【映画批評】是枝監督最新作『ベイビー・ブローカー』! 赤ちゃんの母・ソヨンの変化に釘付けになりました

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2022年06月28日 23:21  Pouch[ポーチ]

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【最新公開シネマ批評】映画ライター斎藤香が現在公開中の映画のなかから、オススメ作品をひとつ厳選して、本音レビューをします。

今回ピックアップするのは、是枝裕和監督の最新作『ベイビー・ブローカー』(2022年6月24日公開)です。是枝監督がキャスト、スタッフ共に、ほぼ韓国人でかためて制作した韓国映画。カンヌ国際映画祭でソン・ガンホさんが主演男優賞を受賞して話題になったのでご存知の方も多いはず。

公開日に劇場で鑑賞しましたが、どこで映画を制作しても是枝監督はブレませんね! では物語からいってみましょう。

【物語】

借金に追われるクリーニング屋の店主・サンヒョン(ソン・ガンホさん)は、赤ちゃんポストがある児童養護施設で働くドンス(カン・ドンウォンさん)と、ポストに預けられた赤ん坊を連れ去り、高いお金で売るブローカーを裏稼業にしていました。

ある日、ポストの前に赤ちゃんが置かれ、その子を連れ去ったサンヒョンたち。しかし、赤ちゃんを捨てたはずの母親・ソヨン(イ・ジウンさん)が、心変わり。赤ちゃんを取り戻しに来るのです。

対応したドンスとサンヒョンは警察に届けられるのを防ぐため、彼女に「赤ちゃんを大切に育ててくれる家族を見つけるために預かった」と言い訳。そして、ソヨンも一緒に赤ちゃんの家族探しに旅立つことに。

そんな彼らを、刑事のスジン(ペ・ドゥナさん)らがベイビー・ブローカーを現行犯逮捕しようと、追いかけていくのです。

【『万引き家族』延長線上にある映画】

本作は『万引き家族』『真実』(カトリーヌ・ドヌーブ主演のフランス映画)に続く、是枝監督の家族映画。サンヒョン、ドンス、ソヨン、赤ちゃんが、旅をしながらお互いへの理解を深め疑似家族のようになっていく様子は、同じく疑似家族の映画『万引き家族』の延長線上にあると思います。

ただ長年、疑似家族として暮らしていた『万引き家族』と違い、短い時間の関係性。ゆえに、社会の底辺で這いつくばっている者たちの必死に生きるヒリヒリ感よりも、「赤ちゃんの幸せを願う」という優しさの方がジワジワと広がっていく作品でした。

【赤ちゃんポストを利用した若き母の葛藤】

この作品はソン・ガンホさんがカンヌ映画祭で主演男優賞を受賞したことから、彼に注目が集まっていますが、映画を見たとき、私は赤ちゃんのママであるソヨンの変化に釘付けに。

前半こそ息子に笑顔を見せず、抱きしめてあげることも少なく、クールな印象をもちました。そんなソヨンが赤ちゃんポストに息子を届けたのは、息子を愛していないわけではなく、ある理由が。

その理由は、ぜひ映画を見ていただきたいのですが、ソヨンの苦難の人生が赤ちゃんポストに息子を託す理由に込められているのです。

ベイビー・ブローカーを追いかける刑事のスジンは「産むなら捨てなきゃいいのに」みたいなことを言いますが、でもソヨンの事情はそう言い切れないもので。もし自分がその状況にあったら、捨てはしないかもしれないけど、身を引き裂かれる思いを抱きつつも、苦しみながら養子に出すだろうなと。

【赤ちゃんの闇を描きつつも清らかな映画に】

赤ちゃんポストは日本にもありますが、2007年〜2020年の間に157人、韓国は2009年〜2019年の間に1802人と韓国の方が届けられる赤ちゃんの人数が多いんだとか。預けた母親の半数は未婚、社会問題にもなっており、現実ではベイビー・ブローカーはもっと腹黒いだろうし、サンヒョンとドンスのような人たちではないと思います。

でもこの映画は赤ちゃんの闇取引を告発する映画ではなく、彼らが「赤ちゃんの幸せを願う」という気持ちを共有しているから、物語が進むにつれ、サンヒョン、ドンス、ソヨン、それぞれの人生、そして心の距離が、どんどん近くなっていきます。

ちなみにソン・ガンホさんは、ほかのキャストに比べて受け身の芝居が多く、存在感を示しにくい難役だったと思います。しかし、赤ちゃんを抱っこする姿にまで人柄が現れており、やっぱりいい俳優だなあと。

ドンスを演じたカン・ドンウォンさんは、悲しい過去を背負っているからこそ、人に優しい青年を好演、素敵でした!

そんな俳優陣にもぜひ注目して観てください。

執筆:斎藤 香(c)Pouch
Photo:©︎ 2022 ZIP CINEMA & CJ ENM Co., Ltd., ALL RIGHTS RESERVED

『ベイビー・ブローカー』
(2022年6月24日より全国ロードショー)
監督・脚本・編集:是枝裕和
出演:ソン・ガンホ、カン・ドンウォン、ペ・ドゥナ、イ・ジウン、イ・ジュヨン

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