泉ピン子、夫の「隠し子」騒動を振り返る「あんなに泣くことはなかった」

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2022年06月30日 11:00  AERA dot.

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写真泉ピン子(いずみ・ぴんこ)/ 1947年生まれ。東京都出身。66年に歌謡漫談家としてデビュー。75年「ウィークエンダー」のレポーターを担当し、それがきっかけで俳優業に進出。歌手としてもヒット曲を持つ。橋田壽賀子脚本のNHK連続テレビ小説「おしん」で女優としての基盤を確立。以降「渡る世間は鬼ばかり」シリーズ、TBS月曜名作劇場など、多くの代表作を持つ。2001年、菊田一夫演劇賞受賞。(撮影/写真映像部・高野楓菜 ヘアメイク/ヘアーベル・林 香織)
泉ピン子(いずみ・ぴんこ)/ 1947年生まれ。東京都出身。66年に歌謡漫談家としてデビュー。75年「ウィークエンダー」のレポーターを担当し、それがきっかけで俳優業に進出。歌手としてもヒット曲を持つ。橋田壽賀子脚本のNHK連続テレビ小説「おしん」で女優としての基盤を確立。以降「渡る世間は鬼ばかり」シリーズ、TBS月曜名作劇場など、多くの代表作を持つ。2001年、菊田一夫演劇賞受賞。(撮影/写真映像部・高野楓菜 ヘアメイク/ヘアーベル・林 香織)
 残された“先”の時間を思ったとき、ふと、自分にできることは何かと考えた。できるのは、喜んでもらえる作品を届けることだけ。今年75歳を迎える泉ピン子さんの新たな挑戦が始まる。


【写真】泉ピン子さんの別カットをもっとみる
 年を取ったら朗読劇をやろう。そう決めていた。世間一般には、テレビでの活躍で知られているが、1970年代から80年代にかけては、舞台への出演も多かった。日本の演劇に偉大な功績を残した杉村春子さんにも可愛がられていて、同じ舞台に立ったときは、ホテルの隣の部屋で寝泊まりし、たくさんのことを吸収した。


「芝居の何たるかは舞台で教わったと、今でも、私は思っています。朗読劇なら美術も必要ないし、共演者も少なくて済む。ライフワークにはちょうどいいかなと。『いつか朗読劇を』と思い始めてからは、何かいい原作はないかと探していたんですが、なかなかピッタリくるものがなくて……。ようやく出会えたのが、内館牧子先生のベストセラー小説『すぐ死ぬんだから』でした」


 ヒロインの忍(おし)ハナは78歳。仲のいい夫と経営してきた酒屋は息子夫婦に譲り、それなりに楽しい隠居生活を送っていた。ところが、夫が倒れたことから思いがけない事実を知ることになる──。


「もちろん、原作に惚れ込んだことがいちばんだけど、『やる!』と決めた理由に、ハナと私の境遇が似ていることも一つある。原作を読んでいない人にはネタバレになっちゃいますけど、ハナの夫である岩造が倒れて発覚した事実というのは、隠し子がいることだったんですね。もう30年ぐらい前のことになりますけど、ウチの夫も同じ過ちを犯していて……」


 90年代のことだ。ピン子さんは、医師である夫に隠し子がいたことが記事になると知り、「許します」「離婚はしません」ということを表明するために、記者会見を開いたことがあった。


「当時、TBSで『渡る世間は鬼ばかり』をやっていたので、TBSに全部仕切ってもらったんです。事前に、橋田壽賀子先生から『別れたら、あんたの笑顔が見られなくなる。ご主人があんたと別れる気がないっていうんなら、別れることない。それよりも、あんたがどれだけ愛されていたかを示すために、ご主人からのラブレターを持っていきなさい』と言われて、そのとおりにしたんだけど、あれは演出ミスだった。今考えたらあんなに泣くことはなかった。女優の性なのか、いざ『オヨヨ』と泣けば、その悲しみに酔って、どんどん涙が止まらなくなっちゃうの」




 記者会見の前の晩、ピン子さんが反射的に思ったのは、「子供と女の人を守ってあげなきゃ」ということだった。


「そんなのは男の発想よね。でも、会見でいちばん忘れられないのは、記者の人から『どうして子供を作らなかったんですか?』って質問されたこと。子供は好きだし欲しかったから、病院に通って、いろんなことをやって、何度も挫折して、でもできなかった。『それは言っちゃダメよ』って」


 その後、周りからはいろんなアドバイスが押し寄せた。「別居したらいい」という助言には心が揺れたが、今度は森光子さんから、「別居は別れの一歩」と言って止められたという。


「森さんが離婚したときの経緯もお話ししてくださって、最後に、『小夜ちゃん(ピン子さんの本名)、男は裏切るけど仕事は裏切らないよ』とピシャッと締めました(笑)」


 記者会見と離婚の危機はなんとか乗り切ったが、自分がダメな女のように思えて、いつになく落ち込んだ。後頭部は、円形脱毛症になった。


「食事も喉を通らないし、寝室で一緒に寝るのも嫌だったから、リビングのソファでずっと毛布をかぶって寝てた。10キロぐらい痩せたかな。私は別にお金に困ってないので、別れてもよかったのに、橋田先生は、『あんたが週刊誌とかで“捨てられた”って書かれるのが嫌だ』って言うわけ。夫婦が別れるときは、男が女を捨てたときに決まってる、それが常識とされる時代だったんです。でも、あるとき市川森一先生と対談したときに、『そうだ、私、子供のいる人と再婚したと思えばいいんだ!』と思ったの。そしたら自分が(夫にとっての)一番じゃなくても腹立たないじゃん、って」



 朗読劇の原作を探していて、舞台制作関係者から、「この本でぜひ!」と『すぐ死ぬんだから』を手渡されたとき、「ぜひやりたい!」と感じた半面、もしかしたら、自分たち夫婦の過去を蒸し返されるかもしれないとも思った。


「『どうしても朗読劇にしたい小説があるんだけど』と夫に原作を手渡したら、一気に読んだみたいで、ニコニコしながら『おもしろいね〜』って。私の心配も杞憂に終わったんだけど、あんまり過去のトラウマがない夫に拍子抜けして、『あんた、死後離婚だからね』って言っちゃった(笑)。そしたら、『死後離婚でもいいよ、もう僕死んじゃってるから』って……。とことんまで屈託がないんです、ウチの夫」


(菊地陽子、構成/長沢明)

※週刊朝日  2022年7月8日号より抜粋


>>【後編/泉ピン子、「週末婚」でストレスなし 橋田壽賀子との“軽口エピソード”も】へ続く


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