「カラオケ感覚で楽しんで」老舗写真店の挑戦 ーー カメラのキタムラが韓国で流行中の「セルフ写真館」に参入した理由

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2022年06月29日 13:22  Fashionsnap.com

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「PICmii 新宿店」の様子

Image by: FASHIONSNAP
「カメラのキタムラ」を運営するキタムラが、新規事業としてセルフ写真館「ピックミー(PICmii)」の展開を開始した。今年4月に1号店を新宿 北村写真機店に出店後、翌月には2号店をカメラのキタムラ渋谷店の店内にオープン。セルフ写真館は韓国発のトレンドで、2021年頃から日本国内でも若年層を中心に盛り上がりを見せている。1934年創業の老舗写真用品チェーンの同社が、なぜセルフ写真館の運営に乗り出したのか?キタムラ・ホールディングス 執行役員 新規事業推進室 室長 永冨泰高氏に話を聞いた。

韓国の人気カルチャーが日本に
 セルフ写真館は専門のカメラマンが常駐する一般的な写真館と異なり、カメラや照明が用意された空間で顧客自身がシャッターを切って撮影するサービス。セルフィーが当たり前になったデジタルネイティブ世代にとって、自分のタイミングでより自然体の姿を撮影でき、且つ手頃な価格帯で本格的な仕上がりの写真を撮れることが魅力だ。韓国での流行を受けて、原宿や新大久保などの都市部を中心にさまざまな企業がセルフ写真館を出店している。

 キタムラが手掛けるピックミーは、内装デザインが異なるプライベートスタジオを設置(新宿店は3タイプ、渋谷店は2タイプ)。各部屋には撮影に必要な機材や小道具が揃っており、手ぶらで来店可能となっている。写真専門店ならではのクオリティの高い仕上がりが特徴で、通常仕上がり(モノクロ)は複数パターンを用意。近接から全身まで自由な撮影が楽しめる。このほか、有償オプションとして、「カラー撮影」「特殊フィルターレンタル」などのメニューも展開している。基本メニューの料金は15分撮り放題で、税込3800円(モノクロ撮影、2人までの場合)。
撮影自体がエンタメ化する「セルフ写真館」

 韓国発のトレンドだが実際の利用者層は若年層に留まらない。20代をはじめ、30代、さらには40代以上と幅広い層が来店するという。婚姻届を持って記念撮影するカップルや、誕生日を祝う記念撮影のために訪れる友人グループなど、来店動機もさまざまだ。また、未就学児の子どもを連れて家族写真を撮影するケースもあるという。「親御さんに話を聞くと、一般的な写真館のように全く知らない人がいる場所だと緊張してぐずってしまうそうで。ご両親とお子さまだけの空間であれば、普段通りの表情で家族写真を撮れるということで、来店される方もいらっしゃいます」(永冨氏)。
 来店者へ利用後に行うアンケートでは「次回はどういった時に使いたいですか?」といった内容の問いに対して、「デートや遊びの途中で訪れたい」という回答が多く寄せられているという。「思い出の瞬間をカメラに収めたら、すぐに写真プリントできるように色々とサービスを作ってきましたが、セルフ写真館はカラオケやプリクラを楽しむ感覚に近いと言いますか、それ自体がエンタメになっているように感じます。お客さまは『どんなポーズにしようか?』と相談しあったり、ワイワイとその場の雰囲気を楽しんでいらっしゃる。記念日はそう多くありませんから来店頻度は年に1〜2回かもしれませんが、また来年もとリピート来店していただけたら」(永冨氏)。

 キタムラではカメラ専門店「カメラのキタムラ」、こども写真館の「スタジオマリオ」を展開しているが、顧客層は主婦層やシニア層の割合が高く、若年層へのリーチが課題だったという。「ここ数年はフィルムカメラで撮って、それをインスタグラムに投稿するといった方も増えたので、全く若年層にリーチできていないという訳ではありません。ただ、ライフタイムバリューの観点で言えば、やはり若い人たちがもっとキタムラと接点を持って頂くにはどうしたら良いのか検討していく必要がありました」(永冨氏)。若年層へのアプローチを模索する中で、目を付けたのがセルフ写真館の流行。流行の兆しが見え始めた昨年の年始頃からセルフ写真館についてマーケティング調査を重ねた。
 今回のタイミングでのセルフ写真館への参入は後発とも言えるが、永冨氏は「一過性の流行ではなく日本に根付くものなのか、市場調査を徹底的に行いました」と説明。「ブームの勢いに乗ってセルフ写真館にいち早く参入されたところもあり、今後もさらに増えていくとは思います。こうした時に何を根拠にしてお客様は店舗を選ぶのか。キタムラブランドの技術やクオリティを決め手にして頂けるのでは」と話し、これまで築き上げてきた知名度と信頼を最大限に生かしていくという。
これからの時代の写真と人との関係性

 今後の同事業の展開については「この事業を全国に拡大させるべきか、まずはこの2店舗で検証していく」とし、都市部への出店は視野に入れているものの今後の具体的な出店計画については未定とした。また、ピックミーでは既にコスプレ割などのキャンペーンを打ち出しているが、今後も店頭やSNSでのさまざまな施策を計画しているという。なお、同事業単体の売上等の数値的な目標については非公表とした。

 スマートフォンやSNSの普及によって、人々の写真との関わり方も大きく変化した現代において、永冨氏は「写真を通じた体験の提供」の重要性を説く。「撮影をはじめ、撮った写真を見返す動作、ネット上にアップする動作は全てスマホ1台で完結する時代となり、我々が元々メインでやってきたプリントビジネスは厳しい状況となっています。ですがシャッターを切る回数は、アナログカメラやデジカメの時代よりも遥かに増えているのが現状。写真を撮る行為自体は、よりみなさんの身近なものになっているんです。ピックミーは外から見ればいわゆるスタジオ事業ですが、"写真を体験してもらう場"を提供するサービス。我々自身が今の時代のライフスタイルに合った写真の撮り方や楽しみ方を、体験事として捉えて提供する方向へとシフトしていく必要があると考えています」。今後もピックミー含めた各事業において同社は、アフターコロナを見据えた時代のニーズに合ったサービスの在り方を模索していくという。

■PICmii 新宿店所在地:東京都新宿区新宿3丁目26-14 新宿 北村写真機店 7階TEL:03-5361-8300営業時間:10:00〜19:00定休日:年中無休(年始を除く) ■PICmii 渋谷店所在地:東京都渋谷区道玄坂2-25-9 カメラのキタムラ東京・渋谷店 4階TEL:03-3463-2505営業時間:10:00〜20:00定休日:年中無休(年始を除く) ■PICmii:公式サイト

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