鉄道・バスで「Visaのタッチ決済」が1年で38倍に “キャッシュレスの島”沖縄の現状

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2022年07月01日 14:42  ITmedia Mobile

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写真公共交通機関での導入が進む「Visaのタッチ決済」の端末
公共交通機関での導入が進む「Visaのタッチ決済」の端末

 ビザ・ワールドワイドジャパン(Visa)は6月30日、「Visaのタッチ決済」に関するオンライン説明会を実施した。公共交通機関における取り組みの現状と、沖縄県での事例が紹介された。



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 Visaのタッチ決済のような、クレジットカードのシステムを使ったタッチ決済の仕組みは、欧米を中心に普及している。日本ではコンビニやスーパーマーケットなどの小売り店から徐々に普及しつつある。



 ビザ・ワールドワイド・ジャパンの今田和成氏(デジタルソリューションズディレクター)は、「Visaのキャッシュレス戦略の中でも、交通分野は重点領域だ」と話す。日本でもVisaのタッチ決済の利用が進みつつあるが、最も高い成長率を示しているのが公共交通機関だ。2022年1〜3月のデータでは、交通分野での取引件数は前年度の38.1倍を記録したという。



●Visaのタッチ決済の導入が進む背景



 Suicaや楽天Edy、WAONといった先行する電子マネーがある中で、Visaのタッチ決済の普及のカギとなるのが公共交通機関だ。Visaでは、鉄道、バス、フェリー会社と協力し、2022年6月末時点で、全国の26のVisaのタッチ決済の実証実験を進めている。



 日本では全国に交通系ICカードが普及しているが、地方の鉄道やバス路線では、いまだに現金のみの支払いという路線も存在する。こうした地方路線にSuicaなどの交通系ICカードを導入すると、維持費が高額になり、採算が合わない可能性がある。沖縄県の「OKICA」など、地域独自の交通系ICカードを導入している例もあるが、県外から来る観光客には対応できない。



 こうした地方路線で、国際ブランドのVisaのタッチ決済を使えるようにすれば、システム導入費用を抑えつつ、キャッシュレス化を進められる。さらに、鉄道なら磁気券の取り扱い減少でコスト削減効果が見込める他、バスでは運転士が現金を集計する負担を減らせるなど、業務の効率化にもつながる。



 また、タッチ決済はインバウンドとの相性も良い。タッチ決済で公共交通機関に乗車するシステムは「オープンループ」と呼ばれるが、既に米国、英国、シンガポール、オーストラリアなどの欧米各国の都市部で導入されている。訪日外国人にとっては慣れた方法で、Visaブランドのクレジットカードさえあれば、現地で交通系カードを購入する手間もなく利用できるため、利便性の向上につながる。



 Visaのタッチ決済の導入により、地域経済への波及効果も期待できるという。Visaが実施した調査では、ロンドンでタッチ決済乗車券を利用した乗客は、小売り店などでも一般利用者と比べて2倍の決済件数があり、決済金額も70%上回ったという。また、ニューヨークでは地下鉄でのVisaのタッチ決済の導入後、駅周辺でのカード利用件数が15%アップしたとしている。



●“キャッシュレスの島”を目指す沖縄



 国内におけるVisaのタッチ決済の導入事例の中で注目すべき事例が沖縄県にある。世界的なリゾート地でもある沖縄では、沖縄県が決済機器に補助金を出すなど、県を挙げてキャッシュレス決済の導入を進めている。



 沖縄でキャッシュレス導入の旗振り役を務める1社が琉球銀行だ。2017年より、銀行本体がVisaの加盟店契約会社(アクワイアラー)となり、Visaなどの国際ブランドや電子マネーとQR決済の導入を進めている。



 琉球銀行では糸満市や名護市、宮古島市、石垣市、与那国町など17の県内市町村とキャッシュレス推進連携協定を締結しており、沖縄本島と離島の両方でキャッシュレス決済の導入を進めている。



 中でも、与那国町(与那国島)の例はキャッシュレス化が急速に進んだ事例となっている。日本最西端の島である与那国島では、もともとキャッシュレス決済対応は空港空港のカウンターのみという現金社会だった。2017年に琉球銀行と協定締結を締結した後、現在では旅館、民宿、レンタカー、ガソリンスタンドなど50を超える店舗でキャッシュレス決済に対応。来島客がSNSで「キャッシュレスアイランド」と話題にするほど浸透が進んでいる。



●バス路線に30台の決済端末を導入



 沖縄県では、県主導で公共交通にVisaのタッチ決済を導入する動きもある。琉球銀行では、沖縄県と連携し、バス路線にキャッシュレス決済の端末の導入を進めている。2021年度は実証実験として、沖縄本島で運行する5つのバス事業者にて、タブレット型のキャッシュレス端末を計30台導入した。



 説明会では、実証実験でVisaのタッチ決済を導入した観光系バス会社を代表して、東京バスの佐藤智彦取締役が登壇した。東京バスは沖縄本島南部の新たな観光地を結ぶ路線バス「ウミカジライナー」などを運行している。



 今回、キャッシュレス端末を新たに導入された5社の路線は観光客の利用が多い、空港などを起点とする観光系のバス事業者が運営するバス路線となっている。その多くは、これまで現金決済のみに対応していた。



 「OKICA」という独自の交通系ICカードがあり、ゆいレール(モノレール)で一部の路線バスや導入されているが、OKICAは県外では利用できないため、観光客向けには普及が進んでいない。



 そこで、バス路線では県の補助金を活用し、Visaのタッチ決済に対応するタブレット型の決済端末を導入。一部の事業者ではAlipayやPayPay、J-Coin PayといったQRコード決済にも対応した。決済端末はタブレット1台で完結する方式で、三井住友カードの決済プラットフォーム「stera」を活用している。



 2022年初に導入した時点では、新型コロナウイルスのまん延によりバスの利用自体が少なかったが、4月〜5月に個人の観光客の客足が戻りつつあるにつれて、キャッシュレス決済の比率は増加傾向にあるという。特に5月のゴールデンウイーク期間中には、1日最高で93件、割合にして38%がキャッシュレス決済で支払われたとしている。



 佐藤氏は導入の効果として、ユーザーにとっては利便性が向上したと説明。運転士の現金収受の手間の軽減についても、キャッシュレス利用が進むにつれて効果がでてくると見込んでいるという。



 Visaのタッチ決済で改善するべき点として、決済スピードの向上が挙げられた。現行の方式では、オンラインでオーソリゼーション(与信照会)を行う仕組み上、Suicaのような交通系ICカードと比べて、決済完了までの時間がかかりやすいという性質があるためだ。



 また、沖縄県の実証事業で導入したキャッシュレス決済端末が、乗降口が別れている路線バスとの相性が良くないため、決済にかかる手間が増えているという。導入した端末はタブレットのようなシンプルな形状で、ユーザーがタッチパネルで決済方式を選べるようになっている。



 一方、東京バスの路線は中乗り・前降りの乗降方式で、運賃変動制を採用している。現金で支払う場合、乗車時に後ろのドアで整理券を引き、運賃箱に料金と整理券を入れる方式だ。



 タブレット端末1台で決済を行う場合、乗車地を記録する方法がない。そのため、東京バス、Visaのタッチ決済で利用する場合も紙の整理券を引いてもらい、乗車時にタッチパネルで乗車地を申告する方式を取っているという。



 キャッシュレス決済の方式としてはやや特殊な方法となっているため、東京バスではバス車内などに利用方法を案内するチラシを多数掲示し、ユーザーへの案内の拡充も図っている。



 一方で、Suicaのような全国交通系ICカードを導入するバスでは、乗車時と降車時に2回タッチする「ツータッチ方式」が主流となっている。東京バスでは今後、Visaのタッチ決済でもツータッチ方式の決済が可能な端末を導入を検討しているという。



 また、MastercardなどVisa以外の国際ブランドについては、沖縄県の要望も受けており、対応を進めている。2022年度には、MastercardやAmex、JCBなども利用可能になる見込みだ。


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