第99回 アクション映画・ドラマのベテラン! 『マーベラス』マーティン・キャンベル監督インタビュー

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2022年06月30日 09:41  BOOK STAND

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『マーベラス』 2022年7⽉1⽇(⾦)、TOHOシネマズ⽇⽐⾕ほか全国ロードショー
007の監督による、マギー・Q、マイケル・キートン、サミュエル・L・ジャクソンが共演の殺し屋アクション映画、それが『マーベラス』です。
アクション映画好きならこの布陣だけでも、これは絶対観るべき映画だとわかるでしょう。
別の言い方をすれば『グリーン・ランタン』の監督による、バットマン役者マイケル・キートン、ニック・フューリー俳優サミュエル・L・ジャクソン、アニメでワンダーウーマンの声を演じたマギー・Qが共演のエンタテインメント。アメコミ・ヒーロー映画好きも注目です。
日本公開を記念し、本作を手掛けたマーティン・キャンベル監督にインタビューしました。キャンベル監督はなんと78歳。70年代から活躍しているアクション映画・ドラマのベテランなのです。年齢を感じさせない、エネルギッシュなインタビューでした。



すぴ:
お話しできて光栄です。僕は監督の手掛けられたアクション映画みんな好きです。
007、ゾロ、『バーティカル・リミット』どれも興奮しました。


キャンベル:
それは嬉しい。ありがとう!


すぴ:
今回の『マーベラス』も気に入りました。マギー・Qさんがとにかくかっこいい。


キャンベル:
その通り!彼女がとてもCOOLです(笑)間違いないです。



すぴ:
僕が今回の『マーベラス』で感じたのは、正統派のアクション映画を楽しめたということでした。VFXを使ったヒーロー物やファンタジーが多い中、生身のアクションの醍醐味といいますか。そこでお聞きしたいのは監督が考えるアクション映画の魅力とはなんですか?


キャンベル:
わ、いきなり本質的な質問からきますね。アクション映画の魅力について語らせたら止まらなくなっちゃいますよ(笑)。シンプルに自分がアクション映画が好きだから、ということになります。僕は62年に母親に連れられ007を観に行きました。その時から魅了されています。最近では『トップガン マーヴェリック』も素晴らしかった。アクション映画を観ている時のワクワクはいまも昔も変わりません。やはりアクション映画の魅力とは?というよりアクションというものが魅力的なんだと思います。

それにしても『トップガン マーヴェリック』は良かったな。僕の映画にもあのぐらい予算があればと思いましたが(笑)


すぴ:
今回は主人公がマギー・Q。そしてベトナムも重要な舞台とアジア色が強い。監督は本企画のどこに惹かれてメガホンをとることを決めたのですか?


キャンベル:
やはりストーリーですね。80年代のベトナムで少女とサミュエル・L・ジャクソン演じる殺し屋が出会うところから物語が始まる。ここからしびれました。そして僕の映画では珍しく女性が主人公です。挑戦し甲斐がありました。さらに主要登場人物3人のおかしくも、せつない人間関係も心を掴まれます。この3人を才能豊かな俳優たちが演じるわけですから監督を断る理由がないですよね。



すぴ:
僕はマギー・Q演じるアンナが、葉巻に仕込んだギミックを使ってからのアクション(註:ネタバレになるんでこれ以上は詳しくは書きません)が007みたいで大好きでした。
監督はどのシーンがお気に入りですか?


キャンベル:
そうですね。全部気に入ってますが(笑)、あえていうならアンナとレンブラント(マイケル・キートンが演じる)のレストランの場面ですね。
あそこはアクション・シーンではないですが、両者のセリフの応酬が見せ場になっています。僕としては言葉のスパーリングとして撮っています。ユーモラスでもあり、とてもセクシーなシーンですね。


すぴ:
ラストシーンというか登場人物たちの運命が胸にささりました。監督としてはあの終わらせ方でよかったのですか?(註:ここはインタビューの時、もっと具体的に聞いたのですがネタバレになるので少しぼかして書きます)

キャンベル:
実はあのラストは、まず脚本に書かれているように撮ったんです。その後、テスト試写をしたら今一つ観客の反応が良くなかった。それで撮り直してああいうラストにしたら反応が良かったんですね。いい感じになったと思います。


すぴ:
先ほど素晴らしい俳優が出ることも、監督を引き受けた理由だとおっしゃいました。では監督の目からみて、マギー・Q、サミュエル・L・ジャクソン、マイケル・キートンはどんな役者でしたか?



キャンベル:
まず僕が役者にもとめているのは、脚本どおりに役柄を理解してきちんと演じてくれた上で、そこにプラス・アルファの要素をどれだけもたらしてくれるか?です。マイケル・キートンはまさにそういう俳優さんです。いつも変わったことをしてくれるんです。予想をしてなかった演技をみせてくれる。サミュエル・L・ジャクソンもカメレオン俳優。シリアスな役からコミカルな人物までこなせる人です。今回もムーディーというキャラに厚みをもたらしてくれました。マギー・Qはドラマ『ニキータ』でもわかるようにアクションをこなせます。なんたってジャッキー・チェンの下で修業してますからね。

スタントも自分でやる。今回も自分でビルから飛び降りています(笑)。でも、なによりも彼女はドラマ部分の演技が素晴らしいんです。アクションとドラマの両方が出来る女優さんは貴重です。今回、アンナ役はマギー・Q以外考えられませんでした。


すぴ:
俳優さんのことをお聞きしたので、今度は監督ご自身の映画作りの姿勢についてお尋ねします。ズバリ!このジャンルのベテランとして、アクション映画を作る上で一番大切にしていることはなんですか?


キャンベル:
まず真実味のある、リアルなアクションであれ、ということです。最近のアクション映画はありえない飛び方、落ち方をするものがあります。人間だけでなく車もカーチェイスでとんでもない回転とか吹っ飛び方をする。僕は物理的・身体的に出来る=ありえるアクションでないと撮らないようにしています。リアルさの追求です。

次に重要なのは、そのアクションがキャラクターにあっているかです。僕が手掛けた『007/カジノ・ロワイヤル』の冒頭で敵を追いかけるシーンがあります。敵はダンサーのようにピョンピョンとびはねて逃げていく。一方ボンドの方は着地に失敗したりと必死に相手を追いかける。ここにボンドの執念が現れているわけですね。アクションはそのキャラを語るものでなければなりません。本作もアンナ、ムーディ、レンブラントのアクションは、それぞれの人生、美学を反映させていますから、同じアクションではないのです。


すぴ:
ありがとうございます。最後に日本のファンにメッセージをお願いします。


キャンベル:
ぜひ劇場で観ていただきたいです。アクションもユーモアもいっぱいだし、才能豊かな俳優陣のかけあいも見ものです。きっと満足していただけるエンタテインメントに仕上がっています。




インタビューを終えて

マギー・Qが本当にかっこいいので、監督はアジア人撮るのもうまい。だから日本人俳優を使った、日本でのアクション映画はいかがですか?と聞いたら、オファーがあればぜひ!とのことでした。

さてアメコミ・ヒーロー映画好きなら『グリーン・ランタン』というライアン・レイノルズ出演のヒーロー映画のことをご存じでしょう。これもマーティン・キャンベル監督作です。僕は『グリーン・ランタン』結構好きですが、あの作品は必ずしも良い評価を得られませんでした。今回のインタビューでその理由が少しわかった気がします。『グリーン・ランタン』はVFXをふんだんに使ったヒーロー映画です。人間離れしたアクションの連続。ということはそもそもキャンベル監督のテイストにあわない素材だったのです。それこそマーベルのデアデビルとかDCだったらいっそバットマンとか、普通の人間ベースのヒーロー活劇だったらキャンベル監督の腕が冴えたかもしれません。事実、ヒーロー活劇のゾロは成功させていますから。

そのキャンベル監督が自身の理想とする、リアルなアクション&キャラクターとシンクロしたアクションを追求したのが、この『マーベラス』。殺し屋VS殺し屋の戦いですが、3人の役者がおりなすドラマ部分もエモーショナル。久しぶりに、いいアクション映画を観たな、という気にさせてくれます。

『トップガン マーヴェリック』の次はトップスターによるガン・アクション映画『マーベラス』です!

(文/杉山すぴ豊)

***
『マーベラス』
2022年7月1日(金)、TOHOシネマズ日比谷ほか全国ロードショー
配給:REGENTS 提供:ハピネットファントム・スタジオ/REGENTS
© 2021 by Makac Productions, Inc.



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