維新の会、大阪の岩盤支持層は「勝ち組」「タワマン男性」 その本音は?

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2022年06月29日 06:00  AERA dot.

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写真日本維新の会・吉村洋文副代表(左)と松井一郎代表(右)
日本維新の会・吉村洋文副代表(左)と松井一郎代表(右)
 梅雨空の京都・四条烏丸で、参院選公示を迎えた6月22日午前、京都選挙区から出馬する新人・楠井祐子氏の応援のため、日本維新の会の吉村洋文副代表(大阪府知事)が演説に立った。


【画像】大阪府と大阪市が誘致を目指す統合型リゾートがこちら
「自民党政治は野党や国民をなめている。自民党に対峙できる強いまともな野党が必要です。日本に唯一、改革政党があってもいいじゃないですか」


 と訴えると、大きな拍手が沸いた。この日は、楠井氏を推薦した国民民主党の前原誠司代表代行も演説に参加した。


 維新にとって、京都選挙区は大きな意味を持つ。同じ関西ながら「壁」を越えられなかった京都で、選挙区では初となる議席を獲得すれば「東進」に拍車がかかる。京都は立憲民主党の泉健太代表の地元でもあり、今回の対立候補は5選を目指す同党の福山哲郎前幹事長。「野党第1党」の座を争う立憲との「真っ向勝負」の選挙区でもある(他にも自民党新人の吉井章氏、共産党新人の武山彩子氏、NHK党新人の星野達也氏らが立候補)。詳しくはこちら


 ちょうど同じ時間帯に、東京選挙区から出馬する維新の新顔候補は新宿アルタ前で演説。「出産を保険適用し、さらにクーポン支給で出産費用の実質無償化を進めたい」と、子育て政策を訴えた。


 この候補の第一声には党職員約30人が集結。スタッフのほうが聴衆より多いくらいだったが、演説を聞いた大学1年生の男性(18)は「維新支持者じゃないですが、文通費(現・調査研究広報滞在費)問題に果敢に切り込んだのは一般国民の感覚と近いと思う」。社会人大学院生の女性(37)は「私はリベラルですが、維新の政策は教育無償化、出産にかかる医療の実質無償化実現など、若者に受けるのがわかる気がする」。聴衆の評価はまずまずのようだった。


 今回の参院選の意味について、政界関係者はこう分析する。


「自公の優位が大きくは揺らがなさそうな中、長期的に見て注目されるのは、立憲と維新の『野党第1党』争い。維新は京都と東京を制するかが鍵になり、勝てば全国政党の展望が開ける。立憲は比例で野党第1党を維持できるかが焦点になります」



 昨年10月の衆院選で、公示前の11議席を大きく上回る41議席を獲得し、野党第2党となった維新。3月の党大会では次期衆院選で「野党第1党」を狙うとぶち上げた。


 朝日新聞社による5月の世論調査でも、参院選での比例区投票先は維新が11%で、立憲の10%を上回った。維新のベテラン・鈴木宗男参院議員は、強気の未来予想を語る。


「全国政党になるには志が高い候補者がどれだけ出てくるか。東京からは音喜多駿政調会長や柳ケ瀬裕文総務会長など、良い若手が育ってきた。参院選に勝ち、次の衆院選で野党第1党、その次の衆院選で政権交代に入るかたちをつくりたい」


■「新自由主義」的世界観の「改革」 コロナ禍で医療に「副作用」も


 維新の躍進は、どのような人々によって支えられているのか。


 大阪・難波の道頓堀商店街には、店頭でTシャツや缶バッジなどの「吉村洋文グッズ」を売る店がある。吉村氏本人の承諾を得ているという。やはり吉村知事の「アイドル」的人気が根強いのか……と思いきや、店員曰く「いま買っていくのは観光客かな。地元の人にはほとんど売れへん」。元大阪府知事の橋下徹氏は、「ふわっとした民意」と形容したが、正体は掴み難い。



 一般的に、維新のコア支持層は大阪の庶民や格差に苦しむ若者と考えられてきた。『維新政治の本質』(あけび書房)の著者で関西学院大学法学部の冨田宏治教授もそう思い込んでいたが、認識が変わったのは「都構想」への反対運動に参加したときだという。


「私は西区北堀江の投票所で人々の投票行動をウォッチしました。維新側はイメージカラーのオレンジ色のTシャツを着た運動員が3交代で3人ずつ来た。西区はタワーマンションが林立し、サラリーマンや転勤者が多く住む地域。タワマンから下りてくるのは30〜50代の中堅どころで、妻を連れ、維新の運動員に会釈して投票所に入っていく光景を一日中見ました。彼らは、いわば“勝ち組サラリーマン”です」


 住民投票の結果からも明らかだが、大阪市内でもタワマンが多く立つ北区や西区、福島区、淀川区、都島区など北部で維新の支持率は高い。


 冨田氏は街頭で行き交う人々に、都構想への賛成・反対をボードにシールで貼ってもらう「シール投票」にも参加した。



「単にビラを配るよりも市民との対話のきっかけになります。そのとき、反対運動の活動だとわかっていて『オレ賛成!』などと挑発しながらシールを貼っていくのは、ほとんどがスーツ姿の中堅サラリーマンで圧倒的に男性ばかり。維新の支持層の中心は勝ち組・中堅サラリーマンであることを実感させられたのです」


 こうした「勝ち組」、あるいは「勝ち組になりたい」との願望を抱く人々の意識は、貧困や格差と表裏一体の関係にある。冨田氏によれば、彼らは「自分たちは多額の税金や保険料を納めているのに何の見返りも受けていない」という重税感を抱く一方で、「税金を納めていない貧乏人と年寄りに自分たちのお金が食い潰されている」という被害者意識にも似た感情を抱いているという。その矛先は、生活保護受給者など貧困層や高齢者層などに向けられる。


 元アナウンサーの長谷川豊氏がブログで人工透析患者について「自業自得」などと発信し社会的な批判を浴びたが、維新は2017年衆院選で公認候補として擁立した(結果は落選)。冨田氏が続ける。


「自堕落な生活を送って病気や貧困になるのは自己責任というわけです。新自由主義における『勝ち組』の典型的な意識ですが、維新はこうした考えと親和性が高い層に強固な支持基盤をつくり出していった。新自由主義的な『官から民へ』『身を切る改革』をスローガンに、この10年余りで医療、福祉、教育の切り捨てを断行してきました」


■身を切る改革で犠牲にしたもの


 赤字体質を理由に市立病院を次々と独立行政法人化、あるいは廃止して府立病院に統合してきた。07年から19年までの12年間で、府の医師・看護師を含む病院職員(公務員)を8785人から4360人へと50.4%も削減(全国平均は6.2%)。保健所職員は748人から506人にまで減らした。


 また、府立公衆衛生研究所と市立環境科学研究所の衛生部門を統合し、大阪健康安全基盤研究所を創設。人員を3分の2まで削減した。


 こうした「身を切る改革」には、コロナ禍の中、「副作用」も指摘されている。


 コロナ患者を受け入れる公立病院を減らし、医療従事者を半減させたことで医療が逼迫。6月21日現在、コロナ感染による死者数は人口100万人あたり全国平均が246人であるのに対し、大阪府が578人。大阪市では782人と、全国平均の3倍以上だ。



 感染者が急増した20年5月、松井一郎市長は十三市民病院(淀川区)を全国初の「コロナ専門病院」として重点医療機関に指定し、主に中等症患者を受け入れた。地元政界関係者が語る。


「突然の決定に、現場は防護服がまったく足りず大混乱。松井氏は代用として雨ガッパの提供を市民に呼びかけ、30万着を超える雨ガッパやポンチョが市に届いた。だが、専門家から防護服として使えないと指摘され、引き取り手がないまま市庁舎の玄関ホールに山積みにされていたのです」


 18年には、周産期医療などに取り組んできた住吉市民病院(住之江区)を廃止した。約2キロ東に府立急性期・総合医療センターがあることから「二重行政の解消」が理由だ。


「住吉市民病院は地元密着型で、若い母親やシングルマザーに寄り添う医療を行ってきた。最先端の高度医療を提供する府立病院とはニーズがまったく異なる。廃止後は、閉鎖病棟を活用してコロナ患者に対応すべきとの医療現場の要望を無視し解体。十三市民病院をコロナ病院に指定する直前のことで、やっていることが矛盾している」(同)


 維新が時に無謀にも見える「改革」にまい進する背景には、大阪経済の地盤沈下がある。前出・冨田氏がこう解説する。


「首都一極集中のあおりを受けてきた大阪は東京へのコンプレックスがあるから、『成長』『発展』という言葉に弱い。だから、失敗例は目に入らず、カジノや万博に飛びついてしまう。大阪の地べたで暮らす庶民たちは、大阪の魅力をそんなところに見いだしていない。『食い倒れはいても、行き倒れはいない』という人情と助け合いの心を誇りに生きてきたのです」


 コロナ感染による死者数の多さなどについて、日本維新の会本部に党としての見解を聞いたが、「大阪府市の行政に直接関わる内容になりますので、日本維新の会にご質問いただく内容としてはそぐわない」との回答だった。吉村府知事は過去の会見で、「大阪は死者数が多いと言われるが、致死率で言うと、都道府県で真ん中あたり」「専門家に聞いても(理由は)わからないというのが現状。僕自身もこれが明確な理由というのが言えない」などと述べていた。


 維新の「改革」が国民にどう受け止められるのか。存在感が増した今、これまで以上に中身や結果が問われることになりそうだ。



■署名21万筆でも住民投票を拒否? 夢洲カジノ誘致をめぐる「なんでやねん」



「大阪都構想」に住民投票で2度もノーを突き付けられた維新が次に掲げたのが、大阪市此花区の人工島夢洲(ゆめしま)へのカジノを含む統合型リゾート(IR)の誘致。2025年の大阪・関西万博の跡地を利用し、29年秋の開業を目指すが、大阪の人々には不安の声がくすぶる。


 市民団体「カジノの是非は府民が決める 住民投票をもとめる会」は6月6日までに、カジノ誘致の是非を問う住民投票の実施を求める署名を約21万筆集めた。請求に必要な約14万6千筆を大きく上回る数だ。同会の山川義保事務局長は大阪IRの問題点をこう話す。


「海外ではカジノの周辺に質屋が立ち並び、犯罪やホームレスも増えてギャンブル依存症が社会問題となっています」


 カジノ計画には採算面でも疑問があるという。


「年間1兆1400億円の経済効果という触れ込みですが、前提となる来場者数は年間2千万人。ユニバーサル・スタジオ・ジャパン(USJ)でも最大で約1450万人とされているのに、本当にそれだけの人が来るのか。また、大阪IRに『公的負担はない』という約束だったのに、結局、夢洲の土地改良や土壌汚染対策に790億円の公費負担を決めた。府はプラス面を言うだけで、説明不足ですよ」(山川氏)


 今後、審査を経た署名の有効数が14万6千を超えていれば、知事は府議会に住民投票条例案を提出する義務が生じる。だが、議会では維新が過半数を占め、吉村洋文府知事も「府議会ですでに結論を出しているので、住民投票をする必要はない」と否定的だ。


「IR整備法には『住民の意見を反映させるために必要な措置を講じなければならない』とあるし、橋下徹元府知事はかつて住民投票を『究極の民主主義』と言った。今回は住民投票をやらないというのは矛盾している」(同)


 IRを推進する自民党の一部からも反対の声が上がっている。6月20日には、自民党の川嶋広稔大阪市議が中心となり「NO!大阪IR・カジノ」を設立した。3月には、大阪府議会の自民党会派に所属する3人の府議が大阪IRに反対するため会派を離脱し、新たに「自民保守の会」を立ち上げた。同会の占部走馬代表はその経緯をこう語る。



「売り上げや来場者数などの予測は大阪IRの運営事業者であるMGMとオリックスの合同会社が試算しています。しかし、その数字を府も市も全く検証しておらず、我々が議会で何度質問をしても『MGMが出した数字なので』と言って、何の審議もできていないのです。そんな状態ではとても賛成なんてできない」


 こうした声に維新はどう答えるのか。大阪維新の会幹事長の横山英幸大阪府議はこう説明する。


「大阪IRを“でっかいパチンコ屋”ができるのかと不安に思う市民もいるのは確かで、説明不足という点で反省いたします。来場者数の話ではUSJとの比較もされますが、大阪IRにはシアター、フードホールなどのエンターテインメント施設や、国際会議・展示会向けの大規模施設なども含まれ、カジノはその一部。単純比較はできません。カジノでは生体認証を取り入れ、家族や自分自身で申告すれば入場規制ができる。既存の他のギャンブルと比較しても依存症対策にもかなり力を入れていると考えます。790億円の公費投入については、港湾事業者の賃料から集めた港営事業会計で支出するので直接的に市民の税負担となるわけではないのです」


 ただ、港営事業会計は20年度末時点で1400億円の赤字。結局、税金をつぎ込むことになるとの指摘も。計画自体が“賭け”にならないといいが。


(本誌・村上新太郎、亀井洋志、佐賀旭)

※週刊朝日  2022年7月8日号


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  • 維新の会、大阪の岩盤支持層???維新は、まあほっておいて他の野党の支持層って反日極左で全共闘の残党ばっかりだよね朝日さん
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