があります。

例えば、高血圧、胃食道逆流症、慢性頭痛、妊娠出産、CKD(慢性腎臓病)、認知症、手足のしびれ、腰痛、顎関節症、歯に原因がない歯痛など、また、部位や臓器ごとのがんなどの解説書が公開されています。

私が委員をしている診療ガイドラインでも、一般の患者さんたち向きに、『統合失調症薬物治療ガイド−患者さん・ご家族・支援者のために−』(日本神経精神薬理学会)という冊子を刊行しています。パソコンやスマホでどなたでも無料で閲覧することができます。

公開できていない場合も多くある

——さっそく、その患者さん・ご家族など向きの解説書を検索して読んでみました。医師向きのガイドラインに比べて、かなりわかりやすく読みやすく編集されていました。こうしたガイドラインや解説書は、すべて公開されているのですか。

田近医師:まず、医師向きの診療ガイドラインは、完成したら、できるだけ多くの方に見ていただけるように、書籍にして刊行、またウェブサイト上で公開することを前提に作成します。ただ、ウェブサイトで閲覧しやすいように公開するためには時間がかかり、公開が追いついていないのが実情です。

一般向きの解説書も、各医学会が作成して公開に努めているようですが、さらに追いついていません。しかし、徐々に公開が増えていくと思われますので、気になるキーワードで検索を試みてください。

がんの診療ガイドラインは一般向きも充実

——がん治療に関しては、「日本癌治療学会」が運営する「がん診療ガイドライン」というサイトがあって、情報が整理されているようです。

田近医師:同学会では、臓器別に分類したガイドラインなどを、記述のフォーマットを統一して公開しています。例えば、脳腫瘍、口腔がん、肺がん、乳がん、胃がん、大腸がん、子宮頸がん、小児がんなどです。

がんの場合、一般向きの解説書のほうは、先ほどのMindsのほか、「がん情報サービス」というサイトでも紹介されています。こちらのサイトは、「がん対策基本法」という法律に基づいて、「国立研究開発法人国立がん研究センター」が作成、運営しています。

冊子、チラシ、リーフレット、書籍のほか、がんの実態調査をまとめた文書、用語集、また、がんに関する基礎知識、診断と治療、症状と生活、予防と検診についての情報も公開されています。

「標準治療」とはどんな治療?

——日本癌治療学会のサイトの「はじめに」の冒頭には、「がん診療ガイドラインの策定,普及は,国民が安心してどこでも標準的ながん診療を受けられる環境を構築するうえで必要不可欠なことです。」と記されています。「標準治療」という言葉をメディアなどでよく耳にしますが、どういう意味でしょうか。

田近医師:標準治療とは主に、診療ガイドラインに掲載されている治療法のことを指します。前述の「がん情報サービス」のサイトでは、「標準治療とは、科学的根拠に基づいた観点で、現在利用できる最良の治療であることが示され、ある状態の一般的な患者さんに行われることが推奨される治療をいいます。」と説明しています。

——では例えば、うつ病の治療であれば、全国の精神科の医師たちは診療ガイドラインに沿って治療を進めるのですか。

田近医師:「標準治療」ですべての治療法を網羅できるわけではなく、診療ガイドラインに掲載がない治療法はたくさんあります。

また、患者さんの症状、状態、意思もさまざまにあります。診療ガイドラインで提示された標準治療が必ずしもすべての人に適しているわけではなく、「これでなければいけない」と指示するものではありません。

——前回と今回で紹介していただいた医療情報を調べる方法は、とても有用と思われます。

田近医師:病気ごとの医学会が作成する、情報の信頼性が高い「診療ガイドライン」や、それに準じる病気別の「一般向けの解説書」があること、また「標準治療」とは何かを知っておくこと、それに、情報提供の主体が明確なMindsなどのウェブサイトを把握しておくことは、適切な健康や医療情報を入手するにあたってのカギとなるでしょう。

聞き手によるまとめ

医師向きの「診療ガイドライン」は難解であっても、患者や家族ら一般向きの解説書は、イラストなどがふんだんに盛り込まれるものもあり、わかりやすく情報が記されています。一部はウェブサイト等で公開もされています。これらは、現時点で信頼度が高い医療情報を発信しているとのことです。気になる病気があれば、解説書を検索してみてはいかがでしょうか。

※情報は2022年06月時点のものです。

(構成・取材・文 藤原 椋/ユンブル)

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