「子どもにライフジャケットを」元教師が伝える水辺のリスク 事故は一瞬…「親が目を離さない」には限界も

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2022年07月01日 07:00  ウィズニュース

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写真ライジャケサンタの森重裕二さん=森重裕二さん提供(池田知英さん撮影)
ライジャケサンタの森重裕二さん=森重裕二さん提供(池田知英さん撮影)

クリスマスではないけれど、「サンタ」としてメッセージを発信し続ける男性が、香川県にいます。伝えているのは「大切な子どものサンタになって『ライフジャケット』を贈ってほしい」こと。ただ、自然での水遊びのリスクがなかなか知られていない危機感も抱いています。悩みながらも発信を続けるサンタに話を聞きました。(朝日新聞記者・滝沢卓)

【画像】ライフジャケットの選び方は? 医師は「子どもは静かに溺れます」と注意喚起

ライジャケサンタからのメッセージ
ツイッターアカウント「子どもたちにライジャケを!」(@LifejacketSanta)では、「ライジャケサンタ」から、子どもとライフジャケットの話題が毎朝、流れてきます。

<「ライフジャケット」は、子どもたちに「君たちのことを大切に思っているよ」っていうメッセージです。――ツイッターアカウント「子どもたちにライジャケを!」(@LifejacketSanta)>

川や海などの水辺では毎年のように、子どもが溺れる事故が起きてしまいます。

「ライジャケサンタ」の名前には、事故を防ぐために、「大人が子どもにライフジャケットをプレゼントしてあげてください」という願いがこめられています。

サンタは元小学校の先生
「サンタ」の正体は、3人の子どもを育てている森重裕二さん(46)です。香川県で、家族が営む石材店で働いています。

森重さんが今の活動を始めたのは15年前、滋賀県甲賀市で小学校の教員として働いていた頃にさかのぼります。

学生の頃の趣味はカヌー。何度も流れにのまれ、水の怖さは身にしみていました。
そのため、勤務先の小学校で、川へ行く授業で溺れる事故を防ぐため、ライフジャケットの大切さを校内で呼びかけ、児童が着るライフジャケットの購入を進めていました。

しかし2007年、甲賀市教育委員会のとある公民館が主催したキャンプで、高知県の川を訪れた他校の児童2人が亡くなってしまいました。市によると、ライフジャケットは着用していませんでした。
「自分の学校だけではなく、もっと広くライフジャケットの大事さを広めなければ」と森重さんは後悔。ホームページを作り、ツイッターなどにも活動を広げていきました。

「こんな浅いところで?」の声
しかし森重さんは、ライフジャケットの大事さを伝えるとき、悩みも抱えています。

「こんな浅いところで『ライフジャケット』が必要なの?」という話も見聞きするといいます。

しかし、「こんな浅いところ」は、単なる見た目に過ぎない可能性があります。

自然の川は、

・急に深くなる
・急に流れが速くなる
・足が滑りやすいコケが生えている

など、溺れにつながるリスクがたくさんあります。

川の流れが穏やかそうに見えると、こうした危険に気づきにくくなります。

また、大人自身が親しんできた水辺の環境も影響しているといいます。

「僕が小さい頃、水辺で遊ぶ=プールでした。そんな経験の人ほど、自然の川のリスクを強く意識しにくいような気がします。プールで泳がせるような感覚で、子どもたちを遊ばせてしまうこともあるかもしれません」

そして、子どもが溺れないように「大人が目を離さない」とよく聞くことがありますが、その対策には限界があるといいます。

<水辺の事故は一瞬です。右を向いて左を向いたら、溺れている……くらい一瞬で沈んでしまうことがあるのです。
自分も3児の父ですが、ずっと見ていられたらいいけれど、なかなか難しいこともあると思います
――ツイッターアカウント「子どもたちにライジャケを!」 @LifejacketSanta>

「予防のためには、大人の目が離れたかどうかではなく、ライフジャケットを着ているかどうかが大事です」

「大きなサイズ」は危険
「ライフジャケットが大事と言われても、購入はちょっと……」とためらう人もいるかもしれません。森重さんはこうした保護者の「気持ち」にも目を配ります。

<「ライフジャケット」を準備するってことは、ちょっと”よいしょ”が必要かも知れません。――ツイッターアカウント「子どもたちにライジャケを!」 @LifejacketSanta>

「よいしょ」とは、価格のこと。

より安全に配慮された子ども用ライフジャケットは、万が一の救助時に脱げないようにする「股下ベルト」があり、肩や腰などに当たるジャケット部分には小さな体にフィットさせるために調節できるバックルがついています。

また、子どもは大人よりも体に対して頭の重さの割合が多いため、仰向けで浮くときにバランスが取りやすいよう、ジャケットに枕のような浮き具がついている商品もあります。

子ども服のように「成長を見越して大きなサイズを」と考えてしまうと、大きめのライフジャケットだけが浮いて子どもの体は沈み、逆に呼吸がしにくくなる危険な状況にもなってしまいます。

「商品によって価格差がありますが、安全のことを考えれば数千円はかかります」(森重さん)
 
年に1回の川遊びで、来年は成長してサイズアウトするかもしれない、といった状況だと、「もしかしたら準備するのが面倒に感じてしまうかもしれません」

「でも発信者としては、こうした悩みにも触れたうえでライフジャケットの重要性を呼びかけると、少しでも共感してくれるかもしれないと思っています」

<でも、そのちょっとした”よいしょ”で、大切な子どもの命を守ることができる…と考えて、ちょっとがんばって準備することが大人の役割だと思います。
――ツイッターアカウント「子どもたちにライジャケを!」 @LifejacketSanta>

何も起きていない時に伝える難しさ
SNSで「ライフジャケット」が話題になりやすいのは、何かの事故が起きた後でもあります。これは、私たちメディアの報じ方にも関わる問題です。

「どうすれば事故を防げ『た』のか、ではなく、どうすれば事故を防げ『る』のか、を話題にしたい。もしかしたら、事故にあうのは自分の子どもかもしれない。子どもたちが水辺に近づくよりも前に早めに話題にすることが大事なんだと思います」(森重さん)

ただ、その上での「難しさ」もあるといいます。

<何も起こっていない時に「ライフジャケット」のことを伝えるのは難しいことかもしれません。――ツイッターアカウント「子どもたちにライジャケを!」 @LifejacketSanta>

「しっかりライフジャケットを着ていると、水の中でも浮いているので、ほぼ何も起きません。危なかった経験は注目されやすいけれど、普通に楽しく遊んだことは話題になりにくいんです」

そのため、ツイートではこう続けています。

<でも、何も起こっていない時にこそ、準備したり、話題にしたりすることでしか、事故を防ぐことはできないと思っています。――ツイッターアカウント「子どもたちにライジャケを!」 @LifejacketSanta>

ライフジャケットを当たり前に
森重さんが毎日のツイートで意識しているのは、その内容を読む相手です。

「例えばカヌーが好きな人はライフジャケットを着ることは当たり前です。でも、そうでない人も多い。ライフジャケットの重要性に初めて気づいてくれるような人に向けたメッセージを考えています」

また、厚生労働省によると、第1子の出生数は2021年で約37万人でした。子育て中の人たちは社会で絶えず入れ替わっていきます。

「何も知らない人に向かって、子どもにライフジャケットを着せることは当然だよ、とは言いたくない。できるだけライフジャケットの重要性をわかりやすくツイートして、知っている人と知らない人の隙間を埋めていければいいなと思います」

「ライフジャケットを着ることが当たり前じゃないことを、当たり前の風景に変えることはとっても難しい。だからこそ、夏だけでなく一年中、毎日ツイートしています」

このニュースに関するつぶやき

  • スノッブバカせと小理屈光@の痛々しさが浮き彫り(笑) どちらも「水の事故で自身の子供をなくした親の立場」を考えているわけではないだろうね(笑)
    • イイネ!1
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