広岡達朗が怒りのダメ出し「原辰徳には人を育てていく理念が見えない」。ヤクルトと巨人の「差」はどこにあるのか

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2022年06月29日 16:21  webスポルティーバ

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 ペナントレースも半分を消化し、これから正念場の夏場を迎えて、各チームが今シーズン掲げた目標に向かっていく時期だ。セ・リーグにおいては、6月からヤクルトが独走態勢に入り、6月26日には巨人がヤクルトに敗れ球団史上最速で自力Vが消滅するなど、1強状態になっている。

 ペナント前の予想で、ヤクルトの連覇は難しいと語る評論家は多くいた。にもかかわらず、このような結果となっている要因は何なのか?




 優勝候補の一角に挙げられていた阪神は、開幕9連敗を喫するなど大きく出遅れた。巨人も開幕1カ月は新人選手の活躍もあって順調に勝ちを重ねていったが、やがてケガ人が続出し貯金が増えずにいる。その隙にヤクルトが巨人、阪神から白星を挙げていった。

 巨人V9時代のショートとして活躍し、引退後はヤクルト、西武で指揮を執り、4度のリーグ優勝、3度の日本一に輝いた広岡達朗は、巨人OBとして憤慨している。

ヤクルトのチームマネジメント力

「ヤクルトは監督がピッチャー出身ということもあって、去年ホールド王の清水昇をうまく休ませながら起用し、調子のいいピッチャーを中継ぎにあててうまく回している。逆に巨人は中川皓太がケガで離脱しているとはいえ、監督、コーチに論理的なビジョンがないのではないかと思ってしまう。バントひとつとってみても、相手にプレッシャーをかけているとは思えない」

 広岡はヤクルトの監督時代、投手陣を整備して日本一まで上り詰めた実績があるだけに、巨人の台所事情に言及したくて仕方がないのだ。

「監督の原には、こうやって人を育てていくという理念が全然見えない。若い選手もベテランも同じように扱って、新しいもの好きでやっていたら、古い連中はどうすればいいのか。これでは、ベテランの去就の導き方を知らないと思われても仕方がない」

 ベテランにはベテランの役割がある。広岡には、かつて西武でロートルスターと言われた田淵幸一、山崎裕之を復活させた自負がある。

「ヤクルトが去年優勝したのは、青木宣親のおかげ。外野の一角を担い、ベテランとしてチームをまとめた。若いチームは勢いがあるけど、いざという時のベテランの力はやっぱり大きい。一時、体調不良により登録抹消になったけど、復帰してからはしっかり数字を出している。奮闘するベテランの姿はチームを盛り立てるのだ」

 指揮官は戦術・戦略を立て、選手を育て、鼓舞しながら勝利に向かってチームを邁進させていく。強いチームには、フィールド内にも監督のようなシンボル的存在が必ずいる。それは往々にしてベテランが担う場合が多い。ヤクルトなら、青木と42歳の石川雅規がチームの大きな支柱となっている。

坂本勇人の後継者問題

 そしてチームを強くするためのもうひとつの条件は活性化だ。チームというのは、盤石なレギュラー陣が確立しているとしても、ケガによる離脱によって、あっという間にガタガタになってしまうことがある。替えが効かない選手ならなおさらだ。

 巨人の大黒柱である坂本勇人は今年33歳とベテランの域に達し、今シーズン5月1日に右膝内側側副靭帯損傷により登録抹消された。1カ月ちょっとで復帰したものの、明らかに本来の動きではない。

 坂本の後継者問題は数年前からの課題であり、昨年も開幕前に田口麗斗を放出し廣岡大志を獲得したのは、まさに「ポスト坂本」を見据えたトレードだった。しかし、今季も廣岡のバッティングはパッとせず、おまけに今になって左が足りないと嘆いている原監督の言動を見ると、広岡が言うようにビジョンの欠片もない。

 そして今年、坂本の離脱によってショートのポジションに就いたのが、高卒2年目の中山礼都。俊足を生かした広い守備範囲で何度もチームを救った。また、現在ファーストのレギュラーに定着している増田陸も本職はショートであり、来年以降はショートコンバートプランも浮上しているが、この件についても広岡は不満があるようだ。

「ショートの坂本にしたって、後釜をつくろうとする意識がない。いい選手がいたら勝てるという都合のいいことばかり考えているからだ。スターティングメンバーを1番からただ単に並べているだけでは意味がない。他チームでクリーンアップを打っている選手をただ集めてやっている感じで、それだったらオールスターの監督でもやっていればいい。

 チームというのは、それぞれに合った戦力というのがある。同じ考えでやっても勝てるはずがない。場面、場面でこうやるという決まりごとをつくり、いいチームを形成していくという理論をそもそも持っていない」

原監督は「弱いチームでやれ」

 そして広岡は、三軍制を敷いているがまったく機能していないと言いきる。

「支配下登録選手(67人)と育成選手(35人)を合わせて102人を統括するために、一軍、二軍、三軍と振り分けてあるのだけれど、わけのわからん外国人選手を次から次に獲ってきたら、二軍、三軍に希望なんか持てないだろう」

 ひとりのレギュラー離脱によってチームの戦力が極端に落ちないよう、絶えず各ポジションにライバルとなる控え選手を手塩にかけて育てる。そうすることでレギュラー選手も安泰とならず、切磋琢磨して互いに伸びていく。これがチーム力の強化につながっていくと、広岡は言う。

「今から45年以上前のヤクルト監督時代、万年Bクラスで史上最弱と言われたチームを強くするためには練習しかなかった。遠征先で球場入りする前に、宿舎の屋上にコーチと選手を集めてシャドーピッチングや素振りをさせた。監督が率先して『もっと腕を振れ!』『スイングスピードを上げろ!』と声を枯らして言ったものだ。そんなことをするチームは、今はどこもないだろう。あまりに練習されるものだから、コーチ陣から『監督、シーズン中にこれだけ練習させると選手たちが壊れてしまいます』と進言されたが、私は『選手が故障して優勝できないのなら仕方ないけど、元気な選手がいて優勝できないのは我慢ならない』と返した。

 時代錯誤だと思うだろうけど、劇的にチームを変革させるためには、ただ選手たちに練習させるのではなく、意識を変えていかないといけない。今の選手はただ一生懸命プレーしているだけで、勝利のためにひたむきやっているように見えない。やるべきことをやっていかないと、チームの成績は向上しない」

 広岡は45年以上前にやった指導方法を例に出したが、要は首脳陣も選手も一丸になって戦いに臨むべき姿勢が重要だということを言いたかったのだ。ベンチで踏んぞり返り、しかめっ面をしているだけでは勝利をたぐり寄せることはできない。

「『こうしたら勝てる』と教えられない監督はダメ。豊富な資金力、充実した戦力といった恵まれた環境のなかにずっといたら、監督として成長していかない。前からずっと言っているように、原には『弱いチームでやれ』と言っている。弱いからこそ見えるものがたくさんある。理論をわかったらできると思い込みがちだけど、理論は身体で覚え込まないとモノにならない。それは選手でも監督でも一緒である」

 指導者として、チーム状況を踏まえて理論を構築する作業は一朝一夕では身につかない。自ら汗をかき、四六時中野球のことだけを考え勉強することで、やっと光がぼんやり見えてくる。

 FAやトレードといった安易な方法ではチームは強くならないとすでに実証されているのに、性懲りもなくそれを繰り返している巨人に対し、広岡は怒りしか覚えないのだ。昨年オフに新たに3年契約を結んだ原監督の手腕を、はたして残りのシーズンで見ることができるのだろうか......。

(文中敬称略)

このニュースに関するつぶやき

  • 監督歴は長いが、そもそも原に確固たる野球観があるのか?wジャイアンツ愛を壊れたように繰り返し宣い、ナベツネに翻弄されてた頃の方がまだ…
    • イイネ!4
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